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ナガラボはながのシティプロモーションの一環です

No.201

山本

貴志さん

ピアニスト

故郷が表現の原点
自然体で響かせるピアニスト

文・写真 Rumiko Miyairi

自分との闘いで奏でるもの

1月25日、長野市出身の若手ピアニスト、山本貴志さんのチェンバー・コンサートが須坂市文化会館メセナホールで開かれました。

プログラムには「山本貴志が贈る室内楽の名曲」と名付け、山本さんが尊敬するショパンの名曲やメンデルスゾーンのピアノ三重奏曲が織り交ぜられ、山本さんの思いがぎっしり詰まった選曲で演奏されました。

楽屋に戻るやいなや取材に応じてくれた山本さんは、大勢の観客の前で演奏しているときの自身の気持ちをこう話します。

「弾きながら感じるのは大勢のお客さんからのエネルギーです。それをいつも頂けるので、気持ちが高まってやる気が出てくるんです。だからコンサートをやり終えても疲れを感じません」

山本さんは学生時代から数々のピアノコンクールで優秀な成績をおさめ、2005年22才の時、ワルシャワで行われた第15回ショパン国際ピアノコンクールでは第4位に輝きました。世界三大ピアノコンクールといわれているこの大きな舞台で脚光を浴びた山本さんの音楽活動はどんどん広がっていきます。

昨年からは、ショパンの故郷でもあるポーランドのワルシャワに住まいを移して活動の拠点とする一方で、日本などでのリサイタルや室内楽コンサートなどを精力的に行っています。

長野市で生まれ育った山本さん。

山本さんと共演者お2人の直筆サイン。満席となった今回のコンサートも素晴らしく、観客を魅了させた

ピアノを始めたのは5歳の時、幼稚園での歌の時間がきっかけでした。そのころ、先生のピアノの伴奏で歌うことを殊のほか楽しみにしていたという山本さんは、そのピアノの音色に関心を持ち始めます。

「ピアノからたくさん出る和音の響きに心地良さを感じたんです。それでピアノに興味を持ち『ピアノが弾きたい』と自分から両親に頼んだんです。それからのピアノの練習は、歯磨きや身支度と同じように日常の流れに入っていましたね」

まるでスイッチが入ったようにピアノを始めた山本さんは、自身で感じた心地良さを表現するために毎日何時間もピアノの前に座ります。その時間は山本さんにとってなによりも至福のひとときでした。

そして、ピアノを弾いていると気持ちが穏やかになり、もっと心地良い音色を奏でたい、と気持ちが高まる自分に気付かされます。

「練習は敢えて目標を立てずにしていましたから、終わりがありません。人と競い合うためのものでもありません。ただ、どれだけ曲を心地良く弾けるか、綺麗と感じられるか、という一心で繰り返し同じ曲を弾きます。だから、常に気持ちを高めながら自分との闘いをしていますね」

「ピアノの時間は何よりも心地良いひととき」という山本さんは、限りなく美しい響きを追求する[写真提供・©Marco Borggreve]

頑張るきっかけとなる演奏に

山本さんは、子どもたちと近い距離で演奏する機会を、有意義に考えています。チェンバー・コンサートの翌日も、須坂市内の小学校に出向いてミニコンサートを行いました。

「演奏が始まる前はざわざわしていても、始まるとピタッと静かになるんです。集中して聴いてくれるんです」

ミニコンサート会場となった体育館は、何百人もの子どもが集まったとは思えないほど静まりかえります。

その瞬間、全身全霊を込めた山本さんのピアノから心地良い音色が鳴り響きました。

子どものころから憧れたのはショパン。そしてそのすべての曲が心地良く感じたという山本さん。子どもたちにも、ショパンの曲の中からマズルカやノクターン夜想曲第2番、雨だれの前奏曲などを贈りました。

「演奏を終えると子どもたちから質問を受けます。張り詰めていた空気が一気に和やかになりますね。子どもたちは純粋なので、ストレートに質問されるとハッとさせられますね」

「ショパンの中では何が好きですか」
「ピアノをやめたいと思ったことはありますか」
「どうしたら上手くなれますか」

矢継ぎ早に出てくるこんな質問にニッコリと笑いながらも真摯に応えます。

まちかどコンサート「メセナの風」では、小学校に出向き、全校児童へ生演奏をプレゼントした

ミニコンサートの最後は山本さんの伴奏で子どもたちが校歌を斉唱しました。山本さん自らが幼いころに感じた心地良い思い出のように、子どもたちも生涯かけがえのない素敵な思い出として刻まれたでしょう。

「子どもたちには、たくさん良いものを感じて欲しいんです。私もそうでしたから、私のピアノを聴いてもらって、好きなことや、やりたいことを頑張れるような、そんなきっかけになってもらえると嬉しいです」

演奏曲についてや児童からの質問に一つ一つ丁寧に応える山本さん

生まれ育った故郷が養った感性

昨年からポーランドに住む山本さんは、その自然豊かな情景が生まれ育った長野に似ているといいます。

「山がある風景がすごく落ち着くことに長野から出てみて気付きました。子どものころ、休日になると志賀高原や飯綱高原に連れて行ってもらって、新鮮な空気を吸い、おいしい水を飲みました。今思うと音の感性や思い浮かぶイメージは、そういうものから与えてもらえたのかもしれません」

現在、毎日の生活の中で最も大事にしているのは「公園を散歩すること」という山本さん。

比較的に冬が長く春と夏を短く感じるポーランドでは、足早に移り行く季節を大切にする、そんな暮らしを送っていると穏やかに話します。

「公園を散歩していると、時々聞こえてくるのは風と葉っぱの音だけ。森のように広いので、その静けさの中では『無音』を感じることができるんです」

日頃、自身のピアノの音を確実に聴くためにも、敢えて無音の時間を作ってリラックスする山本さんは、長野に戻った時にも安らぎを感じています。

「ショパンは20歳で故郷(ポーランド)から離れたそうです。その後、帰りたいと思っていたかもしれませんが、戻ってくることはできなかったんです。故郷って自分の原点ですから落ち着けますね。戻って演奏ができる私は心から故郷に感謝しています。ですから故郷の皆さんにも心地良く聴いてもらえるようにすべての力を注いでいきたいと思っています」

山本さんの演奏を私も聞かせてもらいました。

まるで風に吹かれているかのように自然体で奏でながら、最大限の力を出し、憧れのショパンへの思いを、じつに繊細に表現していました。

ショパンを愛する山本さんはポーランドに住み、故郷の長野にいたころと同じように感性を磨き続ける[写真提供・©Marco Borggreve]

「やり終わっても疲れないのはエネルギーを頂いているから」とつねに控えめな山本さんは、世界の舞台に立ちながらも気取らず、あるがままでいます。

きっとこれからも、長野で養った感性で、山本さんが奏でるピアノの世界が創り出されていくに違いありません。

コンサート後のサイン会で、ファンだという子どもと握手をする山本さん。だれでも一人ずつ、細やかに対応する姿が見られた

(2015/02/26掲載)

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会える場所 山本貴志オフィシャルサイト

電話
ホームページ http://takashi-yamamoto.com/top.html

フェイスブックページ https://www.facebook.com/takashiyamamotoofficial?fref=ts
山本貴志ピアノダイアリー(ヤマハ株式会社のホームページで毎月1日と15日頃2回更新しています)
http://jp.yamaha.com/sp/products/musical-instruments/keyboards/pianist-lounge/column/yamamoto_diary/

■ピアノフェスティバル2015に出演します
2015年5月2日(土) /3日(日) [キッセイ文化ホール]

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