No.317
古畑
真規子さん
わらべうたサークル「わらべら〜ず」代表
間違えても下手でも、だれがうたってもいい
そんなわらべうたの魅力を伝える
文・写真 みやがわゆき
鬼女紅葉伝説が伝わる村で
長野市の中心部へ注ぐ裾花川の源流部にある鬼無里地区。その昔、都落ちした紅葉が暮らしたという紅葉伝説が伝わる”谷の都”に、現在は人口1491人、689世帯が暮らしています。
その鬼無里地区に暮らす、わらべうたサークル「わらべら〜ず」代表の古畑真規子さんは「自然体」という言葉がとてもよく似合う女性です。上越市に生まれ、高校卒業後は東京の専門学校へ。そこでご主人との運命的な出会いをし、24歳で結婚。結婚後、数年は長野市街地で暮らしていたものの、「子どもは山で育てたい」と主張したご主人に導かれ、古畑家の実家がある鬼無里村(当時)へ来ました。
「嫁に来た頃は、大ばあちゃん(曾祖母)も生きていて、なまりが強くて何言っているかわからないし、大変な所に来ちゃったって思った」
古畑さんはそう話し、笑います。その時、赤ん坊だった長男は今や14歳。その後、長女、次女を設け、三児の母となりました。
転機は長男が3歳の頃。「のびのび子育て学級」に参加していた公民館から声が掛かり、臨時職員として働くことになりました。その後、長野市への合併、”鬼無里イヤー”などに関わるうちに、「ずるずると」鬼無里での生活に染まっていったと振り返ります。初対面でも、数分話せば仲良くなれるコミュニケーション能力の高さで、幅広い世代の人たちから「まきちゃん」と頼りにされる存在です。
お手玉の練習はけっこうしたけど、なかなかうまくならいと照れながら
だれもが歌えるわらべうた
そんな古畑さんと、わらべうたとの出会いは、偶然から始まりました。
第三子を出産し、仕事を休んでいた頃、善光寺大門近くの「MAZEKOZE(以下、マゼコゼ)」を訪れたときのこと。東京から移住してきたオーナーの小池さん夫妻が、門前の古い商家をリノベーションして作った空間は、隠れ家のようで居心地がよく、小池さんともすぐに意気投合しました。帰り際、「来週こんなワークショップがあるから来ない?」と渡されたチラシが、わらべうたと出会うきっかけとなりました。
一週間後、マゼコゼを再訪した古畑さんは、”わらべうたうたい”の坂野知恵さんと出会います。坂野さんは東京国分寺市在住で、子育ての最中にわらべうたの魅力にはまり、その道を究めた女性。今では全国各地でわらべうたの普及と聞き取り調査など精力的に活動しています。人なつこい笑顔で、ユーモアあふれる人柄の知恵さんがすぐに好きになった古畑さん。初めて教わったわらべうたも楽しく、「これなら私にもできそう」と、帰宅後、子どもに歌ったところ、よい反応が返ってきました。
「間違えても、下手でも、だれがうたってもいいところが、いいなと思う」
作詞作曲者がいるわけではなく、楽譜もない。口承文化であるわらべうたに、古畑さんは強く引かれました。
坂野知恵さんを囲んでのわらべうたワークショップ(古畑さん提供)
子どもと過ごす時間の傍らに
その後、第三子である次女が7ヶ月のときに、古畑さんは、鬼無里地区住民自治協議会の臨時職員として復職。”活性化推進員”として、中山間地特有の問題にあたる業務に追われ、生活は一転しました。しかし、忙しい中でも、週に一度の”のびのび子育て学級”には、次女を保育園から連れ出し、必ず参加しました。
マゼコゼでのわらべうたの会にも都合をつけて通い続けました。気がついたら大きくなっていた長男・長女と、年が離れて生まれた次女。お風呂に入るとき、眠る前など、わらべうたを歌いながら子どもと過ごす時間が古畑さんの癒しの時間になりました。
子育て学級では、古畑さんの発案で、わらべうたを取り入れるようになり、次女が子育て学級を卒業してからも、古畑さんはボランティアとしてわらべうたをうたいに行くようになりました。
古畑さんの企画で坂野知恵さん・いぶきさんのライブが行われた「鬼無里地区・三世代いきいき祭り」(古畑さん提供)
わらべたの可能性
マゼコゼでは長野市の芸術文化振興基金という補助金を得て、わらべうたワークショップを運営していました。この基金の要綱が平成27年度に改訂されることになり、古畑さんは、小池さんから相談を受け、任意団体「わらべら〜ず」を発足させます。事業名は「みんながのんびり♪わらべうた」。マゼコゼでの定期的なワークショップを含め、長野市の中山間地で坂野知恵さんのわらべうたライブを行うというもの。イベントによって中山間地に人を呼び、「こんな良いところがあるんだ」と思ってもらうことも狙いでした。
長野市芸術文化振興基金「明日の担い手部門」として、運良く審査を通過したわらべら〜ず。平成27年度はマゼコゼを始め、戸隠、七二会、鬼無里で坂野知恵さんと息子でギタリストのいぶきさんを招いてのライブを行い、それぞれの会場に笑顔が溢れました。
古畑さんは現在、住民自治協議会の”地域福祉ワーカー”のポストに異動し、制度では補えない福祉の課題と向き合っています。幸い、子育て学級でのわらべうたの時間にも、”仕事”として、携われるようになりました。
「先日、老人会のお茶のみサロンに呼ばれて、わらべうたをやったら、みんな喜んでくれて、うれしかったな。わらべうたは、認知症予防や認知症の進行を遅らせる効果も期待できるんだって」
わらべら〜ずでは、今後、長野市内の保育園等での出前講座・ライブなども計画しています。わらべうたのことを語るときの古畑さんの表情は、いつも以上に輝いていました。
わらべうたグッズ(手遊びなどに使う小道具)は自作のものが多い
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会える場所 | 鬼無里地区住民自治協議会事務局 長野市鬼無里日影2750-1 電話 わらべうたワークショップ会場のひとつ |
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