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No.229

青木

さん

グリーンキーパー

芝に配慮した先進的なスタジアムで
最高のピッチをつくる

文・写真 安斎高志

光、水、空気すべてをコントロール

2015年3月、AC長野パルセイロのホームグラウンドである南長野運動公園総合球技場が改修を終えました。ピッチとスタンドの距離が近いため、これまで以上に臨場感が味わえるだけでなく、芝に配慮した先進的なスタジアムとして評価が高く、多くの関係者が視察に訪れています。

同球技場の設計には、グリーンキーパーの青木茂さんの提案が色濃く反映されました。

「2002年日韓ワールドカップに合わせて、各地に”建物ありき”のスタジアムができてしまったんです。芝にとっては過酷な状況下で、いかに育てるかが(グラウンドキーパーの)ステータスになってしまっていて、みんなすごく大変な思いをしていた。でも、その人たちがそれぞれのスタジアムの悪いところを見せてくれたおかげで、このスタジアムが出来上がったんです」

芝に限らず、植物に必要なのは、光と水、そして空気。南長野にはその3つの要素をコントロールするための仕掛けが備わっています。

まずは光。日当たりを考慮し、南側のスタンドの屋根が少し低く設計されました。

そして水。試合で踏まれ、荒れた芝の回復力を上げるには短時間に多くの水を必要とします。南長野のスプリンクラーは、一度にグラウンド全域に水を撒くことができ、またその毎分あたりの水量もアルウィンの4倍以上。

最後に空気。ピッチレベルに通風孔があり、冬期は寒風を遮り、夏期は空気を入れ換えやすくなっています。

これまでやってこられたのは、会社や職場スタッフ、行政、パルセイロに携わる全ての人たちのおかげと話す

毎分1400リットルの水が撒けるスプリンクラー。暑いときの芝の回復には、短時間で多量の散水が有効だという

チェアマンが絶賛したピッチ

青木さんは平成2年に、南長野総合運動公園や千曲川リバーフロントスポーツガーデンなどを管理する長野市開発公社に入りました。当時、グラウンドの芝生の主流は日本芝。冬には枯れてしまうものでした。

「グラウンドがガタガタだと言われて、芝を張り換える、すると今度は(張り換えの期間中)なんで使えないんだとか言われていました。文句ばかり言われているうちに、意地になりましたね」

このままでは根本的な解決はできないと考えた青木さん。試行錯誤を繰り返しつつ、寒冷地では成功例のない管理方法で西洋芝の二毛作に切り替え、千曲川リバーフロントスポーツガーデンを、年間通じて緑を保つグラウンドに生まれ変わらせました。その後、旧・南長野運動公園の芝の管理も任されるようになります。

その間、Jリーグクラブのスタジアムや練習場などを訪れ、各施設の管理者から多くのことを学び、技術を向上させていきます。そして、元Jリーグチェアマン・川淵三郎氏が来場した際には、ワールドクラスのピッチだと絶賛されるまでになります。

向上心を支えたのは、長野エルザ時代から続くパルセイロとの関係だといいます。

「(元中心選手で現アンバサダーの)土橋くんとか、芝のことに小うるさくてね(笑)。でも彼らがいたから、どういうものを求めているのかがわかった。そのうちに、周りのスタッフもみんな一緒に戦っているという意識になっていきましたね」

目指したのは、横浜国際総合競技場(日産スタジアム)。2001年のコンフェデレーションズカップで、豪雨の中、行われた準決勝を見た青木さんは心を揺さぶられます。

「土砂降りなのに、ピッチは水たまりもなく普通にサッカーができた。自分でもこれをやれたらすごいなと思いました」

ピッチレベルに備えられた通風孔。天気に合わせて開閉し、芝にとって最適な環境をつくる

人のための芝

理想は、すべてが90度に直立し、葉幅もそろっている芝だという青木さん。

「そんなのありえないですから、100点はいつまでも取れないと思いますよ。フィールドに立つ22人みんなが喜ぶピッチをつくるのも不可能だと思う。それでも、チームのコンセプトに合ったものにしながら、見に来た人が『これはすごい』と思えるようなものにしないと」

AC長野パルセイロの速いパス回しを支えるために、今後は葉幅や密度などのデータを取って、改善していきたいと話します。

「『芝のため』の先には、『人のため』という目的があります。人のための芝ですから。芝生が限界で、ドーピングすれば働いてくれるというなら、そのやり方を考えるでしょうね(笑)」

日当たりを考慮して低めに設計された南側のスタンド

芝のことを熱く、詳しく、そして分かりやすく語る青木さん。その下で働くグリーンキーパーさんは「人間の体にたとえてくれるので、とても分かりやすい。すごい人ですよ」と手放しで称賛します。

青木さんは、芝の専門家が聞けば驚くような独自の方法を次々と成功させてきました。その陰には不断の努力がありますが、青木さんの口ぶりはそんなことを感じさせません。

「サッカー不毛の地が、プロの選手を輩出できるような土壌になる、そんなふざけた話、乗るしかないじゃないですか(笑)。本当に夢のような話ですよね。でも、それがあるから頑張るんです」

今期もJ2を目指す戦いが始まったAC長野パルセイロ。選手はもちろんですが、次の試合では日本トップレベルの芝にも注目してみてはどうでしょう。

理想はすべてが90度に直立し、葉幅がそろった芝だという

(2015/04/22掲載)

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電話

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長野市屋島四ツ屋前3300

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