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No.88

信州新町美術館・有島生馬記念館・信州新町化石博物館

ナガラボ編集部のマイフェイバリット

琅鶴湖(ろうかくこ)のほとりで、長野市の歴史と文化、アートを感じる

文・写真 宮木慧美

長野市内より車で約40分。犀川に沿って進んだ国道19号線沿いの信州新町地区に「信州新町美術館」と「有島生馬記念館」、そして「信州新町化石博物館」は並んでいます。
 
地域の文化・歴史を伝える貴重な資料を数多く収蔵していることから、市内の小・中学生が学習のために訪れることもあるそう。「子どもの頃に行ったことがある!」という人もいるのでは?そんな3館の魅力に迫ります。
 

長野市は海の底だった!?“新種”や“世界初”の貴重な化石も収蔵

はじめに案内していただいたのは、1993年に開館した「信州新町化石博物館」。旧信州新町が長野市に合併した2010年から、長野市立博物館の分館という位置付けになりました。ここには三葉虫やアンモナイト、植物、魚・貝類など世界53カ国から集められた化石が収蔵され、信州新町地域の地層や化石についても学ぶことができます。今回は、学芸員の畠山幸司さんに長野市にゆかりのある資料を紹介してもらいました。
 

▲信州新町化石博物館学芸員の畠山幸司さん
 
「当館には長野県の“天然記念物“に指定されている化石が、3種類・4点収蔵されています。この大きな骨はクジラの化石。『シンシュウセミクジラ』の側頭骨から上顎骨にかけての部分です」
 
今から52年前に長野市信州新町山穂刈で発掘されたこの化石。81年前の発見当時は身体全体が残っていましたが、現地保存だったため胴体の大半が崩落してしまったそう。標本の大きさから体長は12mと言われています。
 

▲シンシュウセミクジラの化石。その大きさから、全長12mの巨大なクジラが想像できる
 
「研究を進めると、この化石がセミクジラ属の新種であることが判明しました。【信州】で見つかった【新種】の『セミクジラ』なので【シンシュウセミクジラ】と命名されたそうですが、ダジャレみたいですね(笑)。さらにセミクジラ属の化石の中で世界最古(当時)ということも分かりました。とても重要な化石ということで、昭和54年に長野県の天然記念物として指定されました」
 

▲「オントケトゥス」の頭部化石。現在のセイウチと比べ、牙の長さが短い
 
現在の景色からは想像できませんが、400万〜500万年前までは海の底だったという長野市一帯。他にもセイウチのご先祖にあたる「オントケトゥス」の頭部化石2点と、世界最古の「アシカ科化石」が長野県の天然記念物となっています。
 
「当館の駐車場には『ディプロドクス』の実物大復元模型がありますし、館内にも『エラスモサウルス』の復元をはじめ恐竜の模型を展示しています。しかし残念ながら、長野市・信州新町からは恐竜時代の地層が出ていないんです。けれど、近隣の小谷村では2億年前のものと推定される『プレシオサウルス』の歯の化石が見つかっています。小谷村からは恐竜の足跡の化石も見つかっているので、いずれ恐竜の骨の化石が見つかることもあるかもしれません」
 

▲展示室の中央に展示されている2体の恐竜の模型
 

この風景を愛する人々の想いからスタートした美術館

続いてお話を伺ったのは、信州新町美術館の学芸員・前澤朋美さん。1982年に開館した美術館の成り立ちや収蔵作品について教えていただきました。
 

▲信州新町美術館学芸員の前澤朋美さん
 
「当館の成り立ちは全国的にも珍しいものだと思います。戦後、県内に疎開していた栗原信(くりはらしん)さんという方がいたんですね。二紀会(絵画・彫刻の美術団体)の創立メンバーでもある栗原さんは、ヨーロッパ訪問の経験もある人。『フランスには小さな村にも特色あるミュゼがあり感動した。この村にも美術館をつくりましょう』と水内村内(当時)の若い人とジンギスカンを食べながらお話したそうです」
 
戦後の混乱期、文化や芸術の前に生活を立て直すことが優先されるような時代に、水内村(当時)の人々はこの提案を受け入れたと言います。
 
「昭和初期まで、この辺りは船で物資を運んでいました。人やものが行き交う要所だったんです。だからこそ、外からの風や新しい文化を受け入れる土壌があったのだと思います。地域の人は美術家とのふれあいの中で『いつかミュゼを建てよう』と想いを大きくしていったようです」
 

▲信州新町の風景を切り取った絵画。取材時に開催されていた『祝・北信美術会70周年「北信展を飾った作家たち」展
 
風光明媚な場所としても有名だった信州新町地域。画家や歌人が訪れては作品制作を行ない、地域の人との交流も楽しんでいたそう。大きな写生会が開催された折には、画家が地域の民家に宿泊し、お礼にと作品を残していったのだとか。今でもその時の作品を大切に保管されている方が多いようです。
 
「人・芸術を大切にする風土が信州新町には根付いているように思います。当館には2,700点の収蔵作品がありますが、そのすべては寄贈していただいたもの。購入した作品は1点もありません。現在も、友の会のみなさんが草刈りなどのバックアップをしてくれています。長野県内には美術館がたくさんありますが、どこよりも『人の想い』が強いのが当館の魅力ではないでしょうか」
 

▲開催中の「知られざる創作版画家−小泉癸巳男」展。コレクションには長野市信州新町にゆかりある作家の作品が多数
 

地域の方たちに、芸術家が愛した景色を五感で味わって欲しい

最後にお話を伺ったのは、美術館長の河原節子さん。信州新町とゆかりの深い画家・作家・書家の有島生馬が生前拠点としていた洋館を移築した「有島生馬記念館」を案内していただきました。
 

▲館長の河原節子さん
 
「明治23年にイタリア人によって建てられたこの洋館。取り壊される計画がありましたが、生馬の一人娘、暁子さんの熱い想いを受けてここに移築されることになりました。地域の方をはじめ、多くの方の寄付で再建され、昭和57年に『有島生馬記念館』としてよみがえりました」
 
セザンヌを日本に初めて紹介したことでも知られる有島生馬。豊かな自然と地域の人たちとの交流を楽しみに、何度も信州新町を訪れていたそうです。
 
「眼下に広がる犀川ダム湖に『琅鶴湖』と名前をつけてくれたのも有島生馬さん。舞い上がる鶴のような犀川の蛇行と、北アルプスの雪解け水が青碧色になっている様子を命名していただいたのです。」
 
記念館の窓辺からも眺められる「琅鶴湖」。水量や季節の木々の変化を受けて、日々違った表情を見せてくれるそうです。
 

 

▲青碧色が美しい琅鶴湖。対岸には梅園があり、春には満開の梅が楽しめる
 
「長野市内と言っても、信州新町は豊かな自然が残るエリア。四季折々の自然を感じながら『琅鶴湖』を眺める時間は、日々の喧騒を忘れさせてくれます。多くの人とのご縁で生まれた美術館・博物館ですから、今後も人と人とのつながりを大切に、みなさんに愛される場所にしていきたいですね。」
 
信州新町に訪れ、アートと歴史を五感で感じて欲しいという河原さん。多くの芸術家・地域の人が愛した土地であることを知った後に作品を見ると、その時々の物語まで感じられるような気がします。美術館・博物館ではギャラリートークや子ども向けのワークショップを定期的に行なっているので、立ち寄ってみてはいかがでしょうか。
 

 
 
 
<info>
信州新町美術館・有島生馬記念館・信州新町化石博物館
〒381-2404 長野県長野市信州新町上条88-3
ホームページ
 
<お問い合わせ>
電話:026-262-3500
FAX:026-262-5181
メール:shinmachi-museum@ngn.janis.or.jp

(2019/06/11掲載)

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