No.224
松本
慶彦さん
バレーボール選手/堺ブレイザーズ ミドルブロッカー
迅速な判断力と巧みな技術力
一球一球に勝負をかける
文・写真 Rumiko Miyairi
恵まれた素材とバランス感覚を生かす
「勝つためにはゴールはありません。できることは精進を重ねます。できないことや新しいことは常に挑戦しています」
日頃からの信念をこう話す、バレーボールV・プレミアリーグの堺ブレイザーズ選手、松本慶彦さん。堺ブレイザーズは大阪府堺市に拠点を置き、日本のバレーボール界のトップを争うV・リーグの男子バレーボールチームとして人気を博しています。
所属する松本さんのポジションはミドルブロッカーです。前衛の真ん中で、セッターから上がった早いトスなどをクイック攻撃し、ときにはウイングスパイカーのための”おとり”も担うなど、迅速な判断をしながら試合を運んでいます。
長野市戸隠出身の松本さん。戸隠そばの製麺工場を営む一方で、地元のスキー学校の先生もしていた父親と、バスケットボールの実業団チームに所属していたこともある母親の長男として生まれました。スポーツ万能であった両親のもとで、幼いうちからその才能を発揮します。
早いクイック攻撃!ミドルブロッカーの松本さんは試合の流れを迅速に判断しながら勝利へと導く[写真協力・ⓒBLAZERS SPORTS CLUB CO,]
「小学生のとき、冬場は週末のたびスキーをやり、夏場もそのトレーニングをしていました。身体を動かすことが、とにかく好きだったので、スポーツは全般的に抵抗がなく野球もバスケットボールなどもよくやりました。バレーボールは中学生になってから、先にやっていた姉の影響で始めましたが、スキーもやりたかったのでスキー部とバレー部の両方をかけもちしていました」
バレーボール部に入部した松本さんが頭角を現し始めた理由の一つとして、当時、自身でも明らかに感じたという体の成長というものがありました。身長が中学2年生のときに1年間で12センチ伸びて180センチ近くになりました。
「県の代表選抜のとき、私は大きいっていう見た目だけで選ばれたんです(笑)。それまではバレーボールだけにこだわっていたわけではありませんでしたが、正直、それがきっかけで心からバレーボールが楽しくなりました。今の自分があるのも、そのときに拾ってもらえたからです」
出会いに救われて頂点に
中学時代、バレーボールの選手として大きな存在感を発揮した松本さんは、長野県岡谷工業高校に入学します。主力選手として全国規模の大会に出場し、数々の輝かしい成績をおさめました。卒業後、中央大学に進学してからもその活躍はとどまることを知りませんでした。
ウイングスパイカーとして高い打点から確実にスパイクを決め、チームにも大きな貢献をしていた松本さん。しかし、大学3年生で大きな壁にぶつかります。
「スパイクが思うように決められなくなったんです。そうなると何をやってもうまくいかず、パワーでも高さでも勝負できないとなったときは辛かったですね。本気でバレーボールをやめたいとさえ思いました」
そんなスランプに陥った松本さんに、「ミドルをやってみない?」と当時、指導を受けていた大学の監督、栗生澤淳一さん(現JTサンダース部長)から、ポジションの転換という思わぬアドバイスをもらいました。
それまでとは違い、攻撃に対する判断力やスピードを必要とするミドルブロッカーへの転向は容易なものではありませんでした。しかし、子ども時代から培った運動のセンスとバランスが備わっていた松本さんだからこそ、ポジション転向に余すところなく順応します。
「自分の中で、辛く、高い壁にぶつかりました。でも、ポジションを変えるという思い切った話をもらえて猛烈に練習しました。そういう切り換え方を教えてくれた人のおかげで、今の自分があるんです」
晴れてミドルブロッカーとなり今まで通りの自信を取り戻した松本さんは、大学を卒業し、かねてからの憧れだった竹内実選手が所属していたNECブルーロケッツに入部。2007年にはワールドカップの全日本代表選手として招集され、翌年2008年、8月に開催された北京オリンピックにも出場しました。
どんな試合に臨むときも平常心を保つことを心掛けているという松本さんですが、全日本代表選手として、世界の国を相手にコートで戦ったときは特別な思いがあったと語ります。
「いろんな国際大会に出てきましたが、オリンピックは大陸予選大会を通過してこそ出られるものなので、思いは深くものすごく気合が入りました。開催国である中国が対戦相手のときは、声援もすごく大きいので選手も真剣で、その意気込みがひしひしと伝わってきましたからね。私たちも必死でした」
喜びをガッツポーズで表す松本さんは、「平常心で挑みます」と試合への姿勢はいつも冷静だ[写真協力・ⓒBLAZERS SPORTS CLUB CO,]
勝つための勝負に挑む
月14日と15日、バレーボールV・プレミアリーグ男子松本大会が松本市総合体育館で行われ、ファイナルステージに勝ち進んだVリーグの4チームが、次のステージを掛けて熱戦を繰り広げました。堺ブレイザーズは15日、豊田合成トレフェルサと対戦しました。
試合開始、審判のホイッスルと同時にそれぞれのチーム専属応援団による声援がリードします。それに合わせて詰めかけたファンがヒートアップしました。
「勝て、勝て、ブレイザーズ。いけいけ、堺、いけいけ、まっちゃん、まっちゃん…」
大歓声の中、松本選手の早いクイック攻撃が見事に決まり先取点が入りました。チームも一気に波に乗ります。「勝つために、点を取るために、自分の役割をしっかりとこなしたい」と話した松本さんの強い信念を思い出しました。
その後も、高いブロックを飛んで確実に相手の攻撃を止める場面、おとりとなって相手チームの選手を引き付ける場面など、随所に巧妙なプレーを見せて得点につなげていきました。
一球一球を大切に拾い、つなぎ、そして打つ。松本さんの子どもの頃からの強い情熱が、バレーボール魂となって燃え続ける[写真協力・ⓒBLAZERS SPORTS CLUB CO,]
「今、自分の中で経験値が上がって、いろんな引き出しを作ることができました。その引き出しをもっと増やして常に勝利を目指します。何事にもゴールはありませんから、まだまだいきますよ」
松本さんは今年34歳。心身ともに充実し、心の引き出しが増えた今、これまでの味わった様々な経験や多くの出会いを胸に刻んで、さらに向上心を持って挑み続けす。
座右の銘は「己に克つ」と掲げる松本さん。
「実は、戸隠中学校の学校目標だったんです。粘り強く最後までやり遂げるという強い気持ち。そのときは意識していませんでしたが、年を重ねるごとに大事だと意識するようになりました。自分との戦いは子どものころから始まっていたんです」
「どんなことも自分に負けるようになったら終わりだと思っています。これから、まだまだやります」
己に克つという強い信条を掲げながら一球一球に勝負をかける松本さんのバレーボール魂は燃え続けます。
そんな松本さんのプレーはこれからも多くの人に、夢と希望そして感動を与えてくれるに違いありません。
バレーボールV・プレミアリーグ男子松本大会での試合終了後、ファンの大きな声援に爽やかに挨拶をした。右から2人目、背番号1の松本さん
「己に克つ」試合会場内に掲げられた横断幕にも松本さんの信念が。自分との戦いに挑み続ける松本さんの姿は、いつも、人に勇気や希望を与えている
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