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わくわく・共感できる長野の元気情報を配信します!

ナガラボはながのシティプロモーションの一環です

「あのお店、あの人の本棚」に並ぶ本たちは、
まだ旅の途中。
 
お店のエッセンスや、
店主のアーカイブを繰り返し巡ったり。
ふと手にとったあなたへ、
大切なメッセージを届けたり。
 
そうして、人から人へ物語をつむぐ旅を続けている。
 
本特集「あのお店、あの人の本棚」では、5つの本棚にまつわる物語と、店主のルーツともいえるベスト本をご紹介。
 
「本と長野がつくる場所」を紐解くヒントを探しに行きました。

1.本の貸出しもしています!
パスタと自然派ワインのお店『こまつや』の図書館

厳選した有機野菜や、海の幸、地元食材をふんだんに使った料理が絶品の『こまつや』(長野市西之門町)。なかでもシェフの廣政真也さんが作るパスタは、料理好きなら憧れずにはいられないおいしさ。そのヒミツを訊ねてみると、
 
「家庭の料理にも取り入れられるちょっとしたコツを大切にしています。家で作るご飯を、ほんの少しでもこだわりたくなるようなきっかけをつくりたいと思っているので」と廣政さん。
 
おいしい料理を出すのはもちろんのこだわり。それだけでなく、少しでもふだんの暮らしが豊かになるようにと願う、廣政さんのやさしさが、ひと皿に込められています。
 
そんなあたたかな気持ちを象徴するのが、キッチンとカウンターが一枚板でつながった設え。「家族が集う食卓のようにしたかった」と、廣政さんのかねてからのアイディア。

廣政さんをバックにして、カウンターに並ぶ本たち。よく見ると、所々に付箋が貼られたまま。
 
「一度、僕が読んだところです。本を通じて、こまつやでも取り入れているちょっとした工夫をお伝えできるように、あえて貼ったままにしています(笑)」。
 
その上、まさに“秘密のレシピ”とも言えるこれらの本は、貸出しもおこなっています。「お客さんとのちょっとした料理の話って、お店をやる上でとても大切ですからね」と、家庭の食卓に寄り添う廣政さんの想いは、本棚にも込められているのでした。

『こまつや』の本棚から
廣政真也さんの本にまつわる物語

「ORGANIC BASE マクロビオティックと暮らす」
奥津典子(著)/ ビジネス社(2004年)

 
廣政さんが『こまつや』をオープンする前、
『d&department大阪店』の料理長を務めていた頃、
自分が出したい料理とは何かと、
試行錯誤を重ねていった先に出合った一冊。
 
「なぜ地産地消がいいのか?
なぜ野菜がその形をしているのか?
など、当たり前だけど、考えてみると答えにくいような、食の根本的なことがわかりやすく、論理的に書かれていて。

なんとなく理解していたことがクリアになり、
頭の中をガツンとやられましたね(笑)。
今につながるルーツが、この本にあります」

 
「美人のレシピ マクロビオティック望診法」
山本慎一郎・中島デコ(著)/ 洋泉社(2007年〜)

食について知れば知るほど、自分で作ってみればみるほど、料理人の丁寧な手間ひまに脱帽する。きっと誰もがそんな感動を覚えたことがあるはず。
 
この一冊は、そんな料理の奥深さを知る入り口。特に女性が手にとって、読むことが多いそう。
 
「どんな料理がカラダのどこにいいのか? をイラスト付きでわかりやすく解説しているレシピブックです。
『ORGANIC BASE』は論理的、こちらは感覚的にさっと読めるので、お店で料理を待っている間に、手に取る人が多いです」

 
<お店info>
パスタと自然派ワインのお店 こまつや
長野市西之門町500-8
026-235-4040
http://www.komatu-ya.com
11:30-15:00(L.O / 14:30)
18:00-22:00(L.O/ 21:00)※ディナー営業は金土日祝日のみ
第2・4火曜日/毎週水曜日定休
駐車場3台あり(お店から15m先左折後すぐ)

2.本に秘められたルーツ
喫茶店『平野珈琲』に置かれた“伝説のジャズ喫茶物語”

長野市立町。善光寺から東へ入った閑静な住宅地の中、隠れ家のように佇む『平野珈琲』。
店内から流れる心地よいジャズの音。深煎りの珈琲の香り。ただ一人、ここで読書をして過ごしたいと思えるような、まさに本が似合う喫茶店。
 
この場所で、何のわざとらしさもなく、
その無造作加減ゆえに親しみを抱き、
ついつい手にとってみたくなるのが、スピーカーの上に置かれた本たち。
 

その中から店主・平野仁さんが紹介してくれたのは、
今のお店につながるきっかけともなった二冊の本。
 
その本にまつわるストーリーには、『平野珈琲』には欠かせないジャズの原点がありました。

 
「平野珈琲」の本棚から
平野仁さんの本にまつわる物語
 

「Portrait in Jazz」
村上春樹(著)・和田誠(画) / 新潮文庫(2003年)

 
平野さんが、ジャズの世界に深く興味を持つきっかけとなった一冊。
 
「村上春樹さんのジャズ評を通じて、ミュージシャンたちの個性や遍歴が紹介されています。
 
この本を読んでからは、歴史に残る素晴らしい音楽には、語り継がれるストーリーが秘められていることを知りました。人と人のぶつかり合いがあったり、セッションが生む偶然があったり。
 
それまでは単純に音として好んで聴いていたジャズも、ミュージシャンの人間性、趣味趣向みたいなものを意識して聴くようになりました。
 
そして、個々人の美意識や世界観に対する細かなこだわりにも刺激を受けましたね。振り返ると、今のお店のスタイルがあるのも、この一冊でジャズをより一層好きになったことが大きいと思います」。

 
まさに、「平野珈琲」のルーツともいえる一冊。
 
 
「新宿 DIG DUG物語 — 中平穂積読本」
高平哲郎(編) / 東京キララ社(2004年)


1960年代の日本で、全国的にブームとなったジャズ喫茶の先駆け的存在、「DIG」と「DUG」。著名な文化人や業界人も足繁く通うほど、多くの人々を魅了し、戦後のジャズカルチャーを第一線でリードし続けてきた、まさに伝説のジャズ喫茶。
 
「良質なオーディオや、どこよりも早い新譜の紹介、さらには、メニューや食器、空間などにも細かなこだわりがあって。その上、ジャズを広めるために本を出したりもしていて。それまであったジャズ喫茶や普通の喫茶店とも違う新しい感覚が、この場所から生まれていたみたいです。
良質なお店にするためのこだわりや気概みたいなものに、学ぶところがありました」
 
と平野さんは話します。
 
そんな「DIG」と「DUG」を立ち上げたのは、写真家の中平穂積さん。20代の頃からジャズミュージシャンの写真家として活躍し、海外で現役のプレイヤーを数多く写真におさめてきた人物。
 
「若くしてお店を始めて、ブームになったり、ジャズ自体が下火になったり、時代が変わる中で色々な苦悩もあったみたいです。だけど、営利以上に、良質な空間といい音楽で、ジャズを広めたい一心を貫いていた人なんです。中平さんに影響を受けてジャズの世界に入った人も多いです。
    
時代が変わっても、『歴史に名を残す人の姿勢』って、こういうことなのかもしれないと思いましたね」。

 
実は、平野さんはブックカフェを営んでいたことがあるほどの本好き。ここでは紹介しきれなかったエピソードもたくさんありますので、気になったあなたは、珈琲片手に本談義に花を咲かせてみては。
 
<info>
平野珈琲
長野市 立町981
050-3699-7897
https://twitter.com/hirano_coffee
8:30-18:00
火曜/水曜定休

3.日常を切りとるユーモア
Hair Salon 『PHAMILEE』のボーダレスな本棚

本、雑貨、写真、CD、ところによりマンガ……。ここは、ヘアサロン『PHAMILEE』の本棚。天井まで壁一面に設えた本棚には、いくつものアーカイブ。
 
店主のツチヤアキノリさんが、この場所で美容室を開いてから10年、それだけでなく自身の青年時代のルーツにまで遡る軌跡がここに込められていました。

しかし、ツチヤさん曰く「自分のルーツってほどのことではないですよ(笑)。紹介する本のセレクトには、なかなか迷いました(汗)」と。
それは、ジャンルを問わず色々な興味をもつことが、美容師として必然でもあるからとも言います。
 
「美容師は髪を切る仕事ですが、美容室は色々な人が来る場所でもあるんです。自分とは、違うジャンルのことを知らないと髪は切れない。そういう意味では、興味の範囲を広く持っている必要があると思います。
 
広く深く追求したいこともありますが、まずは広く浅く、色々なことを知るようにと、心がけています」。

 
幅広い興味から、ツチヤさんが紹介してくれたのは3冊の本。そこには、どこか論理的でウィットなアイディアをもつ、ツチヤさんならではの視野の広さを垣間見ることができるのでした。

美容室としてだけでなく、期間限定のPOP UP STOREもシーズン展開している『PHAMILEE』。ヴィンテージ古着、アンティーク、古道具、古本、時には、おでんの出店(!)などなど。詳しくは、『PHAMILEE POP UP』をチェック。
 

『PHAMILEE』の本棚から
ツチヤアキノリさんの本にまつわる物語

「去年ルノアールで 」
せきしろ(著) / マガジンハウス(2006年)


まず一冊目はこちら。喫茶店ルノアールでの人間観察をもとに、他愛もない出来事を綴った妄想エッセイ。雑誌「Relax(マガジンハウス)」にて連載され、星野源主演、大根仁監督でドラマ化。密かな人気を集めた物語。
 
「ちょうど、僕がお店を開いた頃、Relaxでの連載がまとまって一冊になったのがコレです。本当にくだらないんですよね(笑)。何にも意味がなくて。
でも、そんな無意味の中に、日常のささやかな一瞬がユーモアに描かれていて、すごく好きなんです」

 
とツチヤさん。少し角度を変えて、日常を面白おかしく見つめ直すヒントが、ここに隠されているはず。

「Janfamily:Plans for Other Days 」
Janfamily(作) / Booth-Clibborn(2005年)

 
実は、『PHAMILEE』をオープンする前に、2年半の渡英生活をしていたツチヤさん。日本に帰ってくる直前に立ち寄った本屋で、偶然手にしたのがこの写真集。
 
「この作品も、よく見ると、日常にあるものばかり。作り込んだものではなくて、普通の洋服で組んだスタイリングを、ロンドンの普通の風景の中で撮っているんですね。難しいことはしてなくて、シンプル。
なのに、それがアートに見えるのはなぜ?と好奇心をそそられるんです」

 
と、まさに、私たちがふだん何気なく身につけている「髪」を、いくつもの角度から整え直す美容師ならではの視点。お店の内装イメージのアーカイブにもなったそう。
 
だけど実は、一体どんな人たちがつくったものなのか、詳細は不明。そんな謎に妄想を膨らませて、ときおり見返すこともあるそう。

「病んだ魂 ニルヴァーナ・ヒストリー 」
マイケル・アゼラッド(著) / ロッキングオン(1994年)

 
10代のツチヤさんが影響を受けたのが、80年代〜90年代にかけて、「グランジ」と呼ばれる新しい音楽ジャンルで世界を圧巻した米ロックバンド『ニルヴァーナ』。そんな彼らの半生を綴った一冊。
 
「アンダーグラウンドにいた彼らは、次第にメジャーの注目を集めて、テレビにも出るようになるんですが、女装して出てきたり、ふざけてイントロだけ演って曲を変えたりするんですよね。そういう感じなんですが、ファッションはすごくかっこよかった。彼らなりの姿勢が魅力的だったのかもしれない」
 
遊び心をもって現実を受け止めつつ、信念は曲げない。そんな流儀に影響を受けた記憶は、今でも、ものごとを捉える軸となっているのかもしれません。

本を片手に談義する中で、こんな想いも話してくださいました。
 
「ロンドンの地下鉄に、“MIND THE GAP(足元にお気をつけてください)”という表記があるんですけど、それがすごく好きなんです。ある意味、何事においても“ギャップを意識すること”ともとれる言葉。視点を変えることで、日常の中に、ちょっと異様な日常を見る。そういう意識を大切にしたいと思っています」と。
 
新しい発想で日常を捉え直すこと。
それは、幅広い見聞と日常に見え隠れするささやかなアイディアを掴むことなのかもしれません。もちろん、遊び心をもって。
 
『PHAMILEE』では、美容室を軸に、店内の一角で期間限定の「POP UP STORE」を企画する他、年に一回「COMMUNE YARD」と題したフリーマーケットも主催しています。ツチヤさんならではのアプローチは、私たちの日常を違った風景に変えるきっかけを育んでいるのでした。
 
<info>
Hair Salon PHAMILEE
長野市石堂町1423-33信濃路ビル2階
026-225-0637
http://phamilee.blogspot.jp/
10:30-20:00
木曜定休

いかがでしたでしょうか?
 
過去と現在を巡るきっかけに溢れている「本のある場所」。そこには、新たな発想の種がたくさん眠っているのかもしれません。
 
「あのお店、あの人の本棚」を旅して、誰かと語り合ってみてはいかがでしょうか。すると、本があなたと誰かをつなげ、次なる旅路を結ぶ出発地になるはず。「本と長野がつくる場所」。
「あのお店、あの人の本棚」後編もお楽しみに。

小林隆史
小林隆史(general.PR 代表 / シンカイ代表)

ライタープロフィール2011年大学3年の冬から、長野市「旧シンカイ金物店」に暮しはじめる。生活拠点としながら、蚤の市やライブ、食事会などを企画。信州大学教育学部卒業後、中学校教諭を経験し、渡米。帰国後はアパレル販売員を経て、ライターとして独立。現在は「長野翔和学園」の広報部を務めながら、様々な媒体での執筆を行っている。

おすすめの本『村上春樹 雑文集』 村上春樹(著)

 

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