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No.123

山口

美寿寿さん

やまぐち みすず

城山動物園飼育員

人気者アシカの暮らしを支える
子どもの頃からの夢を叶えた飼育員

文・写真 Takashi Anzai

動物と毎日一緒にいられる幸せ

市街地にあって入場無料の城山動物園。市民の憩いの場所として親しまれています。そこで最も人気のある動物の一つがアシカです。餌をあげる11時と15時半には、アシカの水槽の周りに多くの人が集まります。

先代のアシカから13年にわたってアシカの飼育係を務めているのが山口美寿寿さんです。

「動物が好きなので、毎日近くにいられるというのは嬉しいですね。やっぱり動物は死んでしまうこともあるし、悲しいこともあるんですけど、自分が好きでやっている仕事なのでやりがいがあります」

平成19年に城山動物園にやってきたオスのシュンとメスのカイリとはもう7年の付き合いになります。

「声も認識しているんですけど、目でもよく見ているので、私とアシカの挨拶として、私が手をあげるというのは決めているんです。オモシロイのが、作業着をよく覚えているので、休みの日に私が私服で声をかけるときょろきょろするんですよ。どこにいるんだろうって。ここだよ!って言うと、なんだお前かって顔をされるんですけど(笑)」

動物のエピソードを話す山口さんは本当に楽しそうな笑顔を見せます。

声や手の動きでコミュニケーションする。好きな餌のときはアピールも激しいという

小学1年生からの夢だった飼育員

山口さんが動物園の飼育員になりたいと思い始めたのは小学校1年生のころ。一貫してそれは変わらず、高校卒業後は東京動物専門学校の飼育コースを専攻。そして長野市開発公社に入ります。最初の所属は茶臼山動物園。5年勤務したあと城山動物園に異動となりました。

「どちらもとてもいい動物園ですけど、城山動物園は無料で、散歩がてら来られるお客様も結構いらっしゃるので、こちらの方がのどかな感じはしますね。でも、アシカもペンギンもいますし、県外の友達が来たときは『え!無料なの!?』と驚かれました」

城山動物園に異動したタイミングで、前任のアシカ担当者が退職したため、山口さんがアシカを担当することになります。

「数年で担当が変わる動物園もありますけど、もう13年にもなる私でも分からないことがいっぱいあります。だから長く担当した方がいいし、長く関われることはありがたいですね」

先代のアシカはオスのムサシ、メスのルックとも平成17年に相次いで亡くなりました。3年余の間、世話をしてきた人気者の2頭が亡くなったときは、気持ちを切り替えるのに時間がかかったといいます。

「それまでも担当する動物が死んでしまうということは何回も経験して、そのたびに自分の中でそれなりに区切りをつけて前に進んできたつもりだったんです。でも、アシカが死んだときは、やっぱり人気者だったんで、あとからあとからお手紙をたくさんいただいたり、お供えのお花をいただいたりということがしばらく続いて、人気者の死というのは自分の中だけでは終わらない、それが市民の皆様に愛されている動物なんだなと痛感しました。それまでとはまた違う経験だったので、つらかったけど、アシカの存在の大きさに気付かされましたね。本当に市民の皆さんにかわいがってもらっていたんだなあと」

アシカのほかに水鳥も担当。毎日、1羽1羽、やさしい声であいさつする

よくコミュニケーションして理解する

山口さんは、アシカのほかにガチョウなど水鳥を担当しています。共通して心がけているのは動物たちによく声をかけること。取材時も質問に答えながら、多くの動物とあいさつを交わしていました。

「変に見られてもいいやと思ってやっていますけど、お客さんにはあたたかい目で見てもらっていて、『仲良しなんですね』とか、『人に慣れているんですね』とか言ってくださいますね。動物園の動物とはそういう接し方も大事だと思うんです。昔は、もともと野生の動物だから触ることはいけないと言われていた時代もあるんですけど、今はなるべく人に慣らしておいて、何かあったときでも無理やり押さえつけたりしないで済むようにしておく方がいいという時代になってきています。私も動物との関係をよくしておきたいなという気持ちがあるので、そういうやり取りもチラチラと垣間見ていただけたらいいなとは思いますね」

平成23年6月には、シュンとカイリの息子・カイトが生まれ、現在は神戸市の王子動物園で暮らしています。王子動物園の担当者とはちょくちょく連絡を取っていて、実際に2度ほど会いに行ったといいます。カイトのことを話す口ぶりは離れて暮らす母親のようでした。

アシカだけでなく、多くの動物たちと出会い、そして別れてきた山口さん。

「3歳から長野市に住んでいて、城山動物園は昔から大好きな場所です。数年前に50周年を迎えたんですけど、この先50年も続いて行ってほしいと思いますね」

餌の時間は、アシカの豪快な動きや芸達者ぶりに目がいってしまいがちですが、今度は山口さんとの息の合ったコンビネーションにも注目してみてください。つい微笑んでしまいます。

柵に掲示している説明は山口さんの手書き。「名前だけでも憶えてもらえれば愛着も湧くと思うので」

(2014/10/28掲載)

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会える場所 城山動物園
長野市上松2-1-19
電話 026-233-0586
ホームページ http://www.johyama.com/
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