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No.62

長野と湯田中温泉をつなぐ長野電鉄

ナガラボ編集部のフェイバリット・ナガノ

文・写真 小林隆史

現在では、多くの外国人観光客にも利用されている長野電鉄は、長野と湯田中の33kmを走る北信濃のローカル線。
長野市と各地をつなぐ主要ルートであり、渋温泉や地獄谷温泉、小布施などの観光地への旅を運んでいます。そんな田舎と世界を結ぶ長野電鉄ですが、実は、地方私鉄としては、非常に珍しい特徴があるのでした。

地上の路線を地下に整備した画期的な都市開発

長野電鉄は、長野駅から善光寺下駅の市街地区間が地下路線となっています。地元の人にとっては、特別に取り立てるほどのことではありませんが、実は、当時としては非常に珍しい都市開発だったそうです。

かつては地上路線だったこの区間は、慢性的な交通渋滞対策として、1981年に地下化されました。地上の駅舎はなくなり、かつての地上路線は長野大通りなどとなり、電車が走っていた過去の面影はすっかり様変わりしました。

しかし、当時としては、地上の路線を地下化するという画期的な都市計画は、その後の日本の都市開発において、とりわけ注目を浴びたそうです。

昭和に首都圏で活躍してきた引退列車が今も走る

さらに特徴的なのが、長野電鉄線を走る車両は、かつて首都圏で活躍していた引退列車たちであるということです。

地元の通勤通学の足として、日常的に使われているこの普通列車。これは、地下鉄日比谷線が開通した昭和36年から活躍していた電車で、製造から50年近く経った今も、走り続けています。

前面ガラス張りのこの展望車両は、かつては、新宿と箱根を結ぶ小田急電鉄のロマンスカーとして走り続けてきた車両です。今では、猿が温泉に入っている風景で有名な地獄谷温泉や、アニメの舞台にもなった渋温泉へと旅する、多くの外国人観光客に利用されています。

トンネルを抜けたその先に世界のどこへでも

そんな長野電鉄の地下ホームは、どこか海外の地下鉄を思わせるような雰囲気。しかし、正式には地下鉄ではなく、あくまでも市街地の下にある「トンネル」なのだとか。
「地下」よりも「トンネル」と呼ぶと、先に世界が広がっていることを思わせられるように、善光寺下駅を越えて、地上へ姿をあらす瞬間は、まるで、時を経て、日の目を浴びるようになった無名映画のようです。

トンネルを抜けた先で、車両のかつての活躍や、地下路線を走り、人目に触れなくなったことなどに思いを馳せてしまうのでした。

ちなみに、この瞬間を捉えることができるのは、長野市三輪にある「横山橋」という小さな高架橋から。
ちょうど撮影時には、電車が走り抜けていく様子を、子ども連れのおばあちゃんとお母さんが肩を並べて眺めていたのでした。

〈INFO〉
「横山橋」(竣工 昭和56年3月)

長野大通りを長野駅から長野高校方面へ。善光寺下駅信号を右折。その後、二つ目の信号を左折し、県道399号(相ノ木通り)へ北上。
または、善光寺下駅下車。その後、善光寺下駅信号から東へ。二つ目の信号を左折し、県道399号(相ノ木通り)へ北上。

(2017/12/08掲載)

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