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わくわく・共感できる長野の元気情報を配信します!

ナガラボはながのシティプロモーションの一環です

No.295

金井

祐子さん

オステリア・ガット シェフ

長野の野菜とワインのよさを
素直に引き出す料理人

文・写真 安斎高志

信州の野菜に惹かれて移り住む

約30のワイナリー、ヴィンヤードの長野県産ワインが楽しめるオステリア・ガット。季節を問わず、多くのワイン好きでにぎわいます。しかし、舌の肥えた人たちを惹きつける理由は、厳選されたワインだけではありません。食材とワインの双方を引き立てる料理があるからです。

シェフの金井祐子さんは、長野の野菜に惹かれて京都から移住してきました。当時の同僚の実家が、長野市で八百屋を営んでいたため、試しに仕入れてみたのが、信州野菜と出合うきっかけでした。

「本当においしかったんです。今まで何を食べていたんだろうというくらい、おいしくて。それからは、京都にいるのに、メニューの野菜を信州産ばかりにしました。好きで、好きで」

それから約4年が経ちますが、長野の野菜に対する気持ちはどんどん強くなっているようです。

「これだけ食べ物にあふれていて、お野菜がこんなに豊富で、幸せです。たとえばカステルフランコとか、今までイタリアで買うしかないと思っていた野菜が、近くで採れたり。そういうことを知ったら、可能性も広がりました。たとえばイタリアから種だけ取り寄せて、お願いしたら育ててくれる人がいるかもしれない。長野県産でイタリア野菜がそろっちゃったら、すごく楽しいですよね」

取材時、撮影用に作ってくれたのは、13種の野菜が入ったパスタ。それだけの種類が入っていながらも、素材のおいしさはそれぞれきちんと味わうことができて、野菜に対する愛情が感じられました。

松代一本ネギ、綿内レンコン、村山ワセゴボウなどの伝統野菜を含め、13種の信州野菜が入ったパスタ(4月~11月限定)

食べることをおろそかにしない父

金井さんは東京都出身。「勉強しなくていいから」と、高校は家政科を選びましたが、その選択には、楽器修理の職人だった父親の影響もあったといいます。

「父は『どんな仕事に就くにしても、食べることをおろそかにする人はダメだ』と言っていました。自分で朝ごはんを作っていたし、たとえば牛乳はわざわざ牧場まで買いに行っていました。私は今、仕事をするうえで、自分が健康でいることを一番大事にしているんですが、それも父のそうした暮らしや考え方の影響かもしれません」

在学中、難関の調理師検定1級に合格。その時点で、料理の世界で生きていくことを決めました。京都にあるイタリア料理店に直接、交渉して、働くことが決まり、卒業式の日に東京を発ちました。あえて働く場所として京都を選んだのは、一流の和食を食べて学びたかったから。

「イタリア料理の道に進むとはいえ、食べていただく相手が日本人なら、和食のことも知っていた方がいいんじゃないかと思ったんです。思いつきでしたが、実際に京都でおいしい和食を食べまくったことはプラスになっていますね」

料理はもちろん、明るいキャラクターも魅力のひとつ。「あなたの料理を食べると元気になると言ってもらえるのが一番うれしい」と話す

まず祗園の名店で4年間、厨房で働き、その後、フレンチレストランの調理人に応募します。しかし、そのタイミングでホールスタッフが辞めてしまったため、不本意ながらホール担当となりますが、そこでの経験も現在の糧になっています。

「ホールを経験したことで、食事の時間って、料理を食べるだけじゃないということを知りました。それまで自分は料理しか考えていなかったんですけど、飾る花だとか、お客さんの好みを読み取るコミュニケーションの方法とか、総合的なことが必要だと学びました」

その後、結婚式場のレストランに転職して、厨房に戻り、多くのスタッフと一緒に食事を作り上げていくというおもしろさを味わいます。そして、4年が経過し、「このまま、ここでずっと働いていてもいいかな」と思っていたころ、信州野菜に出合います。

約30ワイナリー、ヴィンヤードの県産ワインが楽しめる

野菜への愛情が感じられる料理

長野との縁は、実家が八百屋を営んでいる同僚だけ。しかし、金井さんは、信州野菜の魅力に抗うことはできませんでした。その八百屋、長野市松代の「カネマツ」を頼って、2013年に移住してきます。

カネマツでは、お惣菜の調理と契約農家の手伝いが主な仕事でした。しかし、それだけだと料理の感覚が鈍ってしまうという不安があったため、飲食店のアルバイトを探していて、現在のオステリア・ガットに出合いました。

「もともと、カネマツさんとは1年の約束だったんです。野菜のことを勉強したら、東京に戻って独立しようかなと思っていました。でも、長野の人はみんないい人だし、出回っている野菜が新鮮だし、このままずっと長野にいてもいいなと思うくらい、長野が好きになっちゃいました」

オステリア・ガットの店内。金井さんの料理と厳選されたワインを求めて多くの人出にぎわう

長野に移住してきて2年以上が経過しました。昨年7月からは、SBCテレビ「3時はららら」で料理コーナーを担当しています。最初は、来たばかりのよそ者が目立つのは嫌だったと振り返りますが、あっという間に現場にも慣れました。

「やってみたら、現場にはいろんなプロフェッショナルがいるんです。スーパーの販促のプロがいて、広告代理店のプロがいて、カメラ、音声、番組のプロデューサー、アシスタント、アナウンサーといったテレビのプロがいて、そんな人たちを見ているのがすごく楽しくなってきました。そして、自分がどんどん表に出て行かなくても、この人たちがいたら、すごくいいものが出来るんじゃないかと思った瞬間、心が楽になったんです」

食材とワインのよさを引き出せるのは、この飾らなさと素直さから来ているのかもしれません。「自分が元気でないと、食べる人を元気にすることはできない」と話す金井さん。その言葉通り、コメントのひとつひとつが前向きでエネルギーに満ちていました。

かつては野菜がそれほど好きではなかったそう。長野県産の野菜が人生を変えた

(2015/12/16掲載)

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