No.205
黒岩
裕美子さん
アトリエ・アニェリカ 店主
いつもと違う自分に
帽子のアトリエ兼店舗がオープン
文・写真 Takashi Anzai
主張しすぎない個性が魅力
2015年2月10日、カフェやアトリエが軒を連ねるSHINKOJIシェアスペースに、小さな帽子工房兼店舗がオープンしました。名前は「atelier anielica(アトリエ・アニェリカ)」。アニェリカは天使を意味します。
店の面積はわずか2坪。しかし、その内装はヨーロッパの由緒ある帽子店のように趣があります。店内には、ベレー帽やコサージュ、中折れ帽などさまざまな手作りの帽子が20点以上並んでいました。トップが左右非対称になっていたり、ヴィヴィットな色の切り返しが入っていたりと、いずれも個性をつけながらも、それぞれあまり主張しすぎず、世代を問わず受け入れられそうなデザインです。
店主の黒岩裕美子さんは、はにかみながらこう話します。
「この人のこの作品がほしいと決めて買いに行く、そんな存在になりたいですね」
自分に合う帽子がなかったから自分で作り始めたという黒岩さん。東京やロンドンで20年近く帽子作りを学んできました。しかし、オープンを決めるまでには迷ったこともあったそうです。帽子の世界で身を立てることは簡単ではないと黒岩さんは言います。
「ずっと家でやっていると、だんだん何が大切なのかわからなくなってしまって。帽子で生きていくか、やめるかなんて逡巡してみたり。でもやめるつもりなんて全然なくて。じゃあ、諦めるにしても、思った通りやってみてからにしようと思ったんです」
取材に伺った2月は春物の準備の真っ最中。順次、入れ替えを進めるという
帽子作りに没頭しロンドンへ留学
黒岩さんは、縫製の専門学校を卒業後、雑貨の販売の仕事に就いていました。趣味で学び始めたコサージュ作りが帽子作りに発展し、いつの間にか没頭していくことになります。カルチャースクールなどを経て、帽子デザイナーの糸山弓子さんにも師事します。計6人の先生の下で帽子の製作を学びました。
「もうちょっと何かを学びたいと思って次の先生につくという繰り返しで、いつの間にか6人までいきました。そんなに深く考えていたわけではなく、先生方それぞれに得意なものがあることは、あとから気づいたくらいです(笑)」
その間、2007年9月にはロンドンのケンジントン・アンド・チェルシー・カレッジに留学。1年間、現地のデザイナーらに混じって、本格的な教育を受けました。
「言葉はわからないし、周りはレベルが高いし大変でした。制作の課題が2ヶ月に1度くらい出されて、必死でついていきました。でもすごく楽しかったですね。新しい技術だけでなく、バラエティも広がりました」
帰国後は、通信販売のほか、長野をはじめ関東などの店舗で販売していました。そして、もっとお客さんの近いところで製作したいとの思いから工房兼店舗を構えます。
男性ものも女性ものも取り揃えている。主張しすぎない個性が魅力
自分の帽子で素敵になってほしい
黒岩さんは帽子の魅力をこう語ります。
「帽子をかぶるといつもと違う感じになれて、楽しくなります。そのうえ髪の毛も隠せる。そういう実用も兼ねているところが魅力です。自分の帽子で素敵になってくれたらいいなと思いながら作っています」
予算の都合上、狭い店舗になってしまったと苦笑いしますが、それもプラスに捉えます。
「窓から覗かれれば、すぐ顔を出せるし、コミュニケーションが取りやすい。せっかく店舗をつくったので、ちょっと寄って、おしゃべりしていってくれるだけでもうれしいですね。もちろん、売れたらもっとうれしいですけど(笑)」
今後はオーダーメイドも請け負っていきたいと話す黒岩さん。絵本の舞台になりそうな、小さくてかわいらしいお店で、今日もこつこつと素敵な帽子を作っています。
SHINKOJIシェアスペースの一角に2坪ほどの店舗を構えた
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会える場所 | アトリエ・アニェリカ 長野市大門町48-2 SHINKOJI西棟1階 電話 080-1088-3588 ホームページ http://anielica.ocnk.net/ |
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