No.38
戸隠どんど焼き祭り
フリースタイルスキーヤー 曽根原功さんのフェイバリット・ナガノ
神坐す戸隠ならではの祓いの火
文・写真 みやがわゆき
15日の歳とり
旧暦で1月15日は、小正月(15日の歳とり)と呼ばれ、昔の日本人にとって、元旦の歳とりと同じくらい大事な祝日でした。
長野では、正月の朝に、小豆粥をつくり、ヌルデの箸で食べるという習わしがありました。赤い小豆には邪気を払う意味があり、小豆粥を食べることで、一年の無病息災を祈ったのです。時が経ち、小正月に小豆粥を食べるという話は、聞かれなくなりましたが、今なお継承されている小正月の行事といえば、どんど焼き。松本など中心地区では、三九郎(さんくろう)と呼ばれ、もともと宮中行事として行われていた「左義長」の俗称で、正月の松飾りや書き初めなどを焚く行事です。
村の若衆が中心になって、山から切ってきた松の木でやぐらを組み、門松やしめ縄などをまきつけるのです。大きいものでは高さが5メートルに及ぶものもあったそうです。
昨年、重要伝統建造物保存地区に指定された戸隠中社地区でも、どんど焼きは欠かせない行事として継承されています。
どんど焼きの前日、地元有志の手で、戸隠スキー場の中社ゲレンデにやぐらが組まれる
戸隠スキー場とともに
昭和45年に戸隠国営スキー場(現戸隠スキー場中社ゲレンデ)が開業した戸隠中社地区。それまで、冬は人影もなく、雪に閉ざされたかのような集落に、徐々にスキー客が訪れるようになりました。そして、バブル時代には渋滞ができるほどスキーブームに沸いた戸隠。小正月に、スキー場の感謝祭を兼ねたイベント「どんど焼き祭り」が実施されるようになったのも、その頃のことです。
昼は宿舎対抗のスキーやボブスレーのレースが行われ、夜は、雪の上で酒を酌み交わす特別な1日でした。その一部は、現在、3月上旬に行われる「The べ〜そ(雪の上の大酒宴)に引き継がれています。
近年は、1月の第三土曜日(2017年は1月21日)に行われるようになった「戸隠どんど焼き祭り」。地元の関係者のみならず、スキー客も気軽に参加できるイベントとなっています。
当日の夜、中社ゲレンデから数百メートル離れた場所にある道祖神前から、松明行列がスタートします。1月15日に焚かれたどんど焼きの種火を、この日まで大切にとっておき、点火するのです。行列が到着するのを待つ間、中社ゲレンデのどんど焼きのやぐらの前では、戸隠神社の神主により、五穀豊穣、商売繁盛、家内安全等を願う神事が行われ、戸隠観光協会長を始め、地元の代表が玉串を奉納します。
後に、中社ゲレンデに到着した道祖神の松明は、やぐらに点火されますが、その方法には、戸隠ならではの趣向が凝らされています。ここで種明かしをするのはもったいないので、ぜひ、当日、中社ゲレンデでご覧ください。
戸隠神社の神主による神事に一年の願いを込めて
ゲレンデに響き渡る「戸隠太鼓」の演奏は見事
氷点下のゲレンデを照らす光
やぐらに火が灯ると、祝宴のスタートです。雪上の舞台では、戸隠太鼓の演奏が盛大に始まります。標高1200メートルのゲレンデの夜は凍てつく寒さで、手袋をしていなければすぐに手が凍ってしまいそうですが、戸隠太鼓の人たちの熱気溢れるパフォーマンスは、寒さも忘れるほど。
参加者が甘酒や樽酒、そして紅白餅の振る舞いなどを楽しんでいるうちに、やぐらを包む炎はどんどんと燃え上がっていきます。昔は、餅をどんど焼きの火で焼いて食べると風邪をひかないとも言われ、真っ黒な餅を食べたそうです。
そして、宴もたけなわとなった頃、会場をどよめかせるのが、雪上に打ち上げられる花火。中でも、お祝い・応援などのメッセージを花火とともにプレゼントする「お祝い花火」というサプライズ企画は、戸隠どんど焼き祭りの名物となっています。
心のこもったメッセージとともに美しい花火が打ち上げられると、会場一帯がほのぼのとした雰囲気に包まれる、冬の戸隠の名物です。
どんど焼き祭りのフィナーレを飾るお祝い花火(写真提供:戸隠観光協会)
<info>
戸隠どんど焼き祭り
2017年1月19日(土)19:20〜(戸隠スキー場中社ゲレンデ)
※お祝い花火募集中(お申し込み締め切りは1月15日まで)
お問合せ:戸隠どんど焼き祭り実行委員会
TEL:026-254-2541(長野市商工会戸隠支所)
HP:http://dondo.chusha-ryokan.com/