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No.86

茶臼山恐竜公園

ナガラボ編集部のマイフェイバリット

山の中腹に実物大の恐竜が25体も!

文・写真 安斎高志(文)、山口茂秀(写真)

最大は体長25m!リアルな恐竜と遊べる公園

長野市南西部に位置する標高730mの茶臼山。その中腹には、実物大の恐竜が25体も並ぶ公園があります。一番大きなディプロドクスの体長は25mです。
 
あえて恐竜の“模型”とも“オブジェ”とも書かず、“恐竜”と表現したのは、豊かな木々を背景に佇む姿がリアルだから。公園から見下ろす里山の風景も相まって、太古の時代にタイムスリップしたかのような気持ちになります。
 

 
入口近くで最初に出迎えるのはトリケラトプス。このあたりは中生代から白亜紀の恐竜が並びます。そして、上へ登るごとに時代が遡り、最も標高の高い場所には古生代・ペルム紀に生息していたディメトロドンらが待っています。
 
25体とも、触れるのはもちろん、登ることもできます。中には滑り降りることができるものも。その自由さもあって、オープンから39年目を迎えた今でも人気が翳ることはなく、年間約6万人がこの公園を訪れています。
 

全国初、地滑り跡を活用。非日常的な光景を逆手に

この茶臼山恐竜公園は、1980(昭和55)年にオープンしました。全国で初めて、地滑り跡を活用した公園です。第一弾として1977年に植物園を開設し、その3年後に恐竜公園ができました。
 
恐竜を配置しようという発想は、荒々しい地滑り跡の光景を見た、当時の長野市役所公園緑地課長・小島武彦さんから生み出されました。土塊がむき出しになり、そこに降った雨水により、いたるところに亀裂が入る悪条件。それを逆手に取り、荒野の背景が生きる公園をつくろうと考えたのです。
 

 
ただ、完成までの道のりは簡単ではありませんでした。最大の問題は地盤の不安定さ。実物大の恐竜を設置するのにもかかわらず、国の指導により、コンクリートの基礎が打てなかったことです。
 
茶臼山の地滑りは1847年の善光寺地震に端を発し、明治、昭和と長年にわたり地割れや土砂崩れが続きました。その後、防止工事が施されて安定はしたものの、公園開設の時代はまだまだ万一に備えて禁止事項が多かったのです。
 
基礎が打てない中、小島さんが打った手は、鉄骨を“いかだ”状に組んで土台にすることでした。地盤に影響せず、それでいて恐竜を安定した状態にできます。万一、地滑りが起きても、恐竜はいかだに乗って斜面を滑り降りるだけ。建築の専門家にはできない発想でした。
 
こうして、悪条件を逆手に取りつつ、一方では乗り越えつつ、恐竜公園はオープンしました。その独創性には遊び場としてだけでなく、地滑り跡の活用事例としても大きな注目が集まり、当時から現在に至るまで、他の市町村から多くの視察があります。
 

自然の中で楽しみながら学んでほしい

恐竜の体はFRPという強化プラスチックでできていて、そこに空想で色が塗られています。先に書いたとおり、恐竜の体には登ってもいいし、ティラノサウルスに至っては内部に入り込み、口の中から外を見ることもできます。そのため、どうしても塗装が剥げやすく、メンテナンスが大変です。毎年、GWの後、順番に塗り直しなどをして、来場者が増える夏休みに備えています。
 

 
公園から遊具が消えつつある昨今、自由に触れられる実物大の恐竜は非常に貴重な存在と言えるでしょう。山の中腹という場所だけに、ほとんどのお子さんは親御さんと一緒に訪れるため、大きなけがも報告されていないそう。
 
「山から見下ろす景色と、迫力ある恐竜、そしてツツジの花などを一緒に楽しみながら、同時に生き物の歴史などを学んでほしいです」と恐竜公園を担当する公園緑地課の古澤潤さん。躍動感あふれる恐竜たちと善光寺平の景色を眺めながら滑り降りる「ローラー滑り台」もおすすめとのこと。
 

 
荒野のような景色から太古のロマンに思いを馳せ、発想された全国でも珍しい公園は、その後の植樹によって緑豊かな憩いの場所になりました。現在は恐竜公園とその上部にある植物公園を経て、茶臼山山頂までトレッキングを楽しむ人たちも多くいます。子どもからお年寄りまで幅広い人たちに愛されるこの地が、かつて地滑りで多くの人を困らせていたということは、なかなか想像できません。
 
※この記事は、ナガラボフォトコンテストで最優秀賞を受賞した山口茂秀さんの作品、および山口さんが撮影した写真で制作しました。
 
 
 
<info>
長野市篠ノ井岡田・有旅・山布施
電話 026-293-5168(管理事務所)
http://www.chausuyama.com/kyouryu/

(2019/03/22掲載)

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