No.118
守屋
智江さん
子どもの服コトリオーナー/英会話教室講師
今できることを大切に
三足のわらじで挑戦を続ける
文・写真 Takashi Anzai
お母さんの目線で選べる子ども服を
いいものを手ごろな値段で。よく聞くセリフですが、こと子ども服についてはなかなか当てはまるお店がないものです。
そんな悩みを解決してくれるのが、桜枝町にある「子どもの服コトリ」。オーナーの守屋智江さんはお店をオープンした理由をこう話します。
「当時、長野には子ども服のお店があまりなかったんです。デパートか、チェーン店しか見つからなくて、あとはセレクトショップや雑貨店の一角にちょっと置いている程度でした。自分が望むようなお店がないなら、自分でつくろうと思いました」
守屋さんは、こんなコンセプトで商品をセレクトしています。
「小さい子どもを持つお母さん目線のものばかりです。私自身も自分の子どもに着せたいですね。ほぼ一点ものばかりですので、子どもが大きくなったら処分するようなものではなくて、ずっと取っておきたいと思えるようなものを選んでいます。既製品ですぐよれちゃったり、色あせちゃったりだとどうしても処分したくなるかもしれませんが、うちで扱っている商品は何回洗濯しても大丈夫だし、おさがりも余裕でできるものばかりです。長く使っていただいて、かつ思い出に残るお洋服になると思いますね」
その言葉通り、コトリには縫製がしっかりしていて、子どもっぽすぎないデザインの商品が並びます。それらはすべてハンドメイドです。
お店の雰囲気に合うもの、他の作家さんとかぶらないものをセレクトしている
ニューヨークでの11年半
守屋さんは香川県の出身。
就職してから岡山と神戸で計3年間、事務の仕事をした後、ニューヨークへ渡ります。
「20歳のとき、初めての海外旅行がニューヨークだったんです。感じたことがない音と空気と人とが、すごく新鮮でした。日本に帰ってきて、就職して、結婚して、普通に収まってしまうのがもったいないと思えた。こんな世界があるんだという刺激を受けて、絶対ここに住みたいという気持ちがずーっと20歳からありました。でも、日本で3年は働きなさい、という親の意見を聞いて、お金を貯めました」
ニューヨークでは、語学学校や美術学校へ通った後、大学へ入学。会計を学び、その後、日系商社で経理の仕事をしていました。
そして、日本から一緒にニューヨークへ渡った耕司さん(ナガラボ№117で紹介)と結婚。第一子に恵まれます。その頃から日本へ帰って子育てをしたいと考え、ニューヨークでの生活を始めてから11年半、夫の実家がある長野市への転居を決めます。
英会話教室の生徒の年齢層は大人から子どもまで幅広い
やりたいことをやる
帰国後、田舎で古民家の暮らしに憧れていた守屋さん夫妻は信州新町や戸隠などに住居を探しますが、行き着いたのは善光寺門前の桜枝町にある明治時代からの二軒長屋。耕司さんが、「通りも含めた佇まいが気に入った」という理由でしたが、智江さんも古い家屋に住むことは大賛成だったそうです。
「ニューヨークは古い建物ばかりでした。最後に住んでいたのはレンガのアパート。隣に音とか聞こえちゃうけど、味がありましたね。新しい家はつまらないです(笑)」
引っ越してきた当初、夫の耕司さんはいずれ額縁屋をやりたいという希望を持っていましたが、あくまで将来の夢の話で、すぐには無理だと思っていたそうです。しかし、智江さんは「やりなよ」と背中を押します。
「お互いやりたいことをやろうよ、という考えなんです。9.11のテロがあったとき、私はツインタワーが見えるクイーンズ区というところにいたんです。もうもうと黒い煙が上がっているのが見えました。アパートに入って見たらもう建物はないし。あれが自分の人生を違うシフトに入れたというか、あれからもうお互いやりたいことをやるって決めましたね」
耕司さんが営む額縁工房は、今では多くのアーティストから支持を集める存在となっています。
額縁工房の隣の棟で、自身は「子どもの服コトリ」をオープン。そして、現在は英会話教室も運営しています。
「今は子どもたちに英語を教えるのが楽しいし、自分の知識を幼い子たちとシェアすることって大事だと思うんですね。外国で勉強したり仕事をしたりとか、外国の人の思想を翻訳というフィルターを通さずに、自分の力で学んでもらえたらいいなと考えています」
子ども服、英会話、そして二児の母と、三足のわらじを履く守屋さん。「一つに集中すると、他がおろそかになってしまいます」と苦笑いしながらも、「今やりたいこと」を大事に挑戦を続けています。
夫・耕司さんが気に入ったという通りと二軒長屋の佇まい。左側奥の棟がコトリ
人気投稿
- 高野洋一さん うどん たかの店主...
- 玉井里香さん インスタグラマー、SNS運用コンサルティング「タビビヨリ...
- 三井昭さん・好子さん 三井昭商店...
- 星 博仁さん・琴美さん 「中華蕎麦 ほし乃」「麺道 麒麟児」...
- 栗原拓実さん ピッツェリア・カスターニャ オーナーシェフ...
会える場所 | 子どもの服コトリ 長野市大字長野桜枝町883 電話 090-9359-6179 ホームページ http://kotori.naganoblog.jp/ 営業:毎週火曜日〜土曜日(日・月曜日と祝日は定休)10:00~15:00 |
---|