No.170
塚田
心悟さん
長野朝日放送制作部長
「ザ・駅前テレビ」初代プロデューサー
ばかばかしいことを大まじめに
文・写真 Takashi Anzai
映らないところでも労を惜しまない
2015年4月、abn長野朝日放送の人気番組「ザ・駅前テレビ」が放送開始から10年目を迎えます。地方局の情報番組としては異例の長寿番組であり、そして高視聴率番組でもあります。
現在は制作部長という立場で駅テレのオブザーバーを務める塚田心悟さんは、初代プロデューサーとして番組をゼロから企画し、地元発の人気番組へと育ててきた存在です。
「駅前テレビの裏番組は、(全国)ネットの情報バラエティをやっています。人気のタレントが並んで、セットも派手で、そこにどうやったら勝てるか考えたときに、うちのアナウンサーをスターにするしかないと思ったんです」
なるほど、駅テレでは松坂ブチョーがタレントの三四六さんにいじられまくって、親しみやすいキャラクターをさらけ出しています。他のアナウンサーも、実に楽しそうに自然な笑顔を見せていて、親近感が湧いてきます。そうした楽しげな雰囲気が伝わってくるのは、塚田さんの信条が影響しているようです。
「親しまれるようにするには、とことん苦労させようと思ったんです。(テレビに)映らない部分でもちゃんとやる。地を這うような苦労を惜しまない。そうすると、本人の魅力に繋がっていくんです」
小川村の畑で農業をするという企画では、平沢幸子アナウンサーが毎週のように畑へ通い、霜が降りたときなどは新芽を守るために早朝から袋掛けをしていたそうです。テレビに映らなくても、企画を大事にする姿勢は、画面からにじみ出るといいます。
駅テレは生放送。リハーサルは緊張感の中にも和やかな雰囲気が漂う
多種多様なメンバーと社風をつくる
塚田さんは大学卒業後、東京の出版社で書籍の編集者などを経験し、その後はデザイン事務所でコピーライターとして活躍していました。テレビ局やナショナルメーカーなど大手クライアントの仕事も手掛けました。
コピーライターの仕事に特に不満はありませんでしたが、1990年、30歳のとき、長野県に新たなテレビ局が開局すると聞き、採用試験を受け合格します。
開局準備から放送が始まるまでという一連の動きは、多くの人が初めての経験で、塚田さんにとっても刺激的だったと振り返ります。
「新卒もいたし、他分野から来たという人もたくさんいました。学校の先生とか、元金融機関勤務とか、全部で60人くらい。他のテレビ局の人もいたし、社風のないところにみんながやって来て始めたから、おもしろかったですね」
「今は大所高所から番組を見ている」と話す塚田さん。現場のさまざまな場所に顔を出す
当初、編成部に所属して、局の宣伝を担当していた塚田さん。開局から4年が過ぎたころ制作部に異動となります。いったん報道部も経験しますが、主に制作畑を歩んできました。
しかし、その間、視聴率の不振などもあって自社制作の情報番組が途絶えてしまいます。悔しい思いを胸に、特別番組やドキュメンタリーの制作に携わっていた塚田さん。そして2005年、会社が動きます。自社制作の情報番組を復活させることになり、塚田さんに白羽の矢が立ちました。
「当時の局長から『他では絶対につくれないものをつくれ』と言われました。だから、ちょっと破天荒なものをつくろうという思いがありましたね」
そうした意気込みとは裏腹に、番組スタート当初はこれまでやってきたことから脱却できず、数字もついてこないという日々が続きます。
現在は報道制作局次長を兼務し、「おお!信州人」のプロデューサーを務める
ばかばかしいことを大まじめに
メインパーソナリティの三四六さんらを交え、企画会議や反省会で喧々諤々の議論を戦わせ、1年が過ぎたころから、数字が上向き始めました。
前述した、見えないところでも労を惜しまないということに加えて、もう1つ塚田さんが大事にしたことは、「ばかばかしいことを大まじめにやる」という精神。それが少しずつ伝わり始めます。
「『普通こんなことやらないだろ』ということを体当たりでやってみるんだけど、スタッフがみんなまじめに取り組んでくれる。人に喜んでもらおうという気持ちが伝わって、面白がってもらっているのかなと思っています」
例えば、くじつき棒アイス「ガリガリ君」に当たったことがないという視聴者からの依頼を受け、ひたすらガリガリ君をスタッフも一緒に食べ続ける企画などは、その一例。
出演メンバーやスタッフと飲みに行った先で自然に企画会議が始まることも多いという
また、オープンから1年半が過ぎ、ほとぼりが冷めたころにスカイツリーでロケを行う「ほとぼりツアー」など、意外性あふれるアイディアも視聴者を楽しませ続けています。
番組はもうすぐ10年目、その間、プロデューサーも変わりました。しかし、塚田さんが植え付けた精神は番組スタッフにしっかりと根付いているようです。
「料理コーナーを担当している松坂ブチョーは、番組前日の金曜日に自分でスーパーに買い出しに行って、夜に1人で練習したりしています。そういうのを見ていると、番組は悪い方向にいかないだろうなと思いますよ。それがカメラマンとか、技術スタッフに伝わるし、いい空気の中でやれていますね」
塚田さんはかつて自らの番組にマンネリを感じ、キー局のディレクター数人に番組を見てもらいました。すると、「マンネリって自分勝手な思い込みでしょ。まったく変える必要はない」と太鼓判を押してもらったそうです。一視聴者もそう思います。このまま突っ走ってください。
「出演者、技術スタッフ含め、いい雰囲気の中でやれていると思う」と話す
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会える場所 | abn長野朝日放送 長野市栗田989-1 電話 026-223-1000 ホームページ http://www.abn-tv.co.jp/ ザ・駅前テレビ 毎週土曜日午前9時30分~10時25分 |
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