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ナガラボはながのシティプロモーションの一環です

No.206

藤澤

正明さん

有限会社プランニング・エメ代表取締役

お土産界のリノベーションマン

文・写真 Yuuki Niitsu

あの商品も実は......

「うちは0から物を作るわけではないんですよ。既にあるものからヒントを得て付加価値をつけるというのが仕事です。ポケットは作れないけど、ポケットをどの位置に作ればより売れるのか、もっと言うならこんなところにポケットを付けちゃうの?というところに付ける。これがうちの会社です」

そう話すのは、お土産品グッズを中心に数々の商品を企画・考案してきた有限会社プランニング・エメの代表取締役、藤澤正明さんです。冒頭に述べたように、既製品に付加価値をつけているだけという思いからあくまで自社は裏方という位置づけをしているため、ホームページなども存在せず、商品紹介をするツールもほとんど存在しません。

今まで企画してきた多くの商品が部屋を埋め尽くすほどある。その一つひとつ全てにストーリーがある

現在、長野駅のキヨスクや東京の成城石井を中心に販売している、りんごを煮詰めたものにバターを混ぜた「信州りんご&バター」。飲み終わると瓶の内側に「ありがとう」という言葉が出てくる「信州りんごサイダー」など、地元信州の素材を使った商品をはじめ、北海道旭山動物園から依頼された「旭山動物園のキューブパズル」。茅野市で出土された国宝をモチーフにした「縄文のビーナスの貯金箱」と「仮面の女神の貯金箱」など、ここでは全て紹介できないほど県内外からの様々な依頼に応え、多くの商品を考案してきました。

また、お土産品にとどまらず「フリースのベスト」、「きりとり線のあるラベルシール」、「アイロンでつけるネームシール」、「ツバが長いロングキャップ」など、今では当然のように我々が目にするものも藤澤さんが考案してきました。

「とにかくみんなで儲けよう!損しないならとりあえずやってみよう!でも損したら手を引く。これがうちの社風です」

企画屋ならではの大胆な発言だと感心した瞬間でした。

不遇なカメラマン時代

現在、長野市高田に会社を構え、取材している最中にも県内外の5、6社から商品の企画依頼が来ているという売れっ子企画屋の藤澤さんは、前職はカメラマン。特に、絵葉書に載せる風景を専門とする風景カメラマンでした。

「カメラマン時代は、きつかったですね。スキー場の撮影の時は、スノーモービルが当時なかったので、歩いて登るんですよ。しかも足跡をつけてはいけないため、遠回りして登るんです。それで、やっとの思いで登っても天気が悪いとずっと待機。これが特につらかったですね。山小屋で1週間待機することも珍しくなかったですから。それで、一瞬出た太陽に合わせてシャッターを押す。とにかく待つという忍耐との闘いでした」

現在の企画屋としての仕事はどんどんアイデアを出し、日々能動的に動いていく世界。それが天職となっている藤澤さんには、待つということが如何に耐え難いものだったかということが想像つきます。そんな煮え切らない思いで続けていたカメラマンですが、昭和の浅間山大噴火の際の仕事がきっかけで、カメラマンとしての仕事に見切りをつけます。

「当時、1週間くらい民宿で張り込んでいたんです。それで、夕方に噴火して、すぐにシャッターを押しに行ったんですが、露光が不足していて全部パーになったんです。それで、俺向いてないなぁと踏ん切りをつけました」

この引き際の良さも現在の藤澤さんの原動力になっています。その後、当時所属していた会社で営業部に異動し、企画の道へと転身していくことになります。

フリマボックスを皮切りに多くの商品登録を取得してきた

バブル衰退期に掴んだチャンス

企画の世界で徐々に頭角を現し始めた藤澤さんは、平成元年、それまでのノウハウを活かし、現在の会社を立ち上げます。

時代は1990年代半ばのバブル崩壊期。好景気にあやかり買い求めた多くのものを、逆に今度は売るうとする人が続出したといいます。そんな時代の流れを察知した藤澤さんは、あのフリマボックス(レンタルボックスを利用しての委託販売)を生み出します。

「バブルが崩壊して経済は混乱していましたが、逆にチャンスだと思いましたね。だからすぐにアイデアが浮かんできましたよ。だって、ものを売りたい人がたくさんいるなら、そういう場を作ればいい。それだけのことですよ」

淡々と話す藤澤さんですが、そこに目が向く人は果たしてどれくらいいるのでしょうか。その差は、普段から如何にアンテナを張り巡らせているかということに尽きると思いました。そしてその結果が大きなビジネスチャンスとして返ってくるのではないでしょうか。

「このフリマボックスは企画屋人生で忘れられないものでしたね。家の写真と連絡先をボックスに入れて住宅を売る人もいましたよ。さすがに売れはしなかったですけど(笑)。でも発想の広さというものをお客さんからも学びましたね。でもフリマボックスの一番いいところは、損をしないという点なんですよ。家賃をユーザーから徴収し、あとは利益の一部を戴く。さらには、回転率を上げるために、2週間経つと商品を値引きし、1ヶ月で半額にするというシステムを取りました。そうするとお客さんは商品を買うし、回転が早いからいろんな商品を投入できて、結果的にお客さんが集まるんです」

このフリマボックスは、藤澤さんが常々口にする「みんなで儲けよう!」というスローガンが定着する商品となりました。

現在、「損をしない」というコンセプトのためか、商売上手の地、関西圏に多くのフリマボックスがあり、最盛期には全国で42店舗もあったそうです。

信州りんご&バターや信州りんごサイダーは長野駅や高速道路サービスエリアにて販売中

あれもこれもかと思うくらい、日常でよく目にするものを多く手掛けてきた企画屋藤澤さん。そんな藤澤さんが特に思い入れを持っているのは意外なものでした。

「25年前に考案した引っかけネコです。カップの淵にぶら下がるネコなんですが、爆発的に売れたんです。当時1個200円でしたが、全国で何百万個と売れましたよ。世の中わからないでしょ。だから面白いんですよ」

0から生み出した商品も数あるなかで、「うちは既製品に付加価値をつけるだけ」とその事実を鼻に掛けず、常に謙虚さと探究心を忘れない、願わくば「みんなで儲けよう!」という気持ちを持ち続ける藤澤さん。そのおっとりした目の奥には、もう次のヒット商品が浮かんでいるようでした。

もしかしたら、次はあなたの商品が藤澤さんに魔法をかけられるかもしれません。

あのマルちゃんの商品にもプランニング・エメの名前が!超レアな一品である

(2015/03/05掲載)

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