No.70
学生と社会人共催イベント『ちょっと今から就活してみる。』
ナガラボ編集部のマイフェイバリット
世代や職種を越えて、「働くこと」を語り合う
文・写真 小林隆史
「社会に出て働く上で、大切なことって何だろう?」
「大学を卒業して、すぐに先生になるのは、ちょっと不安……」
「会社に入って、最初から完璧に何でもできる、なんてことはないから、一つひとつやってみることが大切だよね」
2018年2月。冒頭のやりとりは、信州大学の学生、社会人、現役の教員ら約20名が集まり開催されたイベント、『ちょっと今から就活してみる。』での一幕。
昨年の7月に続いて2回目となる『ちょっと今から就活してみる。』は、学生と社会人が5人1組ほどでグループトークを行い、就職に対する不安、働くなかで経験してきた実感などを語り合うイベント。
社会人になることに漠然としたイメージを抱いている学生に対して、経験を積んできた人生の先輩たちが、これまでの葛藤や責任をにじませながら、優しく言葉をかけるなど、それぞれの立ち位置で、思い思いに将来への展望を交えています。
現役の小学校教員を務める服部直幸さん(信州大学教育学部出身:写真左)を中心に、学校現場の楽しさや苦悩に耳を傾ける学生たち。同じ大学の卒業生と後輩で、働くことについて語り合う貴重な機会に
大学卒業後、公務員として市政に携わる道を選んだ竹内陽平さん(信州大学教育学部卒業:写真左)は、「どんな会社や組織でも、人ひとりの意志や行動が、人を動かす。だからこそ、自分の仕事に責任をもって、働くことが大切」などと話す
社会人の言葉を真摯に受け止めながら、自分の将来の夢をはっきりと言葉にする学生の姿も
主催者の平岡駿さん(FabLabNagano学生コーディネーター)。大学生と社会人に直接声をかけ、本企画を運営している
イベントを手掛けている、信州大学教育学部 大学院生の平岡駿さんは、イベントにかける思いをこう語りました。
「僕は教員を目指して、大学で勉強してきましたが、ある時から“ほんとうにこのまま、先生になっても大丈夫?”と疑問を抱いたのです。
そして、会社員の方や、教育プロジェクトを企画する人、働きながら地域活動に参加する人などに会いに行くようになり、色々な働き方や社会との関わり方を模索するようになりました。
色々な考えを聞くなかで、だんだんと自分の視野が広がり、多様な価値観を知るようになりました。だから、もっと色々な人の話が聞ける機会をつくりたいと思い、学生と社会人が交流する場を企画することにしたんです」
4年間の大学生活で平岡さんが実感したのは、「色々な人と語り合うことで広がる、多角的な視野」。
その気づきは、参加者にも届いていたようで、小学校の教員をめざす酒井朝羽さん(信州大学3年)は、イベントを振り返り次のように話しました。
「かつてある人から、『教員って、学校の世界しか知らないよね』と言われたことがあったんです。それを聞いて私は、企業に就職することなく学校現場に入ることに、不安を感じたんです。もっと社会経験を積んでから、学校現場に入った方がいいのかもしれない?と。」
酒井朝羽さん(写真中央)は、1月に開かれた市民演劇の舞台に立つなど、大学以外の場で社会人と交流する機会を大切にしているそう
だけど今日のイベントを通じて、気づいたことがありました。それは、色々な働き方や、仕事や会社があるけれど、誰もがそれぞれに目標や成し遂げる意味を自分で決めて働いている、ということでした。だから私も、「なりたい先生像」を決めてから、学校現場で働きたいと強く思うようになりました。
だから私が先生になったら、今日のように色々な人と語り合ったり、自分の知らない社会のことを聞いてみたりしながら、学校以外の世界を知ることを大切にしていきたいです」
平岡さんが気づいた「学生と社会人の交流の大切さ」は、学生に橋渡しされ、社会人になる一歩を見つめ直す機会になっているようです。
今後も参加者を募り、自主的に企画を開催していく予定。興味を抱いた人は、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
【INFO】
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