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わくわく・共感できる長野の元気情報を配信します!

ナガラボはながのシティプロモーションの一環です

No.180

田中

和子さん

きらきらパワーズ

若さと元気をすくい上げるスコップ三味線

文・写真 Yuuki Niitsu

スコップ三味線とは

津軽三味線といえば皆さんご存じでしょうが、「スコップ三味線」と聞いてピンとくる人は果たしてどれだけいるでしょうか?

「アルミのスコップに計量スプーンを使って音を出すんです。手首のスナップをきかせないと、いい音が出ないので意外に難しいのよ」

スコップを肌身離さず、わが子のように抱えながら話すのは、きらきらパワーズ代表の田中和子さんです。

百聞は一見に如かずということで、まずは続け様に3曲を披露してもらいました。20数名の主婦が、指揮者を囲みスコップを片手に計量スプーン持つ姿は、これから百姓一揆でも起きるのかと思うくらい異様な光景に見えましたが、曲が始まるや否や、スコップから出る初めての音に驚かされるとともに、曲に絶妙に合わせてスコップを上下に動かす姿に、食い入るように見ている自分がいました。
これは新しいジャンルの音楽だと感じた瞬間でした。

すこっぷ三味線の演奏活動をするきらきらパワーズは、JAながの女性部の元役員のメンバー24名で構成されており、2012年7月に立ち上がりました。すこっぷ三味線を始めた経緯を田中さんはこう話します。

「JAながの女性部は、4年連続長野県代表として『家の光記事活用の部』で全国大会に出場し体験発表をしました。震災の翌年の2月、その年に全国で1位になった発表が、宮城県のJAいしのまきのスコップ三味線グループ『シャベローズ』の代表の渡邊ふき子さんでした。震災で一時活動を停止していた渡邊さんが、土砂の中から出てきたスコップを見て、今必要なのは復興とともに被災された皆さんに勇気と元気を取り戻してもらうことだと、再びスコップを手に取り残ったメンバーで活動を再開したという内容でした。会場は涙と感動でどよめくほどでした」

その日の帰りのバスの中では、「わたしたちもスコップ三味線をやろうよ!」と声が上がったといいます。

その後、JAながの女性部では、ちくちくボランティアとして手作りした『ねこ(地域伝統の防寒着)』115枚を、当時親しくしていたJAそうまへ送り、女性部事務局を通じて、高齢者いこいの場「いきいきくらぶ相馬」の利用者へと届けられました。箱詰め作業は、当時の役員とOB会でやったといい、その事がますます被災地とつながろう! という思いになりました。

当時の役員に任期が来て、OB会に所属したのをきっかけに、田中さんを含めたOB会のメンバーに参加を呼びかけ、全国大会で発表したシャベローズのメンバーのように、地域の人に勇気や元気を届けられるスコップ三味線グループを作ろう!という思いのもと、きらきらパワーズが立ち上がりました。

練習中にアドバイスをする田中さん。グループの中心的な存在である

家元の繰り出す音色

本格的にスコップ三味線を始めることになる田中さんですが、メンバーの全員でその演奏を聴いたことも見たことも無かったので、先に活動を展開していたJA松本ハイランドの皆さんに演奏をしに来ていただきました。その後、縁あって、「津軽すこっぷ三味線」の家元である舘岡屏風山(たておかびょうぶざん)氏が長野に来ることになり、そこで駆け出しのきらきらパワーズが直接指導を仰ぎます。

「実は舘岡さんは、スナックを経営されているんです。それで、普段は店内で三味線を弾いているんですが、ある時たまには変わったことをしようと思って、スコップを使って演奏したらお客さんに受けたらしいんですよ。それが全ての始まりだったそうです」

その舘岡さんの生の曲に一同、驚嘆したといいます。

「撥(ばち)の数が多くて、三味線のようだったんです。スコップを叩いている音じゃないんですよ。すごくきれいで、色んな種類の音が出ていました」

舘岡さんの手から繰り出される多彩な音色にメンバー全員が、感動の渦に飲みこまれました。

舘岡さんの指導により、叩く場所により音が違うということ、そして手首のスナップをきかせること、さらには見た目も三味線のように見せるということを教わり、メンバーは以降、毎月集まり、それぞれの課題や全体練習を行ってきました。

1月14日に行われたJA女性部フェスティバル。「皆さん楽しんでやれました」と指揮者の山下さん

1から曲を作る楽しさ

2015年5月で3年目の活動を迎えようとしているきらきらパワーズ。その中心にいる田中さんは、スコップ三味線の魅力をこう話します。

「撥をいくつ入れるかを考えて、皆で1曲作りあげるということが嬉しいんです。私たちは曲に合わせて音を作るので、楽譜がないんです。だから、1から音を作る作業が楽しいんですよ」

そして一番の魅力はやはり、仲間と集まれる喜びだそうです。

「すこっぷ三味線を始めてから、若くいられるんですよ。確かに年はとりますが、みんな生き生きとしているんです。それに学ぶことは自分と向き合えること。これが、いつまでも自分を成長させてくれるんだと思うんですよ」

全国大会や世界大会までもあるという津軽すこっぷ三味線。しかし意外にも認知度は低いといいます。そんななか、長野県には多くのスコップ三味線の団体があるそうです。

「今後の目標は、県大会をやりたいですね。それと、宮城県のシャべローズさんたちと一緒に演奏したいです。そしてなんといっても、青森の師(舘岡屏風山氏)に自分たちの成長した姿を見てもらいたいです」

満面の笑みで抱負を語る田中さんは、第二の人生を仲間と共に歩んでいます。

最後に私が一番気になっていた質問をぶつけてみました。

「皆さんお揃いのそのスコップはどこで購入したんですか?」

「え~と、どこだったかしら……」

そう思い出している田中さんに割って入り「JAファームですよ!」と教えてくれたのは指揮者を務めるJA職員山下さんでした。

JAファームのスコップにお揃いの人形を付けている。入れ物も自分で編んだものを使用

(2015/01/27掲載)

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