No.169
眞田
幸俊さん
慶応義塾大学理工学部電子工学科教授
松代真田藩14代当主
文・写真 Yuuki Niitsu
真田丸放映決定
2016年のNHK大河ドラマに決定した『真田丸』。その主人公の真田幸村の兄、真田信之は松代藩の初代藩主であり、真田家は10代250年にわたり藩を治め、風情と落ち着きのある現在の城下町・松代の礎を築きました。舞台となる上田市はもちろん、長野市松代も長年、大河ドラマの放映決定に向けて運動を続けてきたため、この朗報に長野県全体が真田丸ムードで盛り上がってきています。
今回は松代藩真田家の直系の子孫にあたる第14代当主、眞田幸俊さんのもとを訪れました。
眞田さんは現在、横浜市の慶応義塾大学理工学部電子工学科で教授をしており、主に携帯電話や無線LANの研究に従事しています。
「小学校5年生でアマチュア無線を始めました」
1997年9月の電子情報通信学会学術奨励賞を皮切りに数々の賞を受賞してきた眞田さん。そう話す眞田さんは、テレビ局の技術部にいた父親の影響で、小学校の卒業文集では「エンジニアになる」という夢を掲げていたそうです。
その眞田研究室には、大学4年生から博士まで16人の生徒が在籍し、今年5月と9月には研究室の論文がバンクーバー開催の国際会議においてI EEE VTS 2014 Young Award(学生を奨励する賞)を受賞するなど輝かしい業績を収めています。
眞田さんの勤める慶応大学矢上キャンパス。ここで携帯電話や無線LANの研究を行っている
真田家の子孫として
現在、横浜市在住の眞田さんは、子どもの頃から夏休みになると毎年、本家のある松代に帰省していたといいます。
「近所の人たちと真田邸の前にある公園で野球をやっていましたね。真田邸の池の鯉に餌をやっていたのも良い思い出になっています」
当時を懐かしそうに話す眞田さんからは笑みがこぼれます。
小学校1年生の時に、「真田会」という親睦会があり、その頃からなんとなく先祖が侍だったということを知るようになったといいます。
「取材の時に、『有名な真田家の子孫というのをいつ、誰から、どのようにして言われたんですか?』と聞かれたりしますが、大きなお屋敷で何百人もいる前で『あなたは、かの有名な大名、真田家の子孫であります』なんていうのはないですよ(笑)。ごく普通に、子どもながらに気づいていきました」
編集部・新津も映画のような光景を想像していたため、眞田さんの冷静な回答に、自分が恥ずかしくなりました。
真田会を通して自身の先祖が、侍→大名→松代藩真田家というように順を追って理解したため、戦国武将真田家の子孫と心得た時も「そうなんだ」というくらいのリアクションだったといいます。
2010年の松代藩真田十万石祭での眞田さん。現在は横浜市在住だが、毎年参加し、真田家当主としての自覚を持ち続けている
松代への想い
眞田さんは、毎年行われる真田会や、真田十万石祭りを通して、松代とのつながりは今も続いています。
「大河ドラマが決定した時は、正直嬉しかったです。長年、真田会を通して松代や上田の方とPR活動をしていましたから」
喜びはひとしおだったといいます。そんな眞田さんが、一番慕う藩主は初代、真田信之だそう。
「派手ではありませんでしたが、昌幸・幸村の助命嘆願や、松代藩へ移封される際、潰されてもおかしくない状況で苦難を乗り越えてきたことに、よく生き抜いたなぁと感無量です。しかも93歳という生涯を全うしたこと。これには頭が下がります」
普段から自身の先祖の書かれている書物をできるだけ調べ、多くの人に知識や情報を提供していくことも真田家の子孫としての務めだと言います。
「さすがに、他人に聞かれて答えられないのはまずいですからね」
真田家に所縁のあるものが集まる「真田会」という親睦会。小学1年生の時に初めて参加し、その時に漠然と自分の先祖のことに気づきはじめたという
その時、妻は!?
現在、8歳と11歳になる息子さん、それに愛妻に囲まれ幸せな日々を過ごしている眞田さん。2人の出会いは、眞田さんが参加した学会。そこで奥様が受け付けをしていました。その学会が縁を結び、二人は結婚します。しかし、意外だったのは奥様に自分が真田家の末えいだということを伝えた時に、反応がいまいち薄かったということです。
「実は、妻は時代劇をあまり見たことがなく、何より刀や戦乱シーンが苦手なんですよ。なので、初めて真田家のことを話した時も『そうなんだ』っていうくらいのリアクションでしたね。それは、逆に新鮮でしたけど」
結婚後も、真田家の妻として特別な意識はなかったいう奥様ですが、出産の際には跡取りの男の子を生まなければという真田家の嫁としてのプレッシャーがあったといいます。
そんな奥様も、今では毎年帰るふるさと松代の歴史ある町並みが大好きだといいます。
帰り際、書籍棚からチラッと見えた奥様との2ショット写真について触れると、研究者の貫録ある表情が一気に和らぎ、その顔が誰かに似ているなぁと考えていた私に「輪郭は10代藩主の幸民(ゆきもと)にそっくりなんですよ」とニコニコしながら教えてくれました。
「妻の影響で、ここ10年くらい時代劇を見ていませんが、さすがに真田丸は見ますよ。テレビをもうひとつつ買ってでも(笑)」
真田一族というと戦乱の世を生き抜いてきた氏族。そんな命のつながりが、幸俊さんに続いているんだという歴史を味わえた貴重な時間でした。
2014年の真田十万石祭にて。本人が言うように、その顔は10代当主の幸民を彷彿とさせる
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会える場所 | 慶応義塾大学理工学部電子工学科 横浜市港北区日吉3-14-1 電話 045-566-1427 |
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