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ナガラボはながのシティプロモーションの一環です

No.157

相場

雄希さん

フレア・バーテンダー世界チャンピオン cloud nineオーナー

軽やかなパフォーマンスの裏側には
正確な技術と知識、そしておもてなしの心

文・写真 Takashi Anzai

奥深いフレア・バーテンダーの世界

フレア・バーテンディングとは、軽やかなパフォーマンスでカクテルを作る技術のこと。その世界一を決める「TGIフライデーズ バーテンダーチャンピオンシップ」で2005年に優勝したのが長野市のカジュアルダイニングバー「cloud nine」オーナー相場雄希さんです。

リッツ・カールトンが主催する同大会では、カクテルをつくる正確さとそのための知識、センス、そして接客など、総合的な視点からバーテンダーとしてのスキルを審査されます。

「接客しながら失礼のないサービスが提供できて、その中にボトル回しなどを取り入れなければなりません。そして、当然ながらそれに加えてドリンクもきちんとしたものを出さなくてはいけないんです」

世界大会では、400種類の中からドリンクレシピがその場で言い渡されます。また筆記試験では、レモンをカットする理想的な厚さなどが問われ、そのうえメジャーカップを使わずに正確な量を注ぐテストなどもあります。冒頭に「軽やかなパフォーマンス」とだけ記しましたが、華やかな部分の裏には、確かな知識と熟練の技術も必要となります。

相場さんは2001年に初出場。3度目の挑戦で世界トップの座を手にしました。

「1日3時間くらいしか寝なかったですね。バーリーダーだったので、10時間くらい働いて、店を閉めて少し休んで、それから8時間くらい練習していました。負けると悔しいし、見せたいことがあるのにできないという悔しさもありました。でも、何より楽しかったのが一番ですね」

世界チャンピオンを目指していた頃は1日8時間練習したという

知識ゼロから3店舗をオープンさせるトレーナーへ

相場さんは小布施町の出身。高校卒業後、ホテルマンを養成する東京の専門学校へ進学しました。

「高校生のころからライブハウスみたいな場所をつくりたいなと思っていました。音楽はずっとやっていたので、あとはお酒の知識を学びたいということで、バーテンダーの勉強をしようとホテルの専門学校に行ったんです。でも、身長が高かったので、実習ではベルボーイとかまったく関係のないところに配属されて、そのあと先生の勧めで格式の高い葬儀屋に就職しました。でも、自分には合わなかったですね」

帰郷を考え始め、地元に戻る前の最後の思い出に行ったオーストラリア旅行で、理想としていた光景を目にします。

「結構大きな店だったんですけど、パーティルームみたいなところに若者が集まって、スタンディングでカクテルパーティのようなことをやっていたんですよ。その雰囲気がとてもよくて、僕がやりたかったのはこれだと思ったんです。本当に東京に出てきた理由ってこれだったなと」

銀座をはじめとした東京、そして名古屋のTATULAでの経験を詰め込んだ店内

帰郷を取りやめ、銀座にオープン予定のバーのバーテンダー募集に応募。その店ではフレアの日本の第一人者が店長になるということで、6~7人の募集に300人弱の応募があったといいます。しかし、相場さんは笑顔が買われて採用されます。

「知識ゼロから始まったので、最初はうまくいかなくて怒られてばかりでした。悔しかったので頑張って、1年目でバーリーダーになりました。銀座のあと六本木のお店に移って、その間に店舗を拡大していくなかでトレーナーをやっていたので、横須賀、下北、上野の3店舗をオープンさせました」

その間、世界チャンピオンにも輝き、芸能関係の事務所からも声がかかります。相場さんは、店に立ちながら、全国各地でフレアのパフォーマンスを披露して回るという生活を送るようになります。

日本、アジア、そして世界大会の優勝トロフィー

バーテンダーの原点に戻る

2006年には社内の代表として、グアムにある系列店でバーテンダーのトレーナーを務めるなど、評価を高めていた相場さん。順風満帆に見えたバーテンダー人生ですが、全国行脚している頃から相場さんは漠然と疑問を持ち始めます。

「バーのイベントや結婚式の披露宴で営業に回りながら大会に出たりということを繰り返していて、こんなことやっていても将来見えないなと思ってしまったんです。僕はお店がやりたかったし、現場が好きだったので何か違うなと思いました」

もう一度、原点に返ろうと考えた相場さんは、名古屋市のバー「TATULA」の門を叩きます。

「フレアの技術とちゃんとしたバーテンダースキルを持った、日本にここしかないというお店です。『僕を入れてください』って電話したんですけど、そのときは人数がいっぱいで断られました。でも、2か月後、大学生のバーテンダーがアメリカに旅行に行く間だけ手伝ってくれないかと言われたので、そのまま荷物持って名古屋に引っ越したんです。もう帰れませんからって(笑)」

今でもTATULAのオーナー滝藤育伸さんは師と仰ぐ存在です。TATULAでの3年は、お客さんとの距離の作り方や、滝藤さん自身のライフスタイルに触れられたことも含めて、すべてが勉強になったと振り返ります。

2011年、満を持して長野市北石堂町にcloud nineをオープン。もうすぐ3周年を迎えます。

「とにかく人を楽しませることを一番に考えていますね。”cloud nine”は『最高に幸せ』という意味の熟語なんですけど、ここに来た人が最高の笑顔になってもらえたらいいと思ってつけました」

カクテルのメニューは約100種類。ただし、材料さえあれば、種類は無限につくれると相場さんは笑います。その笑顔は、なるほど、300人の中から選ばれるだけのことはあります。ただし、相場さんは笑顔だけではありません。バーテンダーを始めた頃から人一倍の努力で10年以上積み重ねてきた技術と知識があります。相場さんと話していたら、飲みに行きたくなってきました。次の週末はcloud nineで会いましょう。

相場さんプロデュースのお弁当「四季の心集」。信州の伝統野菜をふんだんに使っている。ご当地弁当がないことが悔しかったとの思いから生まれた

(2014/12/17掲載)

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会える場所 カジュアルダイニングバー cloud nine(クラウドナイン)
長野市北石堂町1381
電話 026-217-7779
ホームページ https://www.facebook.com/pages/cloud-nine/119180111534486
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