No.014
大手
智之さん
株式会社アソビズム代表取締役
これからの生きる力を育む
長野ブランチを設立したゲーム制作会社
文・写真 Takashi Anzai
株式会社アソビズムは東京・秋葉原に本社を置くゲーム制作会社です。
「ドラゴンリーグ」や「ドラゴンポーカー」など、それぞれ登録ユーザー数100万人を超えるヒット作を次々と生み出している同社が昨年、長野市桜枝町に長野ブランチを立ち上げました。
大手社長が長野に目を向けたきっかけの一つは、大手社長の子どもの幼稚園選びでした。知人から紹介された長野にある幼稚園を訪れて以降、山登りやキャンプに参加するうちに、家族の新しい暮らし方だけでなく新しい職場環境を現実的に模索するようになります。そして、時代の最先端を行く企業が、長野市に第二の拠点を置くことになりました。
「仕事環境や、そして自分の6歳と3歳の子供たちが育っていく環境を考えたときに、自然がいっぱいあるところ、長野みたいなところで暮らしたいなぁという思いがずっとありました」
「オフィスで働いて家に帰るの繰り返しだと、ともすると人間的に幅が狭くなってしまう可能性があります。野山や自然があると、受ける刺激がまた違ってきます」
年月を経た味わいや温かみを生かしている
子供たちが育っていくうえで必要な環境に加えて、ゲーム制作などクリエイティブな仕事をするうえで必要な環境も、長野にはあると大手社長はいいます。
「野山を駆け巡ってキャンプして、実際に川に入ったりして、そういうダイナミックな体験も必要だと思うんですよ。それがすぐ近くで体験できるのが、長野の素晴らしさじゃないかと思います」
大手社長が思い描くのはシリコンバレーのような環境です。
「シリコンバレーって最先端のイメージですけれど、実際行ってみると森とか山とか、本当に大自然の中にあります。それぞれの会社も車で移動しなければならない遠くにあって、グーグルなんかは山ひとつでひとつの会社です。山超えて会議室に行くような大きさで。でもそういうところだから、自分たちの発想をオープンにしていけたり、おおらかなコミュニケーションができたりすると思うんです」
「東京にこだわらなければ、それこそ日本のグーグルだってできるわけです。森の中に数万坪の土地を買っても、場所によっては数百万円で買えるわけです。そこに自分たちでインキュベーションタウンみたいなのをつくって、東京から起業家とかを呼んで、そこをシリコンバレーみたいにブランディングしていけばいい。要はインターネットさえ繋がれば環境的にはどこだっていいわけです。あとは優秀なクリエイターさえ集まっていれば、そこに仕事って来るじゃないですか。そういう環境ができれば一番いいな、と思うんですね。やはり自然というのは本当に大切だと思いますよ」
レセプションパーティには加藤久雄長野市長はじめ多くの人が訪れた
コミュニケーションの取りやすさと遊び心あふれる東京本社のオフィスは、第25回日経ニューオフィス推進賞を受賞しました。元々、大手社長には「働く環境」を重視する姿勢がありました。
東京本社にはバーカウンター、ゲームコーナー、ボルダリングの壁などがあり、従業員が休憩時間に楽しむことができます。それらの仕掛けの裏には、深いコミュニケーションや新しい気づきが生み出されるようにという意図があります。
「仕事をしていると、自分のプロジェクトと関係する人としか話さなくなるじゃないですか。(従業員が)10人ぐらいだったらいいんですが、50人を過ぎてくると、なかなか話さない人が出てきます。
それが日々のオフィスの中のちょっとした時間で、たとえばバーラウンジとかプレイルームでは別のプロジェクトの人とも話ができるようになるし、同じプロジェクトで働いている人でもちょっと違う環境で話をすることによって、本当に深いコミュニケーションができたり、プロジェクトに新しい気づきができたりするんじゃないかなと思って」
そんな考えを持った大手社長が長野ブランチを置いたのは善光寺門前。桜枝町にあった、築80年を超える旧旅館の建物が空き家になっていたものを改装しました。
当初は伝手もありませんでした。インターネットで知った長野でシェアオフィスを構えるグループに連絡を取り、そこから次々と街のキーマンを紹介してもらい、現在の物件に出会いました
築80年の旅館「飯田館」を改修した社屋
「こっちに来てから分かったのが、長野市の中に門前という素晴らしい場所があるということ。散歩で大門から善光寺を見上げたときに、すごくいい雰囲気だなぁ、ここに自分たちのオフィスをつくったら面白くなるんじゃないかなぁという気持ちになったんです」
長野ブランチにもバーカウンターがあり、加えて和室にこたつもあります。和室ではよく宴会をして、遅くなったら泊まる人もいるといいます。
「こないだ賄いをここでつくってもらったんですよ。シェフが来て、そういうの贅沢だなと思います。みんなで一緒に暮らしているトキワ荘みたいなイメージもありますね」
また、長野ブランチの候補地を探す際に門前で出会った若い人たちの印象がポジティブだったことも拠点選びに影響したそうです。
「長野って僕が思っていたよりも若い人たちが頑張っていました。そういう人たちと一緒に絡むようやっていった方が、もっともっとスピードアップできるんじゃないかと思いました」
現在、長野ブランチでは本社の開発業務のバックアップ機能を担っています。
しかし、大手社長の構想はまだ始まったばかりです。
「新しい事業として、教育事業をやりたいと思っています。僕らのゲーム作りを分かりやすく噛み砕いて若い人たちにうまく教えていく、『未来工作ゼミ』というのをやろうと思っているんです」
日本のプログラミング教育は世界に比べて遅れていると感じている大手社長。プログラミングをはじめとするICT技術に、地元の若い人たちが触れる機会を提供したいと考えています。それを具現化するのが未来工作ゼミです。
「単なるオフィスじゃなくて、色んな人たちが集まって得意なことを生かしたり、ディスカッションをしたり、そういう人が集まる場づくりをしたいなぁというテーマを持っています」
クリエイティブな会社らしく、『「自分らしさ」の集合体』を目指しているアソビズム。こうした魅力的な会社が増えれば、街は活気に満ちていくことでしょう。
ゲーム制作会社だけに遊び心を大事にしている。写真はバーカウンター
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会える場所 | 株式会社アソビズム 長野市桜枝町893飯田館 電話 026-238-6780 ホームページ http://www.asobism.co.jp Facebookページ(長野ブランチ)https://www.facebook.com/asobism.nagano |
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