No.049
轟
鉄也さん
トドロキサイクルプラザ 副店長
自転車の楽しさを伝えたい
老舗自転車店の4代目
文・写真 Chieko Iwashima
創業90年の「トドロキサイクルプラザ」は、長野市を代表すると言っても過言ではない自転車専門店のひとつです。なんと言っても、苗字が車3つの「轟」!代々受け継がれてきた運命的なものを感じませんか?
編集部・岩島の故郷飯田市は、日本を代表する自転車ロードレース大会の舞台になっています。しかも、実家のすぐ近くがコースになっていました。そんなわけでロードバイクに乗っている人をよく目にしていたので、いつかは自分も乗りたいとずっと憧れています。
取材に応じてくれたのは、ゆくゆくは四代目として店を背負って立つために現在修業中という轟鉄也さんです。
トドロキサイクルプラザは、鉄也さんのお父さんで、轟昇さんの代になった30年以上前からスポーツタイプの自転車の取り扱いに力を入れてきました。用途や目的に合わせた選び方からアフターケアまで丁寧に対応してくれて初心者も安心です。店内にはマウンテンバイクやロードバイク、クロスバイクといった自転車が所狭しと並び、各種パーツやグッズもたくさん。見ているだけでもワクワクします。
「新規のお客様はどんな種類の自転車があるのか知らないで来る人がほとんどですが、それで全然かまいません。その場で購入を決めなくていいし、興味があれば気軽に来てもらいたいです。まずはクロスバイクに乗ってもらえば、一般車(ママチャリ)との違いが分かると思います」
鉄也さんによると、最近お店で一番売れているのはクロスバイク。クロスバイクとは、山道や砂利道も走れるマウンテンバイクと、長距離の高速走行に適したロードバイクの長所を兼ね備えた「いいとこどり」のような車種です。通勤に使えて、休日は遠出を楽しみたい、という人やフィットネス目的の人にも人気があります。
もちろん、パンクの修理やタイヤ交換、ブレーキやチェーンの修理など困ったときに頼れる街の自転車屋さんとしての機能も果たしています。取材中にも何人か、パンクとブレーキ修理で来店する人がいました。
「当たり前ですがネジ一本でもゆるんでいたらダメ。安全面の確認を怠らないことは一番シビアに気を付けています。お客さんにも、左側通行で安全に乗ってもらえるように意識付けを呼びかけています」
創業90年。お客さんのなかには30年以上の付き合いがある人もいる
自転車で走る楽しさを伝えるために定期的に開催しているツーリングには毎回10人前後が参加し、多いときだと20人ほど集まります。松本市や上田市など長野市以外から参加する人も珍しくありません。初心者でも気軽に行けるようにコースを設定しているので、年齢層も子どもからお年寄りまでさまざま。
「自転車好きの人は自分で情報を集めて参加してくれるんです。うちに来てくれる人は口コミがほとんどですね」
「自転車のいいところは1人でも集団でも楽しめるところです」
鉄也さんは1人でも遠くまで自転車で出かけ、温泉やグルメを楽しんでいます。
新潟県佐渡島を一周する「2014スポニチ佐渡ロングライド210」で見事完走
ロードレース大会にも積極的に参加し、5月に佐渡で開催された「2014スポニチ佐渡ロングライド210」にも初めて参加しました。
「このレースは短いコース設定もあるんですが、思い切って最長の210キロに挑戦しました。普段、海辺を走る機会がないのでおもしろかったし、地元の人の応援がすごくて励みになりました。集団走行の勉強にもなりました」
昔から体を動かすことが好きだったという鉄也さん。野球、バレー、体操…といろんなスポーツに挑戦し、子どものころから自転車のレースにも参加していました。しかし、昨年2013年7月に東京から帰省するまでは、システムエンジニアの仕事をしていました。
「じっとしているっていうのが苦手なんです。それなのによく7年もデスクワークをしていたなと思います(笑)。今は体を動かして働いているので楽しいですよ」
なぜ、今の仕事をやろうと思ったのか尋ねると、こんな思いを聞かせてくれました。
「まだ修業中の身なので大きなことは言えないんですけど、100年近くも続いている店をおやじの代で終わらせたくないなぁというのがあって。東京での仕事も今後どうしようか考えて、さんざん悩んだんですけど30歳になる前に帰ってきました」
「家族からは帰ってこいとか跡を継げとか一度も言われたことはありませんでした。自分の意思で決めるときは決めないと。やれって言われてやるのは違うと思いました」
お父さんの轟昇さんに、その頃の心境を聞いてみると「正直、ほっとした」と話してくれました。鉄也さんと同じく、自分の意思で継ぐと言ってくれるのを待っていたそうです。
お客さんと2人で参加した2014スポニチ佐渡ロングライド210にて撮影
「心のどこかで、いつかは店を継ぐっていう思いはずっとあった気がします。やるべきときがきたって感じがしています」
90年の歴史の重みもさることながら、幼い頃から目にしてきた働く両親の姿や、嬉しそうに自転車に乗るお客さんの姿が鉄也さんの心を捉えていたのではないかと思いました。
当面の目標は、自転車整備士の資格を取得すること。そして、さらなる技術習得のために、一度は別の店に修業に出ることも考えています。
「まだまだこれから学ばなきゃいけないことがいっぱいあります。でも一番大事なのは、自分がもっと自転車の楽しみを知って、それをお客様に伝えていくことだと思っています」
初夏は自転車で走るのが楽しい季節。日常の足として、趣味として、自転車を楽しんでみてはいかがですか?
アットホームな雰囲気で親しまれている。左からスタッフの竹原裕尋さん、轟昭美さん、社長の轟昇さん、鉄也さん
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会える場所 | トドロキサイクルプラザ 長野市七瀬南部421 電話 026‐226‐7121 ホームページ http://cytod.com/ |
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