No.054
牧島
悠奈さん
株式会社 フリープラス
日本をもう一度元気に!
文・写真 Yuuki Niitsu
「長野オリンピックの時に、私は年長だったのですが、長野市には外国人がいっぱいいるというイメージがありました」
こう話すのは、現在長野市在住で、来年の四月から株式会社フリープラス(大阪本社)に入社予定の牧島悠奈さんです。
株式会社フリープラスは、訪日旅行(インバウンド)を扱う海外の旅行会社に対してサービスを提供し、日本を訪れるお客様に人生に残る最高の思い出をプレゼントできるように、全メンバーが力を合わせている会社です。
現在牧島さんは、埼玉の大学に通いながら、入社までインターンとしてアルバイトをしています。
「子供の頃から外国人を身近で見て育ったので、外国の人に日本の良さを知ってもらいたいという気持ちはずっとありました」
もともと、インバウンドに興味があったという牧島さんは、長野西高校へ進み国際教養科で中国語を学びます。
「高校で台湾の学生と交流があって、中国語で会話した時に、彼らが善光寺や長野に非常に興味があることを知ったんです。それで、長野の観光を盛り上げたいなと思いました」
その後、大学に入り交流文化学科で観光について専門に学びます。
「大学のインターンで軽井沢のエコツーリズム(地域の自然や文化に触れ、それらを学ぶ旅行や滞在型の観光)に2週間参加した中で、日本の自然資源や生態系の魅力を実感しました」
日本は島国なので、そこに存在する独特の自然資源をもっと推していくべきだと牧島さんは考えます。その後、この考えがもっと強くなる出来事を経験します。
「山ノ内町にある地獄谷野猿公苑で外国人旅行客にアンケートをするアルバイトをしていた中で、彼らは日本人以上に自然に興味があるのを感じました。地獄谷野猿公苑に訪れる日本人よりも、滞在時間が圧倒的に長かったんですよ」
日本人は外国人に富士山や京都の有名なお寺などを観光名所として教えますが、それは違うのかもしれないと感じ、日本人と外国人が思っている日本の魅力は、ずれているのではないかと感じたそうです。
そんな思いを抱いていた牧島さんは、今年の2月に就職説明会で運命的な会社と出会います。
「社長が日本のことを日本一考えているんですよ。日本の元気を取り戻すには、観光の力しかないって。社長の人柄や熱意から、この会社で日本の観光を一緒に盛り上げたい。日本を元気にしたいって決心しました」
その会社が冒頭で紹介した株式会社フリープラスです。
「採用方法もユニークなんです。面接は、最初から社長が相手なんです。そこで、私が感じている日本の魅力における日本人と外国人との微妙なズレを熱弁したんです。そうしたら、社長も同じ考えをお持ちでいらっしゃったらしく『僕もずっとそう感じていたんだよ』というお言葉をもらいました。その時、絶対ここで働きたいって思いました」
面接後に、一人ひとり個室に呼ばれ、すぐに合否を伝えられたといいます。そこで牧島さんは、面接を通過しますが、不合格だった人も熱意次第では、もう一度チャンスを与えられ合格になる場合もあったそうです。
「敗者復活ではないですけど、”どうしてもここじゃないとダメなんだ!”という熱意を見ていて、採用のスタイルにはこだわりを持たない会社だと思いますね」
二次面接での選考インターンでは、実際に職場で業務を経験します。
「常に色んな外国語が飛び交い、スピード感や勢いがあるんですよ。それでいて、一日の終業時には業務報告のほかに、今日の面白かったエピソードや美味しいお店などを皆が報告するような和気あいあいとした雰囲気もあるんですよ」
「<人生に残る思い出をプレゼントする>という理念に対して、全員が同じ方向を向いている姿を見て、普通の会社だったらこんなにまっすぐな方々と仕事はできないと思いました!」
インターンを通して自分がここで働くイメージが出来たと牧島さんは言います。
立山町のインターカレッジコンペティションにて。立山町の舟橋町長との1枚 (写真提供:牧島さん)
そして、順調に二次面接も通り、最終面接に進みます。
「最終面接に行ったら、社長が『二階にある書類を取ってきて』というんですよ。初めて来る会社で、わけわからずその場所に行くと、書類が置いてあって、『中を開けたまえ』って書いてあるんです。それで、中を開けたら”内定”の二文字がありました。何が起きているかわからず、その場で立ちすくんでいたら、社長が入ってきて、『おめでとう』って」
牧島さんに内定が出た瞬間でした。しかも、その姿を2つのカメラで押さえていて
後に動画にもしたという、実に遊び心のある社長。
また、他の内定者には、社長自らが内定書を本人の自宅まで渡しに行ったりもしたそうです。
まだ20代という若さから社員との距離も非常に近く、兄貴のような存在だという社長。
そんな常識にとらわれない自由な発想の社長をはじめ、社員の皆さん全員が常々口にしているのは、
「現状維持は衰退の始まり」だそうです。
牧島さんは、今後JAPAN TIMELINEというインターネットサイトを通し、47都道府県の魅力を海外旅行客向けに発信していくといいます。
「長野市は外国人に対してフレンドリーさが足りないような気がします。多分それは、言葉の壁からくると思うんですが、外国人は外国語で、もてなしてくれることを求めているのではなく、自分たちをありのままに受け入れてくれる雰囲気が欲しいんだと思います」
フリープラス決算合宿。メンバー全員でのチーム対抗ボウリング (写真提供:牧島さん)
「野沢温泉には、毎年のように雪かきを手伝いに来る外国人がいるんですが、野沢温泉の人は外国語で、もてなすわけじゃないんですよ。だから、その外国人にとっては日本の『ありのままの姿を見ることが出来る』というのが逆に魅力となって、毎年来ているらしいんです」
長野市で育ち、高校生の時には3年間、毎日善光寺を通って学校に行っていたという牧島さん。
善光寺をはじめ、文化や自然が生活に密着していて、世界に自慢できるものがいっぱいある長野市。そんな長野市への愛情が強いからこそ、今の長野市の観光にも歯がゆさを感じているといいます。
長野オリンピックがあった年長さんの頃から、長野市の魅力を伝えたいという思いを持ち、現在、その思いは日本全土の魅力を海外へ広めるというスケールの大きい野望に変わりました。
長野市民がまた一人、大きな船出を迎えようとしています。
留学中の一枚。このミッキーを見て中国を感じました(笑) (写真提供:牧島さん)
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