No.341
藏藤
春菜さん
アクセサリー作家 Fil et bijou
原点は祖母からもらった刺繍糸
文・写真 小林隆史
6月にアトリエ兼ショップがOPEN
フランス語で「糸と宝石」を意味する「Fil et bijou(フィル・エ・ビジュー)」。今年6月、アクセサリー作家藏藤春菜さんのアトリエ兼ショップが長野市南千歳にOPENしました。まるでジュエリーのように輝く藏藤さんのアクセサリー。刺繍糸とビーズを手で編んだだけとは思えないきめ細かさ、やわらかな色遣いが人気を集め、名古屋で毎年2回開催される「クリエーターズマーケット」に連続出展する他、これまで数々の展示会や雑誌に紹介され、全国からのリピーターがお店に足を運んでいます。
白色と灰色を基調とした店内には、自然光が差し込み、反射した花瓶の水が地面に揺らめいています。色鮮やかな刺繍糸と、金銀に煌めくビーズ、中央の4人掛け作業台。この場所を訪れると、ひと針、ひと針、丁寧に刺繍糸とビーズを編み込み、終始にこやかにお客さんと話す藏藤さんの笑い声が聞こえてきます。
藏藤さんが「Fil et bijou」を設立したのは2014年。出身地の愛知県で栄養士を務めた後、上京。独学で続けてきた刺繍糸とビーズのアクセサリーに、都内百貨店のバイヤーが目を止めます。
「上京したばかりの私に、バイヤーさんが作風を高く評価してくれて、価格帯、出店先、販売方法など色々なノウハウを教えてくれました。たくさんの人を紹介してくださり、今でもそのつながりでお仕事をしています。人に恵まれていましたね」
作家としてやっていく決意を固め、開業初年度から、都内百貨店の企画展や蚤の市などに毎月2〜3回参加。全国の各会場に毎回足を運ぶお客さんも増え、OPENしたお店は「お客さんに直接会える場所にしたい」と今後の展開に胸を膨らませています。
ガラス窓を天板にしたテーブルには、色とりどりのアクセサリーが並ぶ
「大通りから少し離れたこの場所で、程よい時間の流れを感じつつ、集中して創作ができる」と藏藤さん
刺繍糸とビーズの出会い
約1000色の刺繍糸から選ぶ色彩感やビーズとの組み合わせは、幼い頃いつもそばにあった祖母の刺繍糸と、視力矯正のために渡されたビーズとの出会いが原点となりました。
幼い頃、和箪笥いっぱいの刺繍糸を祖母から譲り受けた藏藤さん。洋裁が得意な祖母の家に行っては、手芸を見たり、ジュエリーを見たりの日々を過ごしました。時を同じくして、極度の遠視だった藏藤さんは、視力矯正のためにビーズを繋げて、ネックレスをつくる訓練を続けることに。偶然身の周りにあったものが組み合わさり、アクセサリーづくりに没頭していきます。
「原点は祖母からもらった刺繍糸でした。祖母もお店をやりたいと思っていたことがあるようで、今では『私の夢を叶えてくれるのかな?』と応援してくれていますね」
制作を続けていく中で、糸とビーズの編み方がどんな教則本にも載っていない独自の手法であることに気がついた藏藤さん。3つのビーズを起点に、正三角形を組み合わせていく手法を「みすみ編みTM」と命名し、10月からはその手法を広めるワークショップも店内で開催していく予定です。
3つのビーズを起点に、規則正しく、複数の三角形をつなげていく(写真提供:Fil et bijou)
お店ができるまで
ある日のこと。藏藤さんのもとへ「実家に眠っていた刺繍糸でアクセサリーをつくりたい」とお客さんが訪ねてきました。
「家で制作するよりも、こうして直接お客さんと会って、話して、つくっている風景を見てもらうことが大切ですね」
思い描いていたお店をかたちにした藏藤さん。あらためてお店づくりを振り返り、ここでもまた「人に恵まれていました」と笑顔で話します。開業前に、たまたま立ち寄った長野市東町の「古道具そらしま」。内装や古道具のディスプレイに一目惚れし、店主高島浩さんに店舗コーディネートの相談をもちかけました。
「初めて長野に来て、伝手もなかった私が、ここまでやれたのは高島さんのおかげでした。業者さんの手配、内装の雰囲気を一緒に考えてくれて、私一人ではできない部分を率先してサポートしてくれました。一緒につくることで達成感も大きかったですね」
長野には昔ながらの人のつながりがあって居心地がよい、と話す藏藤さん。自身もお店づくりに関わり、思い入れのあるこの場所でたくさんの笑顔と出会っていくのでしょう。
「ついついどんなオーダーでも受けてしまうのです」とお客さんの要望に対して真摯に向き合う藏藤さん
長野市東町の古道具店「古道具そらしま」店主・高島浩さんと一緒に什器制作や壁面塗装などをおこなった店内(写真提供:高島浩)
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会える場所 | Fil et bijou 長野市南千歳 988-15 電話 090-1155-8670 ホームページ http://filetbijou.com 不定休 |
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