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No.8

「古き良き未来地図」

1166バックパッカーズ・飯室織絵さんのマイ・フェイバリット・ナガノ

リノベーションを軸に生まれた冊子

文・写真 くぼたかおり

リノベーションを軸に生まれた冊子

2012年4月、善光寺門前界隈のリノベーションスポットをまとめた「古き良き未来地図」が発行されました。当時は中古家屋を中心に物件を扱うMYROOM倉石さんらの活躍によって、門前界隈にある古い建物が、その味わいを生かしながら店や仕事場などに生まれ変わっていた時でした。

「古き良き未来地図」を企画・制作した画家の鶴田智也さん(TOMOYAARTS)と、デザイナーの宮下智志さんがオープンアトリエ「風の公園」をスタートさせたのもそのころ。

「町が少しずつ変化を見せながらも、店同士のつながりはまだ薄かったんです。当時も手描きMAPなど細かなエリアごとにありましたが、リノベーションを軸に点と点をつなげたかったんです」という鶴田さんらの想いが、実現へと向かわせました。

表紙をめくると、鶴田さんの絵とともに、冊子に込めた想いが書かれている

古さと新しさが混在する魅力的な建物

鶴田さんは「古き良き未来地図」を手がけるまで、建物の絵を描くのは直線ばかりでおもしろくないと感じていました。しかし実際に描いてみると、年月を経て出来たヒビやシミなどに建物としての味わいを感じるように。「リノベーションした建物は、古さと新しさが混在していて、その表情がおもしろいんです」と鶴田さん。

しかし冊子を作るには、印刷費をはじめとするさまざまな費用が生じます。そこで鶴田さんたちは、掲載する店などに協賛金をお願いして捻出。1回目の発行では30軒、改訂版では60軒ものリノベーションスポットを紹介。特に改訂版では大きな反響があったといいます。

「100円という金額で販売している理由は、フリーパーパーはどうしても捨てられがちなイメージがあったからです。改訂版になってから県外からも購入希望者が増えました。送料のほうが高くても求めてくれる人がいることがうれしいです」

今回「マイフェイバリット」として紹介してくれた飯室さんの宿「1166バックパッカーズ」では、門前散策する旅行者に、貸本のように「古き良き未来地図」を貸し出しているそう。人から人へと大切に読まれているそうです。

「古き良き未来地図」を作った画家の鶴田智也さん(TOMOYAARTS)と、デザイナーの宮下智志さん

コピペしたような町にならないことを願って

2015年2月に発行した改訂版も、残りわずかになってきました。発行してから1年ちょっとの期間でも、町に変化が出ています。それは店だけではなく、「風の公園」があるエリアでは道路計画の話が出ているとか。

「風の公園を始めて5年目になりました。展示をはじめ、子どもたちとのお絵描き教室などしていくうちに、自分だけではなく、訪れた人たちの想いが建物に蓄積されていくんです。それはまるでパワースポットみたいに。みんなで成長させてきた、他にはない建物って大きな観光資源だと思うんですけどね」

どこにでもある大型商業施設やチェーン店が立ち並ぶコピペしたような町ではなく、古き良き建物が刻むゆったりとした時の流れが未来につながることを願ったこの冊子から、鶴田さんたちの想いは確実に届いていることでしょう。

飲屋街が多くある権堂の一角に立つ「風の公園」。そこだけおとぎの国のような平和さを感じる

(2016/05/23掲載)

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