「もともとデコレーター(室内装飾家)なので、ひと目見た時に、ここだって思いました」

そう話すのは、長野市西和田にあるデコレッドルームズのオーナー赤沼ヨシコさんです。

赤沼さんは、今から17年前に築40年を越す段ボールの加工工場と出会いました。この空間なら違った世代でも同じ価値感を持つ人達ときっと出会えると直感し、半分は自分の工房として、もう半分はお客様を招く空間にしようと決めます。

もともと内装業にも携わっていた赤沼さんは、知り合いの大工さんとスタッフと共に改装を始めます。

「昔の建物の造りはまるで迷路のようでしたが、でもそれが楽しくて未来の姿をイメージしては図面を書き、改装を進めながら少しずつオープンさせて、の繰り返しでした」

そして17年たった今もなお、改装中だといいます。

「とにかく面積が広いのでひと部屋ずつ作っていった結果、どうしても年月がかかってしまいましたね」と苦労話も笑顔で話します。

改装の終わった空間は、知人のカメラマンがタイやベトナムから仕入れて来るアジア雑貨や好きな骨董雑貨の店にしたりと、完成する部屋が増える度にモノも増えていったといいます。

そんな中、増えるモノに息苦しさを感じ始めた赤沼さんは、もっと違ったカタチで人を招こうと考えます。

「自宅のようにくつろげる部屋を貸したり、アンティークやジャンクな雑貨、レトロな家具に囲まれた中で家庭的な食事を提供するカフェを始めよう」

こうして貸し空間、喫茶、飲食店と徐々にその空間を広げていき、様々なオリジナルドリンクやアジアン、イタリアン料理などを提供しています。特に水曜・木曜のランチに限り、赤沼さんは野菜を主役にした料理を出しています。

「私自身、野菜が好きだということもあり、手間をかけた野菜が主役のランチを提供しています」

そう話す赤沼さんの周りには様々な瓶詰された保存食が店内にぎっしりと並んでいます。

野菜を組み合わせた色々な食べ方を知ってもらうために、独自の方法で月替わりメニューの「ベジプラスランチ」を考案。ある月は発酵玄米、大根と葱を巻き込んだ海苔豚巻、丸ナスのローストトマト味噌煮込み、クルミ・オレンジピール入りの人参とジャガイモのサラダ、かぼちゃベーコンとオニオンの檸檬マリネなど。

野菜中心の料理は、野菜ってこんなにおいしいんだと再認識させられると共に、野菜は前菜ではなく主役にもなれるんだということを感じました。

「正直、野菜でお腹がいっぱいになるとは思いませんでした」

という編集部・新津に母親のような笑顔でうなずく赤沼さん。

現在、この野菜を主役としたランチは若い方から年配の方々まで男女を問わずお一人様でも多くのお客様がお越しだそうです。

ここでは、5年程前から貸し空間を活かし男女混合料理イベントを開催しています。

「女性シェフがレシピを作って男女混合3班で料理を作るんですが、一緒に料理をすると親近感が湧くみたいなんですよ」
毎年成婚者が出ているといいます。

今後は、まだ残っている建物の改装を進めていきたいとこと。

「小ホールを作って、もっと人が集まる空間を作りたいですね。例えば、ダンスやライブなど。この空間ならではの演出で少しでもお客様にリフレッシュして頂けたら嬉しいです」

外観は元工場。店内に入るとそのギャップに驚かされます。
使われなくなった工場を改装し、人が集まる癒しの空間に作りあげた赤沼さん。

彼女のような人が一人でも増えれば、古びた町もそして疲れた人の心も生まれ変わることが出来るのではないでしょうか。