No.068
伝田
敬康さん
でんだ ゆきやす
デンショウ豆腐店 店主
昔ながらの地釜で炊く
添加物ゼロの豆腐
文・写真 Takashi Anzai
シンプルな食べ物だからこそ素材を厳選
豆腐という食べ物は、シンプルで淡泊だからこそ、混ざりけのない豆の味が感じられたときに、作り手の気概を感じます。
地釜で大豆を炊く、昔ながらの製法を守り続けているデンショウ豆腐店。消泡剤や凝固剤などの添加物を一切使っていません。使っている大豆は長野県産100%。にがりも天然のものです。
店主の伝田敬康(ゆきやす)さんは「このやり方しか知らないからさ」と笑いながら、インタビューの間も地釜につきっきりで、かき混ぜて温度を調節したり、泡を竹の道具でつぶす作業を続けていました。
「最初から最後まで自分の目でね、豆の状態を確認できるわけですよ。ボイラーでやる人は、専用の薬剤(消泡剤)を使うので、こんな手間暇かけないんです。時間的にも半分くらいで済んじゃうんですね。うちは一切、添加物ゼロでやっていますんでね。水と大豆とにがりだけなんです」
自分の目で確かめながら、創業以来40年、同じ製法で同じ味を守り続けてきました。
作業中にお邪魔し、取材をさせてもらった。チームワークの良さが伝わってきた
安心のための手間は3倍
朝4時。伝田さんの豆腐作りが始まります。
前日から水に漬けておいた大豆をミキサーですり潰します。水に漬けておく時間は、湿度や気温など天気によって違ってきます。長年の経験が物を言います。
使っている水も、ろ過装置を通して塩素をはじめとした不純物を取り除いています。シンプルな食べ物だけにそうした努力が欠かせません。
すり潰されて、どろどろの状態になったものは、釜に入れて炊きます。炊いている間、伝田さんは釜につきっきりで、温度調節などをしています。「地釜を使うと、手間は3倍くらいかかるんじゃないですかね」と伝田さん。しかし、その手間があるから、添加物を使わなくて済むわけです。
地釜につきっきりで泡消しをする伝田さん
最近は、消泡剤の他にも凝固剤や乳化剤などの添加物を加えている豆腐屋さんがいるそうですが、デンショウ豆腐店は、とにかくまったくの無添加。
安心感を最も大事にしているから、原材料の大豆も作り手の顔が見える県内産のものを選んでいます。
「一番は安心感。外国の栽培方法を見ていると、おっかなくなっちゃうんですよね。せっかく無添加で作っていても、もとの大豆が除草剤からはじまって、いろんな薬品とか使っていたら、意味なくなっちゃうんでね」
遠くから買い求めるお客さんもいるという
お嫁さんも胸を張る豆本来の味
デンショウ豆腐店の豆腐は、ほとんどが量販店ではなく店先の小売スペースで売られています。店に出ている長男のお嫁さんの、かお里さんはこう話します。
「毎日来てくださるお客さんもいますし、『ここの豆腐食べると、もう他のは食べられない』とか言われると、やりがいがありますね」
お子さんにアレルギーがあったことをきっかけに、安心できるデンショウの豆腐をもっと誇りに思えるようになったといいます。
「豆を選んだり、にがりを選んだり、色んなものにこだわりながらやっていくうちに、やっぱりそれを探しているお客さんもどこかから聞いてきてくれましたね」
愛嬌のあるパッケージデザインや店先にある看板などは、かお里さんのデザイン。伝田さんと妻の恂子さんは、「私たちより熱心だよ」と目を細めます。
現在は1日200丁をつくっているとのこと。
実際に食べてみましたが、本当に豆の味がしっかりとしていました。
「毎日、出来具合って違うんですよ。本当に気に入ったのは、3日にいっぺんくらい。そういうときはやっぱりやっていてよかったと思いますね。まぁほんのわずかな違いなんですけどね、なかなか100%思ったようにいかないもんなんですよ。余裕がないとだめですね。時間的にも気持ち的にも」
そう話しながら、手を休めない伝田さん。
まっすぐに地釜と向き合っているそのひたむきさが、豆が持つ本来の味を引き出すのかもしれないと思いました。
切ってラッピングするのは妻の恂子さんの役目。長年2人3脚で店を守ってきた
パッケージは、かお里さんのデザイン
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会える場所 | デンショウ豆腐店 長野市若槻東条1059-3 電話 026-296-5539 営業時間 9時~19時 |
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