No.01 SPECIAL TOPICS
滝澤
愛さん
ch.books CAFE
くつろぎの一瞬を運んでくれる出張カフェ
文・写真 安斎高志
イベントで最近よく見かける「ch.」の文字
この特集は善光寺門前のリノベカフェを集めていますが、このページは番外編です。
善光寺門前を含め、最近、県内のイベントで姿を見かけることが増えたch.books CAFE(チャンネルブックスカフェ)の滝澤愛さん。2013年7月からスタートした出張カフェは徐々に出店依頼が増え、月によっては毎週土日、どこかしらのイベントに出店するという盛況ぶりです。
「サービス業をやっていると、なかなか土日のイベントには行けません。でも、出張カフェで呼んでもらえると、イベントの空気を味わうことができるし、主催者と一緒にイベントをつくる側として参加できるし、やっていてよかったと思います」
出張カフェは、目に見えないところでかなりの労力を要します。とりわけ野外のイベントでは、タープを持ち込んだりしなければならず、かなりの大荷物となります。
「これまで声をかけてもらったら、どんなイベントでも出店するようにしてきました。どのイベントも楽しかったですね。基本的に私は1人で出店するので、荷物を運んだりとか大変なこともあるし、すごく気が小さいので溶け込めるか不安でいっぱいなんですけど、みんな手伝ってくれたり、ドリンクを飲んでくれたり、本当によくしてくれて、ありがたいです。カフェがあることで、通りがかりの人にとって足を踏み入れやすくなるということもあると思いますし、イベントに合わせたドリンクをつくったりして、少しでも力になろうと思っています」
参加するイベントのジャンルも様々で、従来から依頼の多かった展覧会やフリーマーケットなどに加えて、最近ではお芝居や結婚パーティーの会場にも出張しました。
「こんなかたちもありなのかと、依頼していただく方の頭の柔らかさにびっくりしますね」
出張カフェでは、イベントの特性に合わせてオリジナルドリンクをつくることも
さりげなく、街の本屋の一角で
滝澤さんは普段、長野市南県町の本屋「ch.books」の一角にカフェコーナーを構えています。店の前の通りは、JR長野駅から県庁をはじめとするオフィス街へ通じる道。カフェのオープンは朝7時半です。
コーヒーのほか、5種類のオーガニックスパイスが入ったチャイ、サクサクした食感が好評で食べごたえのあるスコーンなどが、忙しい朝の気持ちを和ませてくれます。ドリンクは、きび砂糖などの天然の素材をなるべく使い、甘さも控えめにしています。
「通りがかりの人より、わざわざ来てくれる人の方が多いような気もします。旅の人が来てくれて、おかげでちょっと離れたところに住む人とも友達になれて、今でも繋がっていたりします。思わぬ出会いがありますね」
ただ、本屋の一角に小さなテーブルとメニューが書かれた黒板だけを置いて営業しているため、通りがかりの人が注文するには少し勇気がいるようです。
「『思い切って入ってみました』とか言われてしまいます。毎日、ここを通っている人を見ていると、この人はすごく気にかけてくれているけど、入りにくいんだろうなとか思うこともあるんです。カフェのオーダーをしなくてもいいから、もっと気軽に朝早くから開いている本屋としても利用してほしいですね」
滝澤さんはそう話し、苦笑いします。
旅とアートがテーマの書店「ch.books」。その一角にカフェコーナーがある。各ドリンク、テイクアウトもイートインも可能
とりあえず、が1年半
ch.books CAFEがオープンしたのは2013年4月のこと。それまで勤めていたカフェを辞めた滝澤さんは、開業を視野に動き出します。しかし。
「理想的な物件も見つかって、予算が出てきたとき、無理!と思いました。自分に自信がなかったんですね」
そんなときに声をかけたのが、ch.booksの青木圭さんと島田浩美さん。島田さんはかつて滝澤さんと一緒に、市内にあるカフェのオープニングスタッフとして働いていた元同僚です。
「いきなり店を構えるのは心配だし、朝の人通りがあるここでやってみたら、と言ってくれたんです。それなら初期投資が少なく始められるし、お試し期間のようなもので、とりあえず1ヶ月、朝カフェとしてやってみるかと。で、1年半が経ちました(笑)」
その間、机一つの身軽なスタイルながら、おいしく、体にやさしいドリンクをつくる滝澤さんに注目した人たちが、次々と出張カフェを依頼するようになりました。
エアロプレスで淹れるコーヒーは、まろやかな味が特長
遠くから流れてくるコーヒーの匂い
出張カフェではエアロプレスという手法でコーヒーを淹れています。通常の店頭で使っているマシンは重かったり、電気が必要だったりで、持ち込めない場合があるからです。
エアロプレスは、人の個性が出やすいハンドドリップに対して、均質なコーヒーを淹れやすいという特長があります。また1分程度で淹れられるため、待たせすぎることがないという利点もあります。そして何よりおいしいし、見た目にもおもしろい。
滝澤さんが出店するイベントには、ゴリゴリと豆を挽く音が聞こえ、遠くの方からいい匂いがしてきます。
そんな滝澤さんの最も好きな飲み物は、実はお茶。お茶好きなことから、子どものころから茶道を習い、それによりおもてなしの精神も身についたそうです。
「静かに本を読みたいのか、お友達同士でおしゃべりしたいのか、お店の人におすすめの場所を聞きたいのかなど、ここでどう過ごしたいのかを感じて、話をしたり、静かにさりげなく目配りだけしていたりします」
イベントでも、ch.booksの一角でも、滝澤さんにドリンクを頼むと、慌ただしいシーンが一瞬、和みます。今後は、店を構えるか、出張に力を入れるかなど、さまざまな選択肢で悩んでいるという滝澤さんですが、どこであれ、どんなかたちであれ、くつろぎを与えてくれる存在であることに変わりはないでしょう。
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会える場所 | ch.books CAFE 長野市大字南長野南県町1069 電話 026-217-5687 フェイスブック https://www.facebook.com/ch.books.cafe |
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