No.382
唐木田
実里さん
ごちゃまぜカフェ キッチンスタッフ
心身がほぐれるような
やさしさとおいしさ
文・写真 オギノフミエ
リラクゼーションから料理へ
食べることが好きで、料理が好き。「健康と料理に関してはオタクです」と笑顔で語る長野市信州新町在住の唐木田実里さん。
2016年5月にオープンした「ごちゃまぜカフェ」(千曲市稲荷山)で、週2日ほどのペースでシェフを務めています。
「ごちゃまぜカフェ」の料理長が病に倒れ、料理人を急募していると人づてに知って面接を受けた唐木田さん。料理の腕と人柄を買われて、2016年11月からスタッフになりました。
現在は、回復した料理長を含め3人が交代でシェフを務めています。
飲食店で口にした味覚の再現が得意で、一般家庭では珍しい手の込んだ和洋中の多彩な料理を食卓に並べることも多く、イタリア料理店での勤務経験もある唐木田さんですが、もともとは代替医療に携わる人。
〈代替療法は、鍼灸、漢方、カイロプラクティック、マッサージなど、現代西洋医学以外の医療行為の総称〉
20歳から5人のお子さんの出産や子育て、家事に追われていましたが、30歳のときリンパ療法の指導者である知人に「絶対に向いている! と無茶振りされて(笑)」代替療法の勉強を開始。「知りたいことは徹底的に追求するタイプ」を自認するだけあってすっかり夢中になり、知識を積み重ね、技術を磨いて、その道のプロになりました。
現在はカフェの仕事と並行して知り合いのサロンや出張などで施術していますが、隠れ家のような小さなサロンを開く構想もあるそうです。
「体をほぐす施術だけではなく、リラックスした状態で体にやさしい食事を楽しんでもらえるような、体も心もひっくるめてケアできる癒やしの空間ができたらいいなと計画を進めています」
この日のランチは、豚トマトの野菜煮込み、スパニッシュオムレツ、明太にんじん、生野菜サラダ、味噌汁、ライス、ドリンク付で1,050円+税。きちんと手をかけて作られていることがしっかり伝わってくるおいしさです
突き詰めずにはいられない
自称「健康と料理オタク」だけあって、そのジャンルで興味深いテーマを発見すると、「ガマンできなくて、自分自身で人体実験をする」こともしばしば。
健康体になり、脳が活性化されると評判の、ある食事療法に興味を持ったときも、とことん学び、実践。期せずして半年で10キロ以上痩せたそうです。
ただ、その方法はあまりにもストイック過ぎるため、人にも薦めやすい健康になれる食事法はないかと探し出し、メディアにも登場している医師が提唱する、糖質の上昇を抑える食事療法を1年間学びました。
料理への熱意と腕前に、食に関する幅広い知識が加わって、「おいしさ」に「体にやさしい」という要素がプラスされたのです。
「ごちゃまぜカフェ」は、お年寄り、障がい者、社会に出ることに戸惑いを感じている若者たち、誰もが楽しさを分かち合い言葉を交わせるコミュニケーションスペースだから、1人でも気軽に訪れやすい空間。和室スペースもあり親子連れにも人気です
野菜の魅力をたっぷりと
野菜が大好きだという唐木田さんですが、「ごちゃまぜカフェ」が仕入れる野菜のおいしさにびっくりしたそうです。
野菜のほとんどは、カフェを運営するNPO法人 Happy Spot Club(通称ハピスポ)の副代表、亀垣嘉明さんの長野市内の農園から届けられています。
「どんな野菜も甘いんです。初めてニンジンを食べたとき『なんでナマで出さないの?』と言ってしまったくらいにおいしくてびっくりしました。季節を問わず、いつでも甘いんですよ。どの野菜もみんなおいしくてチカラがあるから、素材をいかした料理にしたいと思うんです」
ニンジン嫌いなお子さんとランチを食べたお母さんから「ずっとニンジンを避けていたのに、今日はおいしいと言って食べました!」と感謝されたこともあったそうです。
「ここで料理をするようになって、ますます作ることが楽しくなりました。お客さんの反応がすごくうれしいです」
日替わりランチのレシピは、その日のシェフが考案します。レシピを考えることも、唐木田さんにとってはワクワクする仕事のひとつ。
「ぬくもりのある料理が目標です。日常の料理に近いけれど、でもカフェっぽさも出したいなと思います」
「いつも幸せそうに料理をしてるよね。料理に気持ちが出てるよね」とカフェを運営するNPO法人Happy Spot Club代表でカフェの店長でもある高山さや佳さん
いつだって料理は楽しい
カフェでの仕事を終え、長野市信州新町の自宅まで約20分の運転中は、夕食メニューを考える時間です。
仕事で料理をして、自宅でも料理をする。しかもお子さんは園児から高校生まで、食べ盛りの5人。いくら料理が好きとはいえ、ときには大変な日もあると思うのですが…。
「家で料理するのも全然イヤじゃないんです。家族に食べさせたいのはもちろんですが、まず自分でおいしいものが食べたいという気持ちがあって。結局、すごく食いしん坊なんですよね、私は」
代替医療の施術、料理人、5人の子どもたちの母としてあるいは妻としての家事や暮らしのあれこれ。多忙な日々を過ごしているはずなのに、唐木田さんには力んだ様子がありません。
すこやかで溌剌とした印象が強く、肌もツヤツヤで表情もいきいきしています。
「いやなこともありますし、落ち込むこともありますけど、開き直るのは早いほうかな。たとえば体が痛いときでも、『痛みを感じる私は今日も生きてるな』と考えるタイプ。基本的にポジティブというか、いやなことは考えないというか、除外しちゃう感じです」
ケーキやパンを焼くのも好きだという唐木田さん。担当の日は少なくとも1台以上のケーキを焼くそうです。「甘ったるいお菓子が好きじゃない」から、この日の米粉ココアシフォンケーキも甘さ控えめでふんわり軽やか
ほっとする、元気になる、また来たくなる
「食べるとほっとして、ちょっとでも元気が出るといいなと思いながら料理します。来たときとはまったく違う、晴れやかな笑顔で帰っていく人がいるとうれしいです」
たとえば疲労や緊張が積み重なったときや、しんどさを感じるとき。気持ちを込めて作られた、おいしくてやさしい料理が与えるエネルギーや効果はあなどれません。
ちょっと疲れたな、おいしいものが食べたいなと感じたら、温かく柔らかな唐木田さんの手から生まれる料理を味わいに「ごちゃまぜカフェ」へ出かけてみませんか。
コミュニティカフェだけあって常連さんが多く、スタッフのさりげない気配りもあって、「つい長居してしまう」という声も多数。時間があるときは接客もする唐木田さん。施術していることを知っている方から悩み相談されることも多いとか
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会える場所 | ごちゃまぜカフェ 千曲市稲荷山783-5 電話 026−273−5592 |
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