No.040
村田
滋さん
有限会社村田商店代表取締役社長
こだわりを発信!
納豆直売所をオープンしています
文・写真 Rumiko Miyairi
長野市にある納豆専門メーカー村田商店。
創業以来、信州産大豆にこだわって昔ながらの納豆を作っています。
村田商店3代目社長の村田滋さんは、こう話します。
「原料の大豆は安曇野の浜農場さんの大豆。浜農場さんとは昔から大豆の状態や収穫具合のこと、苦労話とかたくさん話して信頼関係もできています。経木は信州新町の80代になる山岸経木店さんにお願いしています。経木で巻いた納豆は天然の力で菌を活発にしてくれますから格別においしくなるんですよ。」
こんなこだわりを貫いて作り続けてきた村田商店の納豆の品質は全国納豆鑑評会で認められ、平成24年度には農林水産大臣賞を受賞しました。
その納豆を「直接買いに来てもらえる場所を作りたい!」と村田商店が、昨年7月10日「納豆の日」に直売所をオープンしました。
直売所は、もともと倉庫があった製造工場のとなりにあり、通りすがりの人も気付いてもらえるように、エンジ色の大きな布地に「一茶納豆」と書かれた店頭幕が掲げられています。
一茶納豆は、村田商店の初代社長が長野にゆかりのある俳人小林一茶にあやかり銘柄にしたのが始まり。以後、村田商店の屋号のように親しまれてきました。
創業以来、大豆と経木にこだわりを持つ村田の納豆
直売所には「一茶納豆」をはじめ、地元の経木で巻かれた「安曇野大粒納豆」や「古今小粒納豆」など、信州産大豆を使った納豆が一堂に並んでいます。
村田さんは、買いに来てくれたお客さんから直接それぞれのエピソードが聞けて嬉しいと、直売所ならではの良さを、こう話します。
「お客さんの中には、長野に来たついでに、村田の納豆を買ってくるように上司に頼まれてきたという若手社員さん。婆ちゃんがどうしてもここの納豆が食べたいというから一緒に連れてきたという家族の皆さん。皆さんそれぞれ内輪の話をしてくれるんです。そこまでして、うちの納豆を買いに来てくれたって思うと、嬉しくてね。ついつい世間話もし始めて盛り上がっちゃうこともあります(笑)」
食べてくれるお客さんの直の声が聞ける場所だという実感が湧いていると村田さん。
直売所ができる前は、ながの東急や東急ライフなどの食品売り場、ネットでの通信販売が主流だったため、お客さんの反応はスーパーの売り場担当の声を頼りにしていたといいます。
「スーパーで、うちの納豆を買ってもらうために、なんとかしなきゃと必死でね。自分で納豆の試食コーナーをやって直に食べてもらったこともありました。とにかく値段を安くすればいいじゃないかとか生産数を多くすればいいじゃないかとか思ったこともあり…でも、それって価格破壊の始まり。結局、手探りのまま解決にはならなかったんです」
「作れば売れる」という村田さんの子ども時代、代表を務めていたお父さんの背中を見て育った村田さんは、自社の納豆をスーパーに置いてもらうために値段を下げ、数をこなそうと一喜一憂した時期があったといいます。
「納豆の製造から営業、配達まですべてやりました。どうやっていこうかって色々な立場で考えさせてもらえましたね。でも、今より安く作ることに努力すればするほど、工場にも大豆の仕入れにも無理が掛かってくる。続かなくなったら元も子も無い、と気づきました」
「価格は安いに越したことはない」という発想を変えて、もう一度いままでやってきた納豆作りを振り返ってみたという村田さん。
作りたての納豆が並ぶ直売所のワゴン。日本一になった「道祖神納豆」は1個120円!
村田商店の納豆は、信州で育った大豆を使っていることや納豆の器に地元の経木を使っていること。それらを妥協せず続けてきたことにあると分かったといいます。
納豆作りに携わる志と昔ながらの原料を守り続けてきた成果で賞が取れたという村田さんは、日頃地元地区の荒木太神楽保存会でも活動をしています。神楽での役割は、獅子の舞手。その活動もやはり納豆作りにつながるものがあると話します。
「神楽って、太鼓や笛や鐘のアンサンブルに合わせて獅子が舞うという、それぞれが違うパートを受け持つんですが、なかなか、みんなが納得いくようにピタッと合うことが少なくてね」
「毎年、何回舞っていてもきれいにできたようでいて、できていない。この感覚が納豆作りにも通じるように思えているんです。大豆の育ち状況や発酵の状態によって、毎回まったく変わってしまいますから」
「納豆は1時間おきにこんな発酵をするんですよ」と熱心に話す村田さん
神楽も納豆作りも毎回同じことを繰り返す作業だとすれば、一通り覚えたから終わり、というわけではありません。常にベストな状態を保つために学ぶ姿勢でいることが大切だと村田さんは語ってくれました。
最近の納豆は、におい少なめ、超小粒で食べやすいなど、それぞれの口に合うようにと工夫されているものをよく見掛けます。納豆の栄養価が高いことや手軽にご飯のおかずになることで、和食の誇れる食材として、食べやすくアレンジしたレシピも多く目にするようになりました。
「直売所はどなたでも休憩がてら気軽に寄ってください」
村田商店の直売所には、お客さんの顔が見られる関係を大事にする村田さんがいます。
「納豆の原材料は大豆と納豆菌だけ。シンプルだけど、この原料の組み合わせで栄養価の高い納豆ができるんです。信州長野の納豆メーカーとして村田の納豆を作り続けていきたいですね。」
直売所オープン1周年記念イベントが7月10日に開催。ワンコインで納豆の詰め放題など、楽しい企画満載
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会える場所 | 有限会社村田商店(村田商店直売所) 長野市若里1-4-8 電話 026-226-6771 ホームページ http://murata.shoten.com/ FAX 026-223-1782 |
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