No.103
長野市スタートアップ支援事業
ナガラボ編集部のマイ・フェイバリット
善光寺門前町で起業家を生み出す
文・写真 安斎 高志
起業したい若者が集まるクリエイティブシティに
長野市は2020年11月から、「長野市スタートアップ成長支援事業」を開始しました。善光寺門前を拠点に、ITを中心とした起業家が次々と生まれ、成長できる環境をつくり、将来はユニコーン企業を生み出すことを目標としています。
事業を受託し、進めていくのは一般社団法人長野ITコラボレーションプラットフォーム(NICOLLAP)とKDDI株式会社の共同事業体。
11月19日には記者発表会が開かれ、NICOLLAP代表理事の安藤國威さん(長野県立大学理事長)と荒井雄彦さん(シソーラス株式会社代表)、広瀬毅さん(株式会社クリークス取締役)と、KDDI株式会社経営戦略本部の松野茂樹さんら、主要メンバーが事業概要を説明。加藤久雄市長は「将来的には全国から起業したい若者が集まるクリエイティブシティにしたい」と話しました。
▲起業家のネットワークと支援の仕組みを『面』にしたいと話す荒井さん
「リアルの『場』をつくるクリークスさん、そしてオンラインで『場』をつくるシソーラス。そこに、イノベーションを起こすためのネットワークやノウハウを持つKDDIさんや日本ユニシスさんなどNICOLLAPに参画する事業者を掛け合わせることで、現在『点』になってしまっている起業家のネットワークと支援の仕組みを『面』にできます」(荒井さん)
異業種が交わることでイノベーションを
事業の軸になるのは、「起業家を生み出す『場』づくり」、「事業を生み出す『イノベーション創出』、「起業・成長を支援する『伴走支援』」の3本の柱。
最も注力する「場づくり」の特徴は、まだアイデアのみの人や、起業を意識し始めたばかりの人たちなど、支援のターゲットをすそ野まで広げること。起業実践者と出会える「長野スタートアップカフェ」の定期的な開催や、起業家育成のためのオンライン教育コンテンツ作成を予定しています。
▲広瀬さんは「異業種が交わることで、イノベーションを起こす」と意欲を見せる
「県でも同じように起業家育成のプログラムがありますが、県がターゲットとしているのは、成長過程にある事業や企業。市の事業は、もっとすそ野を広げることで役割分担をしていきたい」と荒井さん。
二つ目の柱「イノベーション創出」を目的とした事業には、新規事業創出を支援する仕組みとして昨年度より運営してきた「地域共創ラボ」を活用し、「地域課題のソリューション開発支援」などを実施していくことが盛り込まれています。
「地方には解決すべき課題がたくさんありますが、異業種が交わることで、解決策が見出せたり、新しい切り口が見つかったり、というイノベーションを起こすことができます」(広瀬さん)。
起業家が起業家を生み、育てる
3つ目の柱「伴走支援」では、地域に根付いた「伴走支援メンター」を育成し、ネットワークを形成していく予定。起業家を発掘して事業化や事業の成長を支援、これにより成長した起業家が、新たな起業家を支援することで、次々と起業家を生み出していく、という仕組みを構築したい考えです。
KDDIの松野さんは「起業は『多産多死』。チャレンジャーを増やさないと、成功する人も増えない。チャレンジに失敗はつきものだが、失敗を恐れることなくチャレンジする文化をつくっていきたい」と意気込みを見せます。
「長野には、自然と交通の便に加えて、門前町の情緒的な空気が流れている。また、スモールビジネスを起こしているクリエイティブな人たちがたくさんいて、大学もある。若い起業家が増える土壌は十分にあります」と、荒井さん。善光寺門前町での新たな挑戦が始まりました。
▲「チャレンジャーを増やさないと成功する人も増えない」と松野さん
<問い合わせ>
NAGANOスタートアップタウンコンソーシアム事務局 sup-town@nicollap.jp
長野市商工観光部商工労働課 026-224-6751