No.99
【給食CAFE】HUNGRY(ハングリー)
ナガラボ編集部のマイフェイバリット
懐かしい!
教室の机と食器で楽しむ「給食」
文・写真 宮木 慧美
9年間の給食センター勤務を経て【給食CAFE】HUNGRYをオープン
長野電鉄・権堂駅から徒歩4分。2018年7月にオープンした「【給食CAFE】HUNGRY」は、“給食”というスタイルで食事を楽しめるカフェ。「木島平村で、9年間小学校給食の調理師をしていました」という平野めぐみさんがオーナーです。
▲「調理したものを食べて、喜んでもらえるのがいちばんの幸せ」とオーナーの平野さん
「“食”はすべての人が必要とすることですよね。毎日3食、一生涯続く“食べる”ということに関わっていきたいと思ったんです」と調理師を志した平野さん。給食センターでの勤務を「楽しくて楽しくてしょうがなかった」と笑います。
「子どもの反応がダイレクトに届いてくるんですよね。それがすごく楽しくて。農家さんの畑に、野菜を取りに行くのも好きでした。食べてくれる人の顔も、野菜を作ってくれている人の顔も分かる環境がありがたかったです」
▲HUNGRYで提供している野菜も、木島平村産のものがほとんど。農業を営む平野さんの実家から届く野菜も使用(写真提供:【給食CAFE】HUNGRY)
『めっちゃ懐かしい〜』若い世代からの意外な反応
「自分のお店を持ちたい」と長野市での開業を決めた平野さん。お店のコンセプトを“給食”に決めたのは、ある一言がきっかけでした。「息子の友人から『あの給食、また食べたいな。どうして給食が食べられるところってないんだろう』と言われたんです。“給食”を軸にしたお店にしたら面白いかなって」
さまざまな検討を重ねた結果、給食センターでの勤務経験を活かし、小学校の教室を再現した店内で本物と同じ食器・トレーを使った“給食”を提供していくことに。当初は、“クジラの竜田揚げ”や“脱脂粉乳”など、昭和の給食を食べていた世代が「懐かしい」と来店してくれることを想定していました。しかし実際にお店をオープンしてみると、意外な反応があったと言います。
「びっくりしたのは、若い子が面白がって来てくれることですね。『めっちゃ懐かしい〜』って(笑)。圧倒的に若い世代のお客さまが多いのは、想定外でしたね」
▲店内には懐かしい学用品がずらり。各テーブルに置いてある「ジャポニカ学習帳」には来店の感想が書かれ、お客さん同士の交流の場になっている
毎日食べたくなる“給食”を目指して
【給食CAFE】HUNGRYで提供している「給食ランチ」は日替わり。基本の献立を中心に、ごはんをソフト麺や揚げパンに替えたり、牛乳を追加したりとその日の気分で選べるようになっています。季節ごとに「ひなまつり献立」や「ホワイトデー献立」、「お楽しみ献立」が用意されているのも、“給食の楽しみ”を思い出させてくれます。
▲“給食”は、平野さんが毎日献立を考えて調理。一食、一週間、一ヶ月を通してバランスの取れた給食を提供(写真提供:【給食CAFE】HUNGRY)
「給食って、好きなものばかりが出るわけではないですよね。子どもの健康・栄養のことを考えた食事ですから、たまには『苦手な野菜が入っていた』『ハズレだな』って日もある。大人になると、好きなものばかりを食べてしまう人も多いと思うんですよ、だからこそ“給食”を毎日食べに来ていただけたら嬉しいですね」
ランチメニュー(献立)を1つにしているのも、「選ぶ必要がないこともサービス」との考えから。「『今日の給食何かな?』と献立表を見に行くようなワクワクした気持ちで来店してほしい」と言います。6個のスタンプを貯めると1ヶ月間のランチが500円になる“児童証”もぜひ利用したいサービスです。
企業研修やイベントで“給食当番ごっこ”も!?
“給食”の楽しみ方は、ランチタイムだけにとどまりません。「給食メニューをお酒と召し上がっていただける“夜の給食”や、“お弁当”“オードブル”の配達も行なっています」と平野さん。さらに教室を模した店内は、少人数での貸切にも対応。教室で研修・誕生日会・飲み会、なんて楽しみ方もできるのだとか。
また、【給食CAFE】HUNGRYならではの珍しい取り組みが“給食の出張ケータリング”です。「食事は大きい丸缶に入れてお持ちします。食器などもすべて持って行くので、その場で“給食当番ごっこ”もできちゃいます(笑)」。企業研修やイベントの昼食として利用されることが多いこちらのサービス。平野さんは「『うちの給食はこんなメニューが出た』『ソフト麺ってどうやって食べていた?』と世代を超えて会話が弾むようです。みんなが経験したこのとある“給食”だからこその交流ですね」と嬉しそう。要相談で、揚げパンだけ、ソフト麺をメインに、といったリクエストにも応じてくれるそう。普段とはちょっと違ったケータリングで会議やイベントが盛り上がりそうですね。
▲企業研修や若者向けイベントでのケータリングの様子(写真提供:【給食CAFE】HUNGRY)
長野の食文化や魅力を、“給食”を通して伝えていけたら
全国的にも珍しい【給食CAFE】には、全国からお客さまが訪れているそう。
「若い世代を中心に、全国からお客さまがいらしています。『Instagramを見てきました』『ジャニーズのライブ帰りに寄りました』『今度帰省したら友だちと来ようと思っていたんです!』という声をいただくこともあります」
さらにSNSや口コミでお客さまの輪が広がっていることを感じるのだとか。
「給食って、世代や地域によって特色あるメニューが出ていたと思うんです。当店でも、キムタクごはんなど、長野ならではのメニューを提供しています。長野の美味しい食材や食文化を伝えながら、この地域の魅力も伝えられたらいいですね。【給食CAFE】HUNGRYが長野市に来る理由のひとつになれたらと思います」
子ども時代、多くの人が楽しみにしていたであろう“給食”。それは、世代や出身地を超えて、「楽しい記憶」として語り合える話題の一つなのかもしれません。【給食CAFE】HUNGRYでの食事をきっかけに、子ども時代の思い出や長野の食・魅力を語り合う時間を過ごしてみてはいかがでしょうか。
▲【給食CAFE】HUNGRY外観。「ご来店お待ちしています!」と平野さん