No.063
折谷
玲子さん
片づけサポーター/リコデザインスタジオ
片づけられない人はいない
心地よい暮らしの調和をサポート
文・写真 Chieko Iwashima
「一旦調和がとれてしまえば、あとは物が自然とそこに帰っていく感覚です」
そう語りながら自宅兼事務所の中を隅々まで案内してくれた”片づけサポーター”の折谷玲子さん。快適や心地よいを意味する「コンフォート」をテーマに、片づけのコツをマンツーマンで教えるプライベートレッスンや、ワークショップ的な片づけ講座の開催、片づけの代行など、引出し1つから丸ごと家一軒までおこないます。
「片づけって毎日やらないといけないイメージがあるけれど、いらないものが全部なくなって、物の調和というか、ハーモニーができたらそれは崩れないんです。調和が生まれ、片づけが習慣になってしまったら片づけをしている感覚さえなくなる。物と暮らしと自分の関わり方、関係を整えていくのが片づけだと思っています」
インテリアコーディネーター、二級建築士の資格も持つ折谷さん。自らデザインを手掛けたキッチンの食器棚は奥行が浅く、どこに何があるかすぐにわかるようになっている
最初に見せてくれた洗面所の棚の中は整然としていて、一目で何が入っているのかわかります。試しに、その棚の中に用途のちがう布巾を置いてみるとまるで不協和音が聞こえてくるかのように、そこは布巾の場所ではないことがわかりました。
「頭で理論を覚えても、片づけられないと思うんです。自転車に乗れない人が乗り方の本を読むのと一緒で。実際に見て、感じて、実践してもらうことが大事だと思っています」
折谷さんは富山県出身で、結婚を機に長野市に越してきました。以前はデザイン関係の仕事をしていましたが、旦那さんの転勤で一度仙台に引っ越し、再び長野に戻った際、昔から興味があった「暮らし」に関わる仕事をしようとリフォームの会社に再就職。その後、独立して現在の「リコデザインスタジオ」を立ち上げました。
「リフォーム会社に勤めていたとき、リフォームの提案に訪れたお宅で、片づければ充分ステキなのにって思うこともありました。それから、片づけが苦手だというお宅では、収納に重点を置いてプランを練ることが多いのですが、一旦は片づいてもすぐにまた元通りになってしまうんです。収納場所を用意しても解決できないことなんじゃないかって思っていました」
物があふれている状態、物に秩序がない状態を何とかできないものかと思っていた折谷さん。あるとき、とあるクライアントさんに「リフォームより生活習慣を見直したほうがいい」と思い切って提案しました。
「フリーで仕事をしていたため、思い切って言ったんです。そのお宅は、衣類が片づかないからとタンスをいくつも購入されていました。でも、タンスの中はスカスカ、家中に衣類や物が散乱するという感じで。料理に料理教室があったり仕出しサービスがあったり、いろんなサービスがあるように、片づけのサービスを利用したっていいんじゃないかってお伝えしました」
「収納のコツは物の顔がすべて見えることが大事」と折谷さん。以前はタオルがぎっしり詰まっていた
折谷さん自身も手探りでアドバイスをしながら片づけをサポート。1カ月ちょっとで見違えるように変わった室内は、以降、6年以上が経過しましたが片づいた状態が保たれているそうです。
そのお宅の片づける前後の写真を許可を得て見せてもらいましたが、同じ人の家とは思えないくらいの変化に驚かされました。
この経験から、いつかは仕事として片づけの手伝いをやっていきたいと思った折谷さん。実際に足を踏み出すことになったのは、意外にも自分自身の片づけにまつわる苦い経験がきっかけでした。
それは、仕事の事務所を移すために自宅に新たなスペースが必要になったときのこと。収納の中のものを出してみて驚きました。不必要なものがたくさんあり、最終的に軽トラック2~3台分はあろうかという物を処分することになったのです。
「人にアドバイスしているくらいなので、片づけや収納は上手だと思っていたんです。でも、私の家は散らかってはいなかったけれど、都合の悪いものが見えなくなっていただけ。隙あらば物をしまいこむという感じで、収納することが手段ではなく目的になっていただけだったことに気が付いてショックでした」
「でも、片づけたのは見えない収納の中だったのに、部屋の空気感が変わっているのを感じて、やっぱり収納がすべてじゃないって片づけの全体像が見えた気がしました。そこで、仕事としてやってみるか、と思ったんです」
ちょうど世の中では「断捨離」ブームがあり、片づけということに対しての注目も高まっていました。一昨年2月から片づけサポートの仕事をはじめ、現在3年目です。
玄関横にある納戸。分別ゴミの一時置場を決めてある。ゴミと言えどもすべての物に指定席があることが片づけのセオリー
「ときには手厳しいことを言わなければならないときもあってドキドキしながら傷つけないように言うんですが、皆さん身内に言われるとカチンとくることも、他人に言われると笑えてくるみたいで、大笑いしながら聞いてくれます。お金もらって小姑やってる感じで、有料小姑って言われることもあります(笑)。片づいていないことが内心ずーっと後ろめたくて、誰かに背中を押してもらいたかったんでしょう」
「レッスンを受けてくれた方の変化にはいつも感動します。サポーターとしての経験はまだ浅いのですが、片づけられない人はいないと思えました。方法を知らないだけなんですよね。今できなくても恥ずかしいことじゃありません」
何を隠そう、私も片づけは苦手なタイプですが、折谷さんの話を聞いていたら自分も変われるかもしれないと希望が湧いてきました。
「これから、できるだけたくさんの人のお部屋を片づけていきたいなって思います。日本中って言ったら大きすぎますかね(笑)。それには1人では限界があるので、片づけサポーターを育成できたらと思っています。サポーターが増えて、片づけを習うことが料理を習うみたいに特別なことじゃなくなるといいなって思っています」
納戸などに収納をまとめているので、リビングがスッキリ
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