No.024
小山
修也さん
こやま のぶや
カネマツ倶楽部
信州松代の「古き良き伝統」守る
八百屋の若頭
文・写真 Rumiko MIyairi
長野市松代にある八百屋「カネマツ倶楽部」。
「俺の曾じいちゃんが、戸板1枚の上に仕入れた野菜を並べて売りだしたのが八百屋の始まりでした」
こう話すのは家業に就いて4年目を迎えた小山修也さん。カネマツ倶楽部のルーツから現在の幅広い活動までを話してくれました。
「大正初期からはじまり、都内の高級大型スーパーに野菜を卸す問屋として大きな流通を担った時期もあったんですが、今は地元の農家さんをはじめ全国の仲間の農家さんに協力してもらって仕入れた野菜をネット販売するほか、店先では自社キッチンで加工した手作りの野菜クレープ、惣菜、お弁当なども販売しています」
そのカネマツ倶楽部の店内は、開業当時から受け継がれてきた古いタンスや棚の上に野菜がならび、自社で手作りした「本日のお惣菜コーナー」は、家庭料理の温かさが詰まっています。
店の奥には、昨年小山さんと友達の手で改装した板張りの広間「さろん」があります。
ここでは、カネマツ倶楽部で企画する薬膳の講座や長岡式酵素玄米の講習会などが開かれます。
多い時で20人ぐらいが集まって、にぎやかに過ごすカネマツの「さろん」。小山さんが好きなレゲエが流れ、解放感あふれる空間です。
取材中、小山さんの傍らには週に1度店番をする奥さんと、伝い歩きを始めた1歳になる息子さんが一緒でした。息子さんの一挙手一投足に目を細めながら答えてくれました。
手書きのポップや古い家具で野菜を並べているカネマツ倶楽部の店内
家業に就くきっかけは、代表を務める小山さんのお母さんから相談を受けたこと。
それまで、好きなことを自由にやってきた修也さんは、家業への関心がありませんでしたが、お母さんから現在の店の活動や、これから更にやっていきたいこと、そして、なにより熱い仕事への思いを聞き、自分自身も感じていた大事なものとお母さんの思いとが一致したといいます。
「人が生きていく上で『揺るぎないもの』があると分かったんです。それは『食』。人は食べなきゃ生きていけません。その生きるために食べる野菜を扱う商売をしているので。家業に就こうと思いました。それから、家業は自分で考えて色々できるんです。自営の可能性は、無限大ですよ」
小山さんは家業に就く前、高校商業科の講師をしていました。
「先生」という立場で簿記や情報処理を教え、バトミントン部の顧問をしていました。学校での講師生活は活発な学生たちに囲まれて非常に充実したものでした。
そして、自身の学生時代は、多くの仲間に支えられて成り立ってきたと顔を綻ばせながら話します。
「俺自身、勉強が嫌いだったから高校も大学も勉強をして受かったというより、恩師が強く推薦してくれ、友達が応援してくれた。今の学生たちにも、たくさん人と縁をつないで欲しくて。学校以外に社会や地域との接点を持ってもらえる活動もしたいと思っています。なので、『食』を通して学生たちとも交流し始めています」
そんな思いで活動範囲を広げた小山さん。
講師を辞めた後も地元の高校に出掛け、松代の「食」の現状を地域の歴史や文化に触れながら話します。
「松代はアンズの産地なのですが、最近は農家さんにご高齢の方が多くなってきて、木の維持が難しくなってきました。でも、松代のアンズの歴史は、宇和島から真田藩に嫁入りした豊姫様に、父上が寂しくないようにと気遣って持たせた苗木がルーツ。こういう地域の伝統って守っていきたいですね」
この話を聞いた学生は「そんな歴史があったなんて知らなかった」「私にできる事があれば手伝いたい」と関心を持ち始めています。
現在、アンズ畑の広がる東条地区で、アンズの農家さんたちと一緒に、小山さんが副理事を務める「NPO法人あんずっこの里ハーモアグリ」が摘花や収穫作業などを手伝い、木の保護の一翼を担っています。
先生という立場から地元の八百屋さんに転身しても、バイタリティに富んだ活動で小山さんの思いは実現していきました。
「試食どうぞ!」と長岡式酵素玄米のご飯をよそう小山さん
地元の「食」を通じて地域の伝統を守りたいという小山さんの活動は更に広がります。
「伝統野菜って知っていますか? 松代には、松代青大きゅうりと松代一本ねぎがあるんですよ」
小山さんは松代に長野県から認定を受けた伝統野菜があると誇らしげです。
伝統野菜は、その地域の気候風土に育まれ栽培されている品種であること、その野菜を使った郷土食などが受け継がれていけること、その野菜の品種の特性が明確であること、が認定のポイント。
太めで皮が薄く実がしっかりしている、といった特徴を持つ「松代青大きゅうり」も認定を受けました。
小山さんは、その種を40年間にわたり守ってきてくれた90歳の農家さんから、種を受け継ぎました。
種は現在、カネマツ倶楽部の農園で小山さんの仲間の農家さんと一緒に育てています。
「伝統野菜というのは、地元の農家さんが、その地域で野菜の種を毎年採って守り続けてきたもの。だから、途中で種を混ぜたり操作したりせず、ルーツが確かなものなんですよ。『食』の素材のルーツがわかっているって安心ですよね」
地域の伝統が、「食」の安心安全を確かなものにしてくれるという小山さん。
「品種やルーツがはっきりわかる、つまり、そういう伝統野菜はこれから大事にされていくものだと思います」
3月に東京で行われた「全国の伝統野菜PRデー」では、松代青大きゅうりや松代一本ねぎを筆頭に、たくさんの信州伝統野菜を紹介してきました。長野県の伝統野菜は現在69種類認定を受けています。全国的にみると断然に多いそうです。
そして今後の目標は、カネマツ倶楽部が信州の伝統野菜を広めていける窓口になることだといいます。
松代東条のアンズ祭。バスツアーで見学にくるお客さんも増え、満開のアンズの花が迎えてくれた
襟に「青果問屋」と記されたカネマツ倶楽部の法被を羽織る凛々しい出で立ちから、野菜を取り扱う商人のプライドが伝わってきました。
地元の野菜を作る農家をはじめ、「食」文化を受け継ぐ地域のみんなを引き寄せる小山さん。そんな小山さんだから、まるで学生のクラブ活動のように楽しく野菜を守っていけそうな気がしました。
「自分の周りには必ず仲間がいてくれました。自分の思いは、その仲間が導いてくれましたね。農家さんとの付き合いもそう。これも『生涯揺るぎないもの』だと思っています」
「ここから伝統野菜を広げていきたい」と小山さん。法被姿が頼もしい!! 襟に「青果問屋」と記されたカネマツ倶楽部の法被を羽織る凛々しい出で立ちから、野菜を取り扱う商人のプライドが伝わってきました。 地元の野菜を作る農家をはじめ、「食」文化を受け継ぐ地域のみんなを引き寄せる小山さん。そんな小山さんだから、まるで学生のクラブ活動のように楽しく野菜を守っていけそうな気がしました。 「自分の周りには必ず仲間がいてくれました。自分の思いは、その仲間が導いてくれましたね。農家さんとの付き合いもそう。これも『生涯揺るぎないもの』だと思っています」
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会える場所 | カネマツ倶楽部(サロン=店 土・日・祝・祭日休業) 長野市松代町松代583 電話 026‐278-1501 ・フリーダイアル 0120-464-346(電話受付10:00~15:00) ホームページ http://www.s-kanematsu.jp/ 信州カネマツ倶楽部ブログ 「やっぱり野菜だった」http://kanematsu.naganoblog.jp |
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