No.116
峯村
正美さん
ハンドメイドハウス野の花/ハンドメイドフェスタinながの企画運営
ハンドメイドの持つ力で
色とりどりの魅力を縫い合わせる
文・写真 Chieko Iwashima
イベント会場がパワースポット!?
「ハンドメイドフェスタinながの」は、手作りの雑貨などを制作者の手から直接購入することができるイベント。出店者のほとんどは主婦で、生活する人の目線で作られたハンドメイド作品の販売ブースが毎回30~40店舗ほど並びます。
8月に開催された同イベントには、平日の昼間にも関わらず多くの女性が集まりました。そこは、まるでライブ会場のような熱気にあふれていて、初めて訪れた私は圧倒されました。日曜日だとこの倍は来るそうです。
8月にエムウエーブ大会議室で開催されたハンドメイドフェスタの様子。10月は40グループ以上が出店予定。ハロウィンの仮装をして参加する作家さんもいるそう
企画・運営をしているのは、長野市立町の「ハンドメイドハウス野の花」の峯村正美さん。
「こんなに物があふれている世の中で、わざわざ手作りのものを求めてくるのは、既製品とはちがう何かを感じたいからなんじゃないかなと思います。お客さんにも、ハンドメイドの物には作り手の思いやパワーがこもっていて、そういうものがいっぱい集まっているここはパワースポットみたいだと言われたことがあります」
それでこんなに熱気に満ちているのか、と納得。さらに、価格はどれも「こんなに安くていいの?」と思うくらいのものばかりです。
「みなさん、ただ作ることが好きで、手にとってもらえることが喜びなので、それで儲けようと思ってないんです。でも長くやっている人は最初の頃に比べると腕が上がっていて、すごく上手なんです。だからあまり安くしないでねって私が言うくらいなんですよ(笑)」
撮影でお邪魔した私が、ついつい購入に走ってしまったのも、会場に満ちているパワーと価格の安さも相まって無理もない…ということで、決して仕事を忘れたわけではありませんよ!
峯村さんが図面から作ったミニタペストリー。5年ほど前から長野市柳町・働く女性の家でパッチワーク講座も受け持っている。フリーレッスンもあり
専業主婦からの開業。背中を押してくれた友人の存在
峯村さんは、おばあさんが繊維問屋に勤めていたことから、いつも身近に布があり、物心ついた頃から布を使って遊んでいたといいます。保育園に上がる頃には人形の服を自分で作って遊び、小学校では刺繍クラブに入部。高校生になると自分の服も作っていました。
「私服の高校だったので、自分で作った服を着て学校に行っていました。色にもこだわって、気に入る色になるように自分で染めたりする変な子でした(笑)」
20代前半で結婚し、3人の女の子に恵まれると子どもたちに服を作るようになりました。さらに幼稚園のママさんサークルがきっかけでパッチワークにはまり、自宅に友人を招いてパッチワークを教えたり、オリジナルのパッチワークの図案を描いて見本を制作し、キットセットを作ってイベントに出店していたといいます。
そんなふうに、裁縫好きの専業主婦だった峯村さんが開業したのは40歳のとき。子どもの手がかからなくなったことなどいくつかの理由がありましたが、ひとつ大きな理由がありました。
「いろんな要素が重なってお店をオープンさせたんですが、一番強く背中を押してくれたのは、高校時代からずっと仲良くしていた友だちの一人を病気で亡くしたことでした。人間は、ある日突然いなくなってしまうことがあるんだと思ったときに、自分が生きてきた証を何かのかたちにして残したいと思ったんです。それがお店というかたちとしてできたんだと思います」
それまでも、いつかは自分のお店を持ちたいという漠然とした夢は持っていたという峯村さん。でも、その「いつか」は来ないかもしれない、と急に焦りが出てきたといいます。
「そのときは今すぐやらなきゃと思って、けっこう無理をしてお店を出しました。その友だちが私の背中をドンッと押してくれたんだと、ずっと感謝しています」
多種多様な作家さんが講師をつとめるワークショップを開催。この日は羊毛フェルトのはぐみーさんが講師
多くの人が表現する場として
2001年の11月、ながの東急シェルシェのすぐ裏にオープンした「野の花」。そのときは布の販売が中心で、一部既製品の雑貨も扱っていました。2004年4月、若里に移転してからは、一般の人が作った作品の委託販売も始めました。
「若里のお店で委託販売を始めたとき、次から次へと自分の作品を出したいという人が集まってびっくりしました。私と同じように作ることが好きで、それを人に評価してもらいたいと思っている人がこんなにいるんだと。でも、買う人はどんな人が作っているのかを知らないし、作家さんもどんな人が買ってくれたか分からない。私が間に入ってしまうことでお互いのことを知らないのはもったいないと思いました」
そこで、作家さんとお客さんが直接会えるようにと始めたのが冒頭の「ハンドメイドフェスタinながの」です。初開催は2010年5月。季節ごとに続け、今年10月に20回目を迎えます。これまでに出店した人は延べ100グループ近く、200名以上になるといいます。
「フェスタの準備はけっこう大変なこともあるんですが、大勢の人が集まってくれて、当日の喜びが大きいからまたやろうって思うんです。やめるなんて言ったらみんなに怒られちゃう(笑)。自分の励みでもあるので、長く続けていきたいですね」
現在の場所に移ってから始めたカフェ営業は「ハンドメイドが好きな人同士とことん話せるようにとずっとやりたかった」
フェスタの開催が定着してきたため、2011年4月に現在の善光寺の門前に移転してからは店頭での委託販売の量を減らし、アンテナショップとしていろんな作家さんの作品を少しずつ置くようになりました。
自分自身の思いをかたちとして残したいという気持ちから始まったお店。今では、いろんな人の個性が集まって価値を増しています。
「もう自分だけじゃなく、作家さんたちが表現する場所にもなっていると思います。やってきたことは間違いじゃなかったですね」
人形、絵本、ポストカード、アクセサリー、トールペイント、布バッグなどいろんなジャンルのハンドメイド作品が並び、時間を忘れて見入ってしまう。店舗2階では個展も開催
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会える場所 | ハンドメイドハウス野の花 長野市立町981 電話 026‐233‐6288 ホームページ http://nonohana.naganoblog.jp/ 【イベント情報】 |
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