No.081
ツチヤ
アキノリさん
Hair Make「PHAMILEE」オーナー
東京、ロンドンで得た経験で
個性あるライフスタイルを提案する
文・写真 Takashi Anzai
Mind the Gap
Mind the Gap。イギリスの地下鉄駅などに掲げられている「段差注意」の言葉ですが、他にも「モノやコトに注意を払う」などの意味もあります。Hair make「PHAMILEE」のオーナー、ツチヤアキノリさんはこの言葉をポリシーにしています。
「ギャップがあるものが好きだし魅力的だと感じます。ギャップがあるものを繋げたり、共存させたいという気持ちがあります。長野の人たちってあまり派手なものを求めたりしないですよね。そこを何とかこじ開けて、個性や洗練されたものを提案していきたいので、その要素を髪型に落とし込んだりしたいとは思っています」
ギャップを繋げるには、センスと自信、そして経験が必要になります。
ツチヤさんは東京でも流行の最前線をいく一流店「SHIMA」でスタイリストとして活躍後、ロンドンでサロンワークを経験しました。
「ヘアデザインは、あわよくばその人が歩いて行く方向も(ライフスタイルまで)トータルで助言したり誘導できるかな、と思っています。髪を切ると言うだけの表向きとは別に、もうちょっと深いところまで触ったりできるのが面白いですね」
そう話すツチヤさん。一流店で植え付けられた厳しい職業意識と、海外で得た幅広い経験がそうした考え方に繋がっているのでしょうか。
「まだまだやりたいことばかり。技術もサービスも、内装も」
トップスピードの東京時代
ツチヤさんは小諸市生まれ。高校卒業後、東京の美容学校へ進学します。
「高校生の頃から東京に洋服を買いに行ったりしていました。サラリーマンになりたくない、東京へ行きたい、クリエイティブな仕事がいい、ファッションも好きだった、ということで、すべて満たすのが美容師だったんですよね」
卒業後は、SHIMAに入社。有名店だけあって、あらゆる面でシビアだったといいます。同期の中でスタイリストになれたのは4割程度。ツチヤさんは約10年、SHIMAに勤めましたが、10年残るのは2割いるかいないかだそうです。
「もまれて、研がれていって、一人前になっていくんですけど、その過程がきつかったり、自分が悪かったり、先輩にいろいろ言われたりで、挫折する人は辞めて行ってしまう。いろいろ言われましたよ。顔つき、目つき、ビジュアルが悪いとかね(笑)。洋服も安っぽいのとかダメで、着替えてこいとか買いに行って来いとか、言われたりするし。そういう環境で育ったので、当時は大変だったけれど、一流というところで経験できたことが、今となっては中途半端じゃなくてよかったなって思います」
流行の最先端でトップスピードを保ち続けて10年が経った頃、ツチヤさんの心境に変化が表れます。
「『今』死んでも後悔しないように何かしようと思って。人生短いとか人間一人なんてちっぽけだというところを悟って、日本を出て海外で生活してみたいな、と考えたんです」
ツチヤさんが選んだのはロンドンでした。そしてその選択と2年半の生活が、その後の人生も変えます。
「コネクションで勝負する世界より、実力勝負の世界でやっていこうと思った」と話す
ロンドンで感じた時間の流れ方
ロンドンに渡ってすぐ、ツチヤさんは語学学校に通いながら飲食店でアルバイトなどをしていたそうです。当時は美容師という職業にこだわりはなかったといいますが、知人の髪を切ったりしているうちに自然と美容業界へ戻っていきました。
「どうしても髪型に関することから、頭が離れていなかったのかもしれないですね。だから必然だったのかな。日本にいるときみたいに外国人に接客して、髪型を提案するというのも経験としては面白いかなというのもあったので」
そしてロンドンという歴史ある街に住んだことで、人生観も変わったといいます。
「ロンドンに行ってなければ、たぶん、まだ十代のときと変わらず『東京、東京』って言って、東京に戻ったと思うんです。イギリスに行く前は田舎に帰ってこようなんて微塵も思っていなかったんで。そう考えると、田舎もいいなと思えたこと自体で、人生が90度なのか180度なのか変わった感じはしていますね」
「東京ってどんどんどんどん新しくなっていってしまうんです。美容師も流行を追う仕事なので、常にアンテナを張ってついて行かなければならない。しかしそれだけの生活というのは疲れちゃうし人としてどうなのかと思ったんですね。それに比べてロンドンっていう場所は、新しいものと古いものが尊重し合っていてとても人間ぽく、温かい時間が流れているという感じがしました」
そして約2年半のロンドンでの生活ののち、長野市にPHAMILEEをオープンさせます。
「ヘアスタイルだけで、見られ方も変わるし、その人の気持ちも変わりますよね。それだけでもその人に大きな影響を与えられる。派生していくと、その人の生き方も変えられるような力も持っているのかなと思っています。その分、僕らの役割と人間性というものが問われますが…。僕が今まで学んできた事が少しでも役に立てられるように、きちんとした『モノ』『コト』を提案できる個性あるお店をつくりたいと思っています」
さまざまな経験をしてきたツチヤさんだからこその言葉だと思いました。少しだけ自分を変えたくなったら、ツチヤさんのもとを訪れてみてはいかがでしょう。次の日、歩く方向が違っているかもしれません。
ツチヤさんが主催しているマーケット「コミューン・ヤード」今年も10月13日に開かれる
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会える場所 | Hair Make「PHAMILEE」 長野市石堂町1423-33信濃路ビル2階 電話 026-225-0637 ホームページ http://phamilee.blogspot.jp/ フェイスブックページ https://www.facebook.com/PHAMILEEHAIRDRESSERS |
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