「川中島白桃」は、長野市が誇る桃の最高級ブランドです。桃の中では晩生で8月下旬から9月下旬に収穫され、実は大きく、果肉は甘くシャキッとした歯ごたえ、日持ちがいいのも特徴です。全国的な人気とは裏腹に、栽培農家の高齢化と後継者不足により、栽培面積も収穫量も減少しています。
そんな川中島白桃を守るため地元の有志が集まって、 2011(平成23)年に NPO法人「信州・川中島平ファクトリー」が設立されました。彼らが手がけるのは、50もの契約農家から仕入れる川中島白桃ほか地元産くだもののジュレやコンフィチュールなど。仕入れの決まりを厳格化してブランド力を落とさず、均一なおいしさを守っています。
なかでもジュレは、旬のみずみずしさを味わえる、ジャムでも缶詰でもない、新たな保存食といえます。観光庁が主催した「究極のお土産」品評会や、農林水産省が主催した「フードアクションニッポン」で高い評価を得て、百貨店など全国各地で取り扱われています。
「レベルの高いスペシャリストのおかげで、おいしくて新しい商品が生まれました」と言うのは、同法人の理事長を務める宮崎愛子さんです。商品開発は、横浜市のパティシエ、青山吉昭さんに依頼しました。青山さんは今や農産物加工開発のスペシャリストとして各地を飛び回っています。
製造は「長野牛乳」代表取締役社長の瀧本孝宏さんが引き受けました。牛乳製造の徹底した衛生管理を踏襲した専用の加工施設が、工場の一角に設けられました。瀧本社長は「やるなら地域のもの。薄利多売はしない」と指針を定めつつ、「農家の方と、やりとりできるのがうれしい。私も西山の農家の出ですから」と顔をほころばせます。
「農家の方も手応えを感じているようです」と宮崎さん。「80歳のおじいちゃんが『うちの桃をよろしく!』と持ってきてくださる。その姿に、私たちのはじめたことはまちがっていなかったと思えます」。いずれは販売や”お茶っこ”のできる場を設けたいと、農家と手を携えた夢は広がります。