No.073
間峰
充夫さん
屋形船企業組合組合長
犀川で町を盛り上げる屋形船の親方
文・写真 Yuuki Niitsu
信州の北部と中部を結ぶ交通の要衝にあった信州新町は、戦国の昔から交易の地として多くの人や物資が行き交い、江戸後期から明治には犀川の水運河港を背景に、江戸や関西をも商圏とする商業の町として発展してきました。
その信州新町を流れる犀川には1年中運航している屋形船「ろうかく丸」があります。
「平成9年に参加した和歌山県の貴志川町(現:紀の川市)のイベントでの交流がきっかけで、現地の人と信州新町の犀川を活かす方法を話し合っていた時に、『うちの船を使ってよ』と貴志川町の船を譲り受けたのがきっかけですね」
こう話すのは屋形船企業組合の組合長、間峰充夫さんです。その間峰さんを紹介してくれたのは、この日「ろうかく丸」の舵を取る運航部長の吉田さんです。
吉田さんから「俺はガラが悪いから、写真撮らない方がいい。組合長を紹介するよ」と言われて紹介された組合長。
しかし、その組合長の間峰さんもなかなかの風格漂う方で「どっちもどっち!」と思わずツッコミを入れそうになりましたが、お話をすると非常に気さくな方ですぐに和やかな雰囲気になりました。
現在、スタッフは10名ほどいて全員が小型1級船舶士の資格を持っています。そして屋形船の運航は、新潟運輸局の管理の下で航路は細かく決められているそうです。
「屋形船の魅力は、座ると川面と目線が同じ高さになることかな。他の船だと、見下ろすわけだから、これはなかなか味わえないと思うよ」
間峰さんはその魅力を語ります。さらに揺れがほとんどないのも、その魅力だといいます。
通年営業の「ろうかく丸」。最大で30名まで乗ることができる
川岸から見る景色とは一味も二味も違う。インディ・ジョーンズの世界が味わえる
「揺れがあまりないのは、船底が水平に出来ているから。だから、船酔いの心配は無用。でも、反対に風の抵抗を受けやすいから、風が天敵だね」
屋形船の構造上の利害点をそう教えてくれました。また、「ろうかく丸」は周りの豊かな自然との一体感も味わえます。
「特におすすめのポイントは、犀川中流域の川幅が最も狭くなる場所にかかる久米路橋を中心とした絶景の地だね。春は藤の花、夏は新緑、秋は紅葉、冬は一面真っ白に染まった白銀の世界。とにかく、年中楽しめるから」
取材した日は、梅雨の最中にもかかわらず見事な晴天。新緑に囲まれながら犀川を下る”のんびりした時間”は、日常の中の非日常を味わっている不思議な感覚になりました。
この「ろうかく丸」は定時運航ではありませんが、完全予約制で通年運航です。そのため、予約があれば真冬の氷点下を下回る日でも運航するそうです。
「運転席には、屋根もないし暖房もないから、気合で乗り切るしかない。ホッカイロ10個くらいしても意味がないわ(笑)。一度、戸倉のホステスさん達を呼んで宴会やっているお客さんがいたけど、あの時は寒いし羨ましいし、中に入ろうと思ったよ(笑)」
自然と一体の屋形船だからこそ、船員は気候や季節の変動にも対応していかないといけないと間峰さんは言います。
快適に屋形船でお客さんが夢のようなひと時を過ごせるのは、こうした船員の忍耐や努力あっての事でしょう。
のどかな久米路峡の旅を終え、船着き場につくと一層の小型船が岸に浮かんでいました。
しばらくその船を眺める編集部・新津に
「あれは、宮澤さんのだわ。ラーメン八珍の。あの人、船好きだからな」
そう教えてくれた間峰さん。まさか、こんな偶然があるとは。
トイレもあるのでご安心を!くれぐれも川にはしないように(笑)
実は宮澤さんは、私が以前ナガラボで取材した方でした。
興奮気味にそのことを間峰さんに伝えると、
「あの人とは、しょっちゅう遊ぶよ。面白い人だよ。今、一瞬顔出したんだけど、何処に行ったんだろうな」
そう笑いながら、話していました。
「これから夏を迎えて、ますます忙しくなるよ」
その言葉を最後に軽トラックに乗り込む間峰さんの後ろ姿からは、町を背負っているんだという”男気”が感じられました。
偶然にも八珍の宮澤さんの船が・・・!一瞬だけ顔を出して何処かへ行ったらしい。何処へ行ったのだろうか
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会える場所 | 信州新町屋形船「ろうかく丸」 電話 (2014年9月より休業中) |
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