No.01 SPECIAL TOPICS
木村
敦さん
台湾茶館 珠露(しゅろ)
熟香系から清香系まで多彩な香りが楽しめる
文・写真 安斎高志
台湾では生活の中にお茶がある
台湾茶という言葉は聞いたことがあっても、おいしい飲み方を知っている人は少ないのではないでしょうか。
「台湾茶館 珠露」では、店主の木村敦さんが、丁寧に淹れ方や飲み頃を教えてくれます。奥深い台湾茶の世界ですが、木村さんは気軽な気持ちで来店してほしいと話します。
「多くのお客様が初めての方だという認識でやっているので、台湾茶がどんなものか分かってもらえるように、できるだけ丁寧に説明しています。片膝ついたりして、かしこまりすぎたサービスではくつろげないと思うので、そういうことはしませんけれども(笑)」
珠露では、4~5杯を飲むことができる蓋碗茶(がいわんちゃ)と、7~8杯を淹れることができる功夫茶(くふうちゃ)の2パターンから淹れ方を選ぶことができます。それぞれに作法が違いますが、木村さんが丁寧に説明してくれるので、初めての人でも安心です。香りのしっかりした熟香系から爽やかな清香系まで20種類ほどの茶葉から選ぶことができます。
日本語教師として6年半、台湾で生活していた木村さん。そこで台湾茶の世界と出会いました。
「台湾では、おしゃべりをするためにお茶を飲むという感じです。向こうの茶館に行くと、たくさんの友達と一緒に茶葉を大きな袋で買って、豆などをつまみながら夜通しお茶を飲んでお話をするのです。お酒とはまた違う雰囲気で、わいわいと楽しんでいます。生活の中にお茶があるんですね」
功夫茶のセット。20種類ほどの茶葉から選ぶことができる
文化に触れる仕事を
木村さんは愛知県の出身。高校時代にアメリカへ留学し、その経験がもとで日本語教師を目指して大学に進学します。大学在学中に旅行で行った中国の魅力に惹かれ、その後、アルバイトで貯めたお金を持って半年間、北京などに滞在し、日本語教師の仕事に携わります。その帰りに寄ったのが台湾でした。
「中国はその当時、物価も安かったけれど賃金も安くて、お金を貯めるのは大変です。台湾なら経済的にも発展していて、中国語も使えるし面白いと思ったんです」
大学卒業後、台湾に渡った木村さん。6年半にわたり、大学付属の社会人向け語学講座や日本語学校で日本語講師を務めます。帰国後は、山梨県にある学校法人で留学生の担当教員をしていました。
開業を思い立ったきっかけは、大学の講師をしている奥さんの転職と第2子の誕生でした。奥さんが長野市内の大学へ職場を移したのち、数年間は単身赴任をしていましたが、第2子の誕生に合わせて、木村さんも長野市へ転居します。
「こっちでも、日本語教師の職に就くことも考えました。でも、それまで日本のことを教えるといっても、言葉と生活のことだけということにジレンマがあったんです。言葉だけでなく、文化に触れる仕事をしたいと思いました。中国や台湾は20年来の付き合いだし、中華文化に関することで何かないかなと考えていたんです」
そんなときに思い出したのが、留学生が持ってきてくれたプーアル茶のおいしさでした。
「最初に飲んだものが、ものすごくおいしかったんです。でもいろいろと飲んでいく中で、逆においしくないものもあることがわかってきた。同じ種類のお茶でもおいしかったり、これはおもしろいなと思うようになりました」
そこから勉強を始めて、中国・杭州の茶葉研究所の研修に参加したり、テイスティングの資格を取得するなどで、知識を深めていきました。
教員時代の教え子が台湾でお茶を扱う店に勤めていたことで、安心できる仕入れ先も確保できました。
「便利なのはもちろん、信頼できるということが大きいですね。指定した茶葉をしっかりとした技術で製茶をしてくれ、きちんと送ってくれる。安心できます」
スイーツで一番人気の「豆花(とうふあ)」。豆乳以外はすべて自家製。スイーツは全5種類
桜枝町の交差点にある元美容室の建物。木村さん自身も手を入れ、こつこつと改装を進めた。看板も木村さん自作
胃に優しいのも魅力の一つ
長野市内でも善光寺門前のレトロな雰囲気が気に入ったという木村さん。最初は、古民家を探していましたが、最終的にたどり着いたのは、元美容室の一風、変わった建物でした。
「見ようによっては洋館みたいで、洋風と中華風をかけ合わせられるんじゃないかとイメージが湧いたんです。和洋折衷ならぬ中洋折衷みたいになるかなと」
内装は、壁塗りなど出来る限り自分の手で施工しました。おかげで準備に時間がかかったと木村さんは苦笑いしますが、どこか懐かしい空気が流れる店内は、ゆっくりとお茶の時間を楽しめる空間になっています。
2013年3月のオープンから1年半が経ちました。現在では、お茶だけでなく台湾スイーツも人気を集めています。
珠露のスイーツは、沖縄・波照間産の黒糖を使っていて、やわらかい甘さが感じられます。ふわふわな食感が人気の大豆スイーツ「豆花(とうふあ)」は、餡子や台湾独特の「イモ餅」など、豆乳以外すべてが手作りです。
「台湾の茶師さんが丹精込めて作ったお茶はとてもおいしく、体にもいいので、それに合わせても恥ずかしくないようにスイーツはこだわって作っています」
現在は、中国語の書籍をもとに、台湾茶のより深い知識を身につけようとしている木村さん。
「台湾茶の世界は奥深いです。その世界を伝えたいというよりは、触れていたいという気持ちですね」
木村さん曰く、胃に優しいのも台湾茶の魅力の一つ。少し疲れたら、香り豊かな台湾茶でゆっくりとした午後を過ごすのもいいかもしれません。
落ち着いた佇まいに台湾茶の香りが漂う。「ゆっくりしてほしい」と木村さん
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会える場所 | 台湾茶館 珠露 長野市桜枝町843 電話 026-405-7874 フェイスブック https://www.facebook.com/taiwan.tea.house.shuro |
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