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No.37

戸隠神社 宝光社

「秀平鍛刀道場」刀工 根津啓さんのマイ・フェイバリット・ナガノ

戸隠神社御祭神と氏神様を共に祀る神社

文・写真 合津幸

寺院式建築の荘厳な社殿

戸隠神社五社のうち、長野市街地から向かうと最初に現れるのが宝光社です。寺院式建築の社殿は文久元(1861)年に建てられ、5社で最古の歴史を誇ります。江戸末期に改築工事が行われましたが、社殿内外に見事な彫刻が施されるなど、神仏習合時代の信仰熱の高さを物語る荘厳さと存在感は圧巻です。

宝光社御祭神は、中社・御祭神の天八意思兼命(あやのやごころおもいかねのみこと)の御子・天表春命(あめのうわはるのみこと)です。御神徳は技芸の隆盛・安産・厄除け・家内安全など、女性や子どもの守り神としても知られています。

奥社と中社と同じく、5月の祈年祭や8月の例祭、11月の新嘗祭などの各神事が、そして中社と同じく4〜11月には月並祭が行われ、長野県指定無形民俗文化財の戸隠神社太々(だいだい)神楽が奉納されます。いくつかの神事では、一般参拝客の方でも社殿に入って神事を間近に眺めることができます。

11月の新嘗祭での太々神楽。10座ある神楽のうち、どの神楽が何座奉納されるのかは神事により異なる。1月3日の歳旦祭・講社祭でも奉納されるので、初詣に足を運んでみては。

住民に愛され親しまれる理由

今回宝光社をあらためて訪れてみて、過去、奥社と中社には何度も出掛けたにも関わらず、宝光社には一度しか立ち寄らずにいたことをひどく後悔しました。その理由は2つ。1つは、社殿を含む境内の美しさと神々しさに圧倒されたから。もう1つは、地元の氏神様を祀る非常に身近な存在の神社だと知ったからです。

初めて訪れた方はおそらく、まずあの270余段の石段に目を奪われるのではないでしょうか。そして、その石段を上った先に現れる立派な社殿に感動を覚えるでしょう。しかしその実、戸隠神社御祭神と共に地元の氏神様が祀られていて、周辺住民の皆さんにとっては非常に身近な心の拠り所でもあるのだとか。この事実に、急にあの神々しい宝光社がグッと近い存在になった気がします。

このお話を聞かせてくださったのは、戸隠神社の神職・聚長(しゅうちょう)を務める諏訪雅彦さんです。諏訪さんは、宝光社地区にある「旧延命院 お宿諏訪」のご主人であり、聚長として戸隠神社の神事を司る一人でもあります。

雪をまとった姿もまた美しく神秘的。境内や社殿の清掃は地元住民の皆さんが担ってくださっているのだとか。神社に対する想いの深さを感じる。

戸隠の歴史・文化に触れる機会を

「戸隠神社の御祭神と共に地元の氏神様が祀られていることは、地元住民以外にはあまり知られていないと思います。毎年9月2日の氏神祭では、前日の宵祭で獅子神楽を、当日は太々神楽を奉納します。主に地元住民だけで受け継いできた伝統行事のひとつですが、だからこそ信仰の原点のようなものが今も息づいていると思います」

そう語る諏訪さんは、「心の拠り所を求める純粋な気持ちや誰もが分け隔てなく縋(すが)ることのできる存在など、現代人の心にも響くものがあるはず」と、想いを強めています。そして、「宝光社を含む戸隠神社とこの地域の歴史や文化を伝える機会を設けたい」と、考え始めたのです。

ちなみに、聚長の正式な名は「戸隠神社講社聚長」です。かつて、信仰を広めるため神社と村人たち(「講」と呼ばれる信者の集まりをつくる)の仲介役を担っていました。その元来の役割に立ち返り、地元・長野市の皆さんにこそより親しんでもらえる場や機会を、と考えを巡らせているそうです。

となると、近い将来、戸隠の知られざる魅力に触れるチャンスが増えるかもしれません。楽しみですね。

戸隠神社聚長を務める、お宿諏訪のご主人・諏訪雅彦さん。宝光社を案内してくださった。「創建の歴史や建物の特徴など、ひとつ知識が増えるだけでも感じ方が変わります」

<info>
戸隠神社
HP:http://www.togakushi-jinja.jp
TEL:026-254-2001(社務所)

お宿諏訪
HP:http://www.enmeiin-suwa.com

(2016/12/20掲載)

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