長野の代表的な名物を5つあげると、多くの人がりんごの名前を口にするほど、長野はりんごの名産地であり、善光寺平のいたるところでりんごの木を見ることができます。
しかし近年は、シャインマスカットなどの新しい果物の台頭によるりんご市場の低迷や跡継ぎ不足、生産農家の高齢化などにより、長く続く農地を手放さざるを得なくなっています。りんご農家の希望を見いだせない人も出てきました…。
そのような逆境を跳ね返すべく、立ち上がった若者たちを見つけました。
それがフルプロ農園です。筆者がフルプロ農園と出会ったのは、長野県信用組合が運営するクラウドファンディングサイト「show Boat」で、「長野市の耕作放棄地にりんごを植樹しよう~女性も、若者も、高齢者も!みんなが活躍する未来ある畑へ~」というプロジェクトを見つけたことから始まります。
クラウドファンディングサイトという言葉になじみのない方もいるかと思いますので、簡単に説明しますと、「何か新しいことに挑戦したい! けど、先立つお金が足りない」や「地域課題解決に取り組むためのお金を集めたい」などの思いを持ったプロジェクトオーナーが、取り組みの内容に共感してもらったり、リターン品を用意したりして、サイト閲覧者から応援をしてもらい活動資金を集めるためのサイトです。
誰でも高品質のりんごを3倍収穫できるようになるという新しい農法を活用しながら、耕作放棄地にりんごの木を植えることを通して長野の農業を守りたいと頑張っている若者を応援したいと思い、「あなたの樹から採れたりんごを毎年お届け! フルプロ農園オーナープラン」を選択させてもらいました。
このプランでは、「オーナーになった木から採れたりんごを毎年お届け(無期限)」や「農業体験(1年に3回まで、お土産にりんご一箱付き)」、「農園レポートを毎月送付」、「旬のりんごやその加工品を9箱以上1年間定期配送」など、とってもクラウドファンディングらしい内容のリターン品が届きます。りんごの1年オーナー制度はよく見かけますが、フルプロ農園のプランは、木がある以上は『無期限』でりんごを届け続けるという今までにない驚きの内容で、オーナーとのつながりをとても大切に考えているものでした。
とても興味を持ちましたので、フルプロ農園の小林さんから、オーナーとなる木の確認と農業体験のお誘いをいただいた際に、今回の取材も思い切ってお願いしてみました。
10月下旬の休日に長野市赤沼の赤沼中央公園で待ち合わせをして、農園に向かいました。知ってはいたものの、高齢者が多くなりつつある農家さんが多いなか、フルプロ農園のメンバーの若さと活気に驚きました。
畑に到着すると、今までのりんご畑とは全く違って、ワイン用ブドウの垣根仕立て栽培を思わせるような景色が広がっていました。これが「フルプロ農園」がクラウドファンディングで資金を集めながら、耕作放棄地をりんご畑に変えようと目指している夢の卵です。
りんごの収穫体験を兼ねて、農園を案内してもらいながら、「フルプロ農園」のこと、「葉とらずりんご」のこと、「高密植栽培」のことなどを丁寧に教えてもらいました。
「フルプロ農園」は、代表の徳永虎千代さんとその人柄に惹かれて集まった仲間たちが、「葉とらずりんご」と「高密植栽培」という新しいりんごの栽培方法を活用し、地域の農家が管理・耕作できなくなった畑を引き受けてりんご畑として維持したり、農業に縁の薄い若者にも農業を身近に感じてもらえるように収穫体験や農業体験などを企画したり、色々なノウハウを持った仲間が協力し合っています。
フルプロ農園が作る「葉とらずりんご」は、見栄えよりも味にこだわるため、収穫ぎりぎりまで葉っぱを残して、りんごに十分な栄養を行き渡らせる栽培をしています。見た目を重視する通常の流通ルートでは評価が受けにくいので、インターネット販売などを利用したファンづくりが大切なようです。
「高密植栽培」は、木を大きくしない栽培方法なので、収穫、摘果、剪定などの作業が容易で、子供からお年寄りまで無理なく作業することができるうえに、最終的な面積あたりの収穫量は3倍にもなり、農業を劇的に変える可能性を秘めています。また、今までの大きなりんごの木は、おいしいりんごを作るには長年の経験が必要とされていましたが、「高密植栽培」では、根の広がりが狭く、与えた養分がすぐに木に反映されるので、経験に頼らずに安定した品質のりんごを作ることができ、誰もがプロりんご生産者になれます。
今まさに「フルプロ農園」は、未来の可能性に向かって歩み始めたところだと思います。その核となっているのは、代表を務める徳永虎千代さんの周りの人を巻き込む力です。仲間たちは口々に「農業とは縁が無かったけど、徳永さんと出会い意見を交わすうちに、気がついたら彼の周りを囲み一緒に夢を追いかけるパートナーになっていた」と語ります。
好奇心旺盛で、「いろいろな場所に出向きたい」「多くの人たちと交流を持ちたい」、徳永さんのそんな前向きな気持ちが、今まで農業との縁がなかった若者をりんご畑に集めているのかもしれません。
クラウドファンディングサイトにドローンを使用したかっこいい動画が流されていましたが、これも徳永さんが映像の技術者と仲良くなり、生まれたもの。ほかにも大阪から遊びに来ていて、気がついたら長野でりんご販売をしている仲間がいるとか、聞けば聞くほど、徳永さんの巻き込み力に感服します。
「次世代の経営スタイルを導入し、今までの農家よりも広いりんご農園をつくり、りんごの生産量増加を目指したい。プロフェッショナルでなくてもできるダイバーシティ農業や長野のりんごのブランディング化、さまざまな販売方法の導入などを実現させ、遊休荒廃地がこれ以上広がらないように守っていきたい」
と語る徳永虎千代さんの瞳は10年後の目標を見据えていました。
いま、「フルプロ農園」では、食のブランド化、ECマーケティングに強い人材を探しております。
熱い想いを持った徳永虎千代さんとその仲間たちと一緒に、長野の未来をつくる想いに巻き込まれてみませんか。りんごには長野の未来を大きく変える力があると感じます。
追伸、沢山ある木のなかから、自分がオーナーになる木を選び、オーナーの証となるネームプレートを取り付けました。この木は「フルプロ農園」の夢と一緒に成長していきます。
フルプロ農園
⻑野県⻑野市⼤字⾚沼1688番地
TEL 026-296-9616