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No.179

寺久保

尚哉さん

リファーレ総合計画 代表取締役

食、職、住、アートがそろう複合施設に
小路の奥の事務所や倉庫をリノベーション

文・写真 Takashi Anzai

注目が集まるSHINKOJIプロジェクト

善光寺からほど近い長野市東町。「新小路」という名の、細くて短い路地に注目が集まっています。小路を挟む4棟が2014年、相次いでリノベーションされました。4棟は元々、文具卸会社の本社と倉庫。昭和40年代から50年代にかけて建てられた建物です。それがカフェ、オフィス、ホール、シェアハウス、アトリエなど、さまざまな用途のスペースに生まれ変わりました。

SHINKOJIプロジェクトと名付けられたこの再開発に携わり、4棟のうち2棟を運営する株式会社リファーレ総合計画の代表取締役・寺久保尚哉さんは、この物件に出会ったときのことを、こう振り返ります。

「一発でこの空間が気に入ってしまいましたね。普段だったら物件を紹介したいと思うお客さんの顔が浮かんでくるんですけど、ここに関しては最初に見た瞬間から自分でやりたいと思いました」

以降、仲間の不動産会社や建築士、デザイナーらとともに企画しながら、少しずつ手を入れてきました。現在も少しずつ姿を変えていて、2月には2坪ほどのスペースに帽子店がオープンする予定です。

「もう自分の想像を勝手に超えてしまっているんで、逆にどうなっていくのか楽しみですね。想像していたとおりになりましたということではないんです(笑)」

建物を含め、SHINKOJIの空間が持つ魅力に惹かれてか、完成した3棟にはデザイナーや劇団、アーティストなどクリエイティブな人たちが入居、おしゃれなカフェと輸入雑貨店も軒を連ね、何か新しいことが生まれそうで立ち寄るたびにわくわくさせられます。

北棟1階の和食カフェ。味も評判がいいが、Wi-Fiやコンセント完備のため仕事に使う人も多い

ビジネスに必要なスキルが 凝縮されている世界へ

寺久保さんは大学卒業後、東京のウォーターフロントの開発を手掛ける不動産会社に入社しました。きっかけは、テレビ制作会社でのアルバイトで、1年半にわたり東京・佃島などを再開発する不動産会社を密着取材したことでした。

「もともとは自分も(アルバイトしていた)会社も当然、そのままその制作会社に就職するものだと思っていました。でも、取材しているうちに、不動産業界の方が断然おもしろいと感化されてしまったんです」

その取材が終わり、クイズ番組などの制作に戻りましたが、テレビ制作にまったく面白さを感じなくなってしまったという寺久保さん。制作会社の内定を蹴って、不動産の企画やコンサルティングをする会社に就職します。

「人の繋がりや企画力、提案力や実行力など、社会人にとって必要なスキルのすべてがないと成り立たない。そこに魅力を感じたんです」

3年ほどウォーターフロントの開発に携わり、その後は全国展開し始めた穴吹工務店に入社します。

「こういうことが他の街でもできる可能性があるし、建築の知識もほしいと思っていました。ゼネコンの発想は不動産業者とは違うので、ゼネコンのノウハウを自分の知識の中に入れれば、自分にとってプラスになるなと思いました」

その後、約20年にわたり全国で多くの不動産開発に携わります。

北棟2階のシェアオフィス。「いろんな職種の人に入って来てもらって、新たな仕事が生まれればいいなとは思っていたけれど、予想以上のつながりが生まれてきています」

リファーレ=「つくりなおす」

会社の成長期と重なったこともあり、いい経験だったと振り返る、ゼネコン時代。しかし、寺久保さんの中で少しずつ違和感が膨らんでいきます。

「これから人口は減り、住宅も余っていくということは明らかなので、昔からあるものを大事につくりなおすという方が、これからの方向性としては合っているのではないかと思っていました」

2度目の長野支店勤務となったタイミングで退社し、平成21年、リファーレ総合計画を設立。リファーレは「つくりなおす」という意味です。その後、賃貸マンションや飲食店のリノベーションなどを手掛けてきました。

「門前を含めて長野市の中心市街地は、もったいない使い方をしているところがすごく多いんです。それをおもしろいと思ってもらえる使い方に変えていきたいですね」

これまでの再生に関する仕事は事務所や店舗などが中心でしたが、今後は住宅にも注力していきたいという寺久保さん。

「駆け出しのころから学んできたことなんですけど、街は住む人がいないと次第に息切れしてしまうんです。この近辺は働く人は比較的増えてきているけど、これからは住む人を門前に増やしたいですね」

寺久保さんは、長野の中心市街地は土地の権利関係が複雑だと指摘し、それを交通整理するのも自分の仕事だと話します。今後、何をどのようにつくりなおしていくのか、期待が高まります。

小路を挟んで4棟が生まれ変わった。中央通りから覗く小路の佇まいも含めてすべてが気に入って自分で使う事を決めた

(2015/01/26掲載)

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会える場所 株式会社リファーレ総合計画
長野市東町142-2 SHINKOJI北棟2階
電話 026-217-0555
ホームページ http://rifare-web.com/
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