h1タイトル

わくわく・共感できる長野の元気情報を配信します!

ナガラボはながのシティプロモーションの一環です

No.247

鈴村

さん

子どもアート教室「とこといろ」代表/版画家

十人十色の「好き」や「得意」を引き出して
もっとアートを楽しもう

文・写真 くぼたかおり

6月3日に子ども造形教室「とこといろ」を始めたばかりの鈴村優さん。名前のとおり、鈴の音のような明るさと優しさを持ち合わせています。初回の教室は4人の子どもたちが、感じるまま自由に、そして真剣に色あそびを楽しんでいました。

作るだけじゃない。使える作品を

長野市東町「SHINKOJI CAFE」のはす向かいに立つ「SHINKOJIアトリエ」。もとは倉庫だったスペースを棚で仕切り、複数人のものづくりをする人達がシェアをしています。その1スペースを使って、子どもアート教室「とこといろ」が始まりました。

1回目の授業には、未就学児4人が参加。絵本の読み聞かせから始まり、色作り、筆で絵を描く、折染めの4工程を体験しました。最初のうちは少し緊張した様子の子どもたちが、色作り体験からぱっと変化が見えてきました。鈴村さんが子どもたちに「これから色を作ってみよう」と、赤、青、黄色の3種類の色水を用意し、「赤と緑を混ぜたら、何色になるかな~?」と実演。混ぜ合わせた瞬間に色が変化するのがおもしろいのか、それとも不思議なのか。何色になるか予想をしながら、ひと時も目を離しません。

最大で6人という少人数制の教室ゆえ、1人ひとりのペースを大事に進められる

その後は作った色で描いたり、色水に折り畳んだ和紙の角を浸していきました。子どもたちは塗り重ねた時の色の変化や、染めた紙を広げた時の予想しなかった柄に、夢中で作業を続けます。なかには折染めをせず、絵を描き続けることに集中する子もいました。しかし鈴村さんは、みんながバラバラに動いても注意することはありません。

「幼稚園や小学校などの授業では1年を通してカリキュラムが組まれるので、1人ひとりのペースに合わせることはできません。私の教室は少人数制なので、子どものペースとやりたいことに合わせられるのが魅力だと思います」

90分という長さでも、みんな楽しく、集中し続けて授業は終了。次回は折染めをした和紙を表紙カバーにしたノート作りをするそうです。作って終わりではなく、使えるもの、残せる作品に展開していくのも「とこといろ」の魅力といえるでしょう。

初めて体験する折染め。開くと変化する色のグラデーションに「どうなっているんだろう?」と不思議そうな表情で見つめる子どもたち

メディウムはがし刷りという技法で得た自分のスタイル

愛知県瀬戸市出身の鈴村さんは、祖父が絵付け職人をしていたことから美術に興味を持ち、親しんできました。美術科のある高校で美術の基礎を学ぶ中で、唯一授業になかった版画に興味を抱き、多摩美術大学では版画を専攻しました。

「版画は、1つの作品が完成するまでの工程が多く、木目によって意図しない現象が起きることがあります。それがおもしろいんです」

そして大学4年生の時、版画家小作青史氏の助手・三瓶光夫氏が行った、メディウムはがし刷りという版画技法のデモンストレーションを見たのがきっかけで興味を持つように。

この技法は”プレス機のいらない版画”といわれています。描写して凹ませた版に油性インクを詰めてジェルメディウムを塗り、乾いて透明になったところに絵や色を加え、再びジェルメディウムを塗り、紙をのせてはがすという工程を行います。個人で大きなプレス機を持つことは難しいため、大学卒業後はプレス機のある工房に通う人が多い中、この技法であればどこでも出来ると感じた鈴村さん。技法を深めるために大学院へ進み、自分のスタイルを追求していくようになりました。

大学院1年生のころの鈴村さん。作品「地平線にうまれる」のコンセプトノートには「日々を重ね、それを1つひとつ拾っていくことが、私にとって制作する上でとても重要なことだと思う」と書き残されていたという

感じたままを描く。軽やかな人柄を感じる作品

大学卒業後は、靴の企画・デザイン会社に就職。その後、学生時代にボランティアをしていたこども造形教室に携わりたいという想いから退職。東京都内の子ども向け造形教室の立ち上げやアシスタントをしながら、28歳で教員免許を取得しました。その後旦那さんの仕事がきっかけで長野市へ引っ越し、出産、子育てに専念。子どもの成長とともに再び版画ができる場所を求めて「SHINKOJIアトリエ」を見つけました。鈴村さんの作品には、自然界にあるものと現実には存在しないものが組み合わされています。

作品「happy drop」は、あめ玉が噴水のように出てきたらうれしい!という無邪気な発想から生まれた

「わたしの作品には、心をゆさぶられた風景が元になっているものが多いです。あと、例えば電話中に意味なくメモに落書きしたりしますよね? そういう時に描いた形や線などもモチーフにしたり。頭で考えるというより、感じたまま描いています」

版画と向き合う時間を楽しむ鈴村さん。作品はかわいらしさや心地よさの中に独特の色づかいがスパイスとなり、まるで子どもが描いたような伸びやかさが感じられます。現在は9月に東京で開く個展に向けて準備中です。

「個展の準備も、教室も久しぶりですが、やっぱり楽しいです!」

作り手である先生が一番に楽しむ。その姿を子どもは大人以上に感じ取ります。「私たちも楽しんでいいんだ!」と子どもたちが思えるからこそ、初めての教室でも臆することなく楽しめるのではないでしょうか。現在は「幼児クラス」「小学生クラス」は若干名の募集となり、「親子クラス」にも力を入れていくそうです。初めての習い事や、親子のコミュニケーションの一環としておすすめしたい教室です。

授業の最後まで絵を描き続けていた女の子。「やりたい」と感じたことをとことん出来る環境が「とこといろ」にはある

(2015/06/18掲載)

人気投稿

  1. 高野洋一さん うどん たかの店主...
  2. 三井昭さん・好子さん 三井昭商店...
  3. 眞田幸俊さん 慶応義塾大学理工学部電子工学科教授...
  4. 高橋まゆみさん 人形作家...
  5. 玉井里香さん インスタグラマー、SNS運用コンサルティング「タビビヨリ...
会える場所 子どもアート教室「とこといろ」
長野市大門町48-2 SHINKOJIアトリエ2階
電話 090-5107-7761
長野市人物図鑑
食の達人 ながののプロフェッショナル 旬な人 魅せる人 まちをつくる・つなぐ人 人物図鑑特集
マイ・フェイバリット・ナガノ
場所 イベント モノ グループ・会社
ナガラボムービー

 
特集一覧ページ