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ナガラボはながのシティプロモーションの一環です

No.103

岡田浩史さん

岡田珠実さん

株式会社フル里農産加工

全国を見てきた商社マンの挑戦

文・写真 Yuuki Niitsu

退職後に気づいた地元の盛んな農業

「100年後の長野の農業を明るくしたい。若者が職業の選択肢として農業に手を挙げられる時代にしたいんです」

そう力強く話してくれたのは、今年7月31日に長野市上駒沢にオープンした、つくりたて生アイスの店「ふるフル」を運営する株式会社フル里農産加工 代表取締役の岡田浩史さんです。

「つくりたて生アイス」とは一度も冷凍しないため、賞味期限はその日のうちに、そこでしか食べることができず、地方発送もできない、売切れ次第終了というアイスです。

岡田さんの前職はイタリア製の調理機器などを販売する輸入商社の営業マンで、国内外を合わせて年間200日はホテル暮らしの出張族だったといいます。

「正直、典型的な企業戦士で子どもの入学式、参観日、運動会等の学校行事には全くいけませんでした。全部、家内に任せていましたから。家内には頭が上がりません」
まさに内助の功だったと、岡田さんは当時を振り返ります。

そんな東奔西走のサラリーマン時代を過ごしてきた岡田さんは、体調を崩したこともあり退職後は奥様とのんびり過ごしたいと考えるようになります。

「ある日、犬の散歩で近所を歩いていたら地元の農業が盛んなことに気付いたんですよ。それで、地元の農産物を使った仕事をしたいって考えたんです」

今までは忙しく全く気付かなかった長野市の盛んな農業。自身も今まで全国の生産者さんのお手伝いをしてきたノウハウを地元に恩返しするつもりで起業しようと決意します。

「商売をやる上でいろいろ考えましたが、16歳から21歳までアイスクリーム屋で働いていたことや、27歳から勤めた前職の輸入商社で食品加工の勉強やアイスクリーム店の立ち上げに関わっていたので、これなら活かせると思いました」

近所の農家さんの野菜や果物も使用している色鮮やかなメニューの数々。見ているだけでも幸せな気分になれる

徹底した生へのこだわり

現在、自家農園のほかに近所の農家さんからも野菜や果物を仕入れ、アイスクリームとして販売しています。

「うちはとにかく生のアイスを提供しているので、冷凍は一切していません。地方発送もしていません。それに果物や野菜のシャーベットなら果汁と糖類だけで水はほとんど使わず、皮まで細かく粉砕して一緒に素材として使用する事で栄養価が高いものを提供します」
徹底して「生」という鮮度にこだわり、ここでしか食べられないもの、野菜や果物本来が持つ素材の美味しさをなるべくそのまま提供したいと岡田さんは考えます。
そのために特に気を付けている点もあるそうです。

「一番の難点は、素材を粉砕すると進む酸化です。皮が気にならないように高速粉砕すると茶色くなってしまいます、それを防ぐために真空状態で粉砕しているんです。この方法により酸化せず、色がきれいな仕上がりになり、菌の発生リスクも少なくできるんです」

取材日にちょうどオープンして1か月が経ち、1万人超えのお客様を迎えたといいます。

「アイスクリーム屋は唯一修業しなくても始められるビジネス。機器がコンパクトで安くなり間口は広い。しかし、やり始めると奥は深い。だから好きでないと続かない商売なんです」
と岡田さんは断言します。

岡田さんは25年間、アイスクリーム店や加工の現場に携わり、全国で講演会やコンサルティング指導も行ってきました。そのため退職した現在でも、毎週のようにアイスクリーム店開店希望の経営者や、スィーツ店のオーナーさんらが岡田さんの下に訪れます。
「アイス好きが多い女性は、お客様の立場に立って作り続けることができるので成功する方が多いです。生アイスはとにかく鮮度が命。お客様に常に新鮮なものを提供するという強い気持ちがないと作れないんです。少しでも妥協した時点で商売は衰退していきます」

生アイスクリーム業界を自らの目で見て、肌で感じてきた岡田さんは口を酸っぱくして言います。
というのも実は、つくりたて生アイスというジャンルを25年前に日本で初めて考案したのが他でもない岡田さん自身だからです。

「アイスクリームは日本で唯一賞味期限がない商品です。だからこそ1日しか日持ちのしない『デイゼロ』の『つくりたて生アイス』を提案したんです」

実はあの生キャラメルという名前も岡田さんが命名し、講習会等を通じて北海道に広がっていきました。
まさに業界の革命児!

バターナッツカボチャ(左)とロロンカボチャ。こんなカボチャ見たことがない

6次産業化プランナーとしての責任

現在、農林水産省関連の中央サポートセンター6次産業化プランナーに登録されているという岡田さん。

「6次産業は、生産、加工、販売の全てに携わります。今の農業は生産中心ですが、全て自分達の手で行う6次産業化が実現すれば長野の農業の未来は変わってくるはず。そのためにもまず、私が成功してビジネスモデルとなる必要があるんです」
と改めて帯を締めなおす岡田さんは現在、ヘーゼルナッツの国産化を目指し、自家農園等に5種類150本の苗を植えて、長野の風土に合うヘーゼルナッツを模索しているといいます。

「仕事でよくトリノに行っていたんですが、長野とトリノは同じ冬季五輪開催地であり、長野のリンゴのように、トリノにはヘーゼルナッツがあるんです。これをペーストやチョコレートに加工して販売することを生産者の方々にお伝えするのが今後の目標です」
お店の収益をヘーゼルナッツに投資しているという岡田さんの飽くなき挑戦は続きます。

取材を終えお店を出ようとすると、甘い匂いに誘われてアシナガバチがやってきました。
彼らの鋭いハリもこの店のアイスを目の当たりにすれば、滑らかなスプーンに変わるような、そんな気がしてなりませんでした。

岡田さんが育てているヘーゼルナッツ。長野市の風土にあう種類を模索しているという

(2014/09/29掲載)

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会える場所 フル里農産加工直営 つくりたて生アイスのお店 ふるフル
長野市上駒沢920
電話 026-251-3334
ホームページ http://www.furusato-nagano.co.jp/

営業時間 10時~売り切れまで

E-mail info@furusato-nagano.co.jp

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