No.248
相澤
啓一さん
ながの軽トラ市実行委員会 事務局長
活気あふれる軽トラ市を
舞台裏で支える
文・写真 安斎高志
共感する人が地元にいるかどうか
今年で5年目を迎えた「ながの軽トラ市」。ここ数年は平均50台以上の軽トラが並び、新鮮な農産物などを求める多くの買い物客でにぎわいます。
平成17年に岩手県で始まった軽トラ市は全国に広まっていますが、JR篠ノ井駅前通りを歩行者天国にして開かれるながの軽トラ市は、全国的にみても活気があるとして知られ、各地から視察が相次いでいます。農業系の新聞や雑誌に取り上げられることもたびたびあります。
5月から11月まで、篠ノ井駅前通りを歩行者天国にして開かれている
実行委員会の事務局長、相澤啓一さんは立ち上げからながの軽トラ市に携わってきました。
「人と人が繋がって、ここまでやってこられた。仕掛けをつくる人も大事だけれど、一番は共感する人が地元にいるかどうかです」
本年度の第1回目となる5月24日。会場には、野菜、米、山菜などの農産物だけでなく、洋菓子や古着など、さまざまな商品が並びました。相澤さんは、自身が所属する地域の軽トラで接客をしたり、記録用の写真を撮ったりしながら、忙しそうに動き回っていました。
更級農業高校の生徒も花卉などを販売、人気を集めていた
農家と消費者を繋げる
ながの軽トラ市は、商店街を活性化し、同時に農家と消費者を繋げるという目的で、長野市の出版社・龍鳳書房社長の酒井春人さんが企画。そのとき声を掛けたのが、農山漁村文化協会(農文協)長野支部で定年を迎えたばかりの相澤さんでした。
「農家が元気で、自分たちで食べるものは自分たちで作っていかないと、地域の自立はないのではないかと考えていました。地域の自然、風土が生み出したものを食べるというのが、自立の第一歩だという思いがあったから、ちょうど軽トラ市の考え方とマッチしました」
接客から撮影まで、現場を駆け回る相澤さん
相澤さんが所属していた農文協は雑誌「現代農業」などを手掛ける出版社。相澤さんは長年、長野支部で営業や取材に従事してきて、農家に顔が広かったため、その人脈がながの軽トラ市のスタートダッシュに大きく寄与します。
2011年の第1回は43台が参加。全国的にもかなり多い数字でした。
相澤さんはさらに、次世代を担う若者も取り込もうと奔走します。長野県農業大学校や更級農業高校を何度も訪れて参加を呼び掛けました。両校は校内調整をして1年目の秋から出店、開店即完売の人気を集めています。
農産物だけでなく、古着や洋菓子の販売、包丁研ぎなど出店者は多彩
人の思いが繋いでいる
ながの軽トラ市の1年目と2年目は、県の補助金を受けたため、1年目の出店者の負担は実質ゼロ、2年目は半分で済みました。正念場となったのは3年目。補助金事業ではなくなり、出店料だけで運営費を賄わなければならなくなったときのことです。相応の負担を強いられることに二の足を踏む人がいる中で、当時の篠ノ井商店会連合会長の田島友男さんが、地域のために続けるべきだと訴えます。
「今の山口信夫会長もそうですが、組織の長が繋いでくれているのが大きいです。いろいろな面から考えてくれますし。そういう人の思いがなければ、3年目で終わっていたかもしれません」
結果的に、3年目の出店者数は過去最高となりました。
篠ノ井駅前通りでの成功を受けて、近隣地区でも軽トラ市を開催する動きが活発化しています。相澤さんはアドバイスを求められたり、実際に運営を手伝ったりしていて、多忙な日々を送ります。
「気力、体力のことを考えると、地域づくりに関わるのは60歳から65歳までがベストだと思っていたんだけど、気付いたらもう私も65歳だよ(笑)」
そんな言葉とは裏腹に、相澤さんの表情は若々しく輝いているのでした。
生産者との対話が楽しみで通う人も多い
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会える場所 | ながの軽トラ市 篠ノ井駅前通り 電話 ホームページ http://keitora.naganoblog.jp/ 日時 5月~11月の第4日曜日 午前8時~11時(7月は祇園祭と重なるためお休み) |
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