No.143
三田
今朝光さん
ながの協働ねっと代表/NPO法人夢空間 松代のまちと心を育てる会事務局長
人が集まるからこそ生まれる
あたたかさとおもしろさ
文・写真 Chieko Iwashima
ながのの未来を創る、みんなの新しいコミュニティ
今年7月に設立した「ながの協働ねっと」は、さまざまなNPO団体をはじめ、さまざまな立場の人が集まる新たなコミュニティです。
現在20団体が所属し、各NPOの自立や成長とネットワークの拡大のために定期的に交流会を設け、お互いに支援しあえる企画を考えています。また、NPOとそのほかの団体(市民・地縁団体・企業・社会起業家・行政)とも協力し合えるように活動しています。
代表を務める三田今朝光さんは、松代町にある「NPO法人夢空間 松代のまちと心を育てる会」(以下・夢空間)の事務局長でもあり、以前から「ながの協働ねっと」のような枠を越えた交流の必要性を感じていた一人です。
「顔が見える情報交換をしながら、お互いに協力できることが必要だと。そうすることで自分たちの動きもはっきり見えてくるんです」
ながの協働ねっと設立当初のメンバー集合写真(写真提供:ながの協働ねっと)
人とつながるおもしろさ
40年間、営業マンとして働き、いろんな人と関わってきた三田さん。昨年の春から事務局長を務めている夢空間は、まだ会社勤めをしている4年ほど前から軽い気持ちで参加し始めました。いつの間にか自分のやることが増えていったと苦笑いしながらも、その毎日はとても充実しているようです。
「私は生まれも育ちも松代で、昔から父親に聞いていた松代の昔話とかをするのも好きですし、いろんな人とつながることが楽しいんですよね。毎日が忙しいけれど、それがおもしろいから続くんです」
夢空間の発足は13年前。松代町の文化遺産を広め伝えていくために、まち全体を博物館ととらえてさまざまなプロジェクトを推進しています。例えば、まちのなかを歩いて楽しんでもらうために散策ルートをまとめた「まち歩きガイドブック」の発刊や、松代の民話を次世代につなごうと、紙芝居を作ってボランティアの方々に貸し出して保育園や幼稚園、小学校などで上演をして貰っています。定期的に開催している「松代学講座」という勉強会には、各方面から講師を呼んで学んでいます。精力的な活動は注目を集め、全国各地からの視察も頻繁にあります。
「昔、城下町として発展した松代は、武家屋敷や古い町屋など、今も街並みがそのままなので歩いてみると、とてもおもしろいんですよ。夢空間は先輩たちが続けてきた活動を継続しながら、それとは別にほかのイベントを運営しています。今までの先輩方がやってきたことが一貫しているので、安心して活動できます」
昔にタイムスリップしたかのような松代の街並みは歩いてこそ楽しめる。ガイドボランティアも行っている
三田さんは「松代まち歩きセンター」のセンター長も務めています。松代まち歩きセンターは、観光で訪れる人が頼れる情報センターであり、地元の人々の憩いの場でもあります。
「いろんな雑談をしながら情報を仕入れています。誰かがちょっと口にしたことが発展していったりすることもあるし、かしこまった話し合いより、普段の何気ない雑談に大切なことが含まれている気がします」
松代に残る民話の紙芝居は25作以上できあがっている
待ち望まれた設立
ながの協働ねっとの代表を引き受けたのは、すぐに人が集まれる市民協働サポートセンターという事務局がしっかりしていることと、夢空間の活動と趣旨が一致していると感じたことが大きかったといいます。
「人とのつながりを生むという点では同じ目的。すべてが人との交流からはじまる情報の発信基地となっています。新しい関係が広がってコラボしていくと、一人の考えじゃできないことも実現することがあります」
設立のきっかけの一つは、長野市民新聞の連載コーナー「市民とNPOのひろば」の編集委員会で各NPOの代表が集まるようになったことでした。その場でそれぞれの運営の悩みや地域問題を話し合いながら交流が深まっていきました。また、市民公益活動センター(現・市民協働サポートセンター)主催の交流の場「NPOカフェまんまる」での出会いを機に「ながの忍者をふやそう大作戦」や「食育劇団えぇ~っこ」という協働事業が生まれたことや、同センターの10周年記念フォーラムの運営に多くのNPOが関わったことも大きな要因となり、ネットワーク設立の必要性を訴える声は次第に高まっていきました。
「ながの忍者をふやそう大作戦」は、忍者の心を子どもたちのなかに育てることやイベント収益、グッズ売り上げをNPOの子ども支援事業に寄付することが目的。9月の「ながの街なか市場」では子どもたちが忍者のコスチュームに身を包んでウォークラリーイベント「忍者ウォーク」を実施した(写真提供:ながの協働ねっと)
普段、違った目的で活動している人からの意見はとても貴重だと思います。自分の範疇では想定できなかったような発展があるのも、協働するうえでの醍醐味なのではないでしょうか。個々で忙しい人たちが時間を割いて集まるのは、それだけの価値を感じているから。取材で訪れた日にも会議が行われていましたが、盛んに話し合っている皆さんの姿を見ていると「和して同ぜず」という言葉が浮かんできました。
「お互い様でやれればいいかなと。そういう心を持っている人が集まっているからうまくいくんです。お金だけの損得勘定でやっていたら難しいと思います」
三田さんは、活動の場が増えるほど視野も広がったといいます。
「1人で考え込まなくなりましたね。この人ならヒントをくれるんじゃないか、この人でなければあの人に聞こう、という具合に、いろんな人の顔がすぐ浮かぶんです。そうすると紆余曲折あっても、ちゃんとまとまっていくんですよね。それがおもしろいし、何が生まれていくか分からないワクワクした感じがある。ほかの人にもいろんな人を紹介できるし、それだけのノウハウはここ(市民協働サポートセンター)でお伝えできるので、気軽に寄ってもらいたいですね」
今、何かの活動をしている人はもちろん、これから何か行動を起こしたいと考えている人も、ぜひ一度ながの協働ねっとに相談してみてはいかがでしょうか。
「まず自分が楽しまないと。楽しくないところに人は集まらないと思う。そういった点でまちを元気にしているという自負はありますね」
楽しそうに語ってくれた三田さんが、とても頼もしく感じられました。
10月には企業とコラボレーションして、ソーシャルビジネスの研究会を開催。普段なかなか会って話すことのない異業種の人が集まって交流できた。次回は1月に開催予定(写真提供:ながの協働ねっと)
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会える場所 | ながの協働ねっと(市民協働サポートセンター 通称:まんまる) 長野市新田町1485‐1 もんぜんぷら座3F 電話 026‐223‐0051 市民協働サポートセンター ブログ http://naganoshimin.naganoblog.jp/ 松代まち歩きセンター NPO法人夢空間 松代のまちと心を育てる会 |
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