「昔はこの通りで、生活に必要な物ならなんでも買えたのよ」———善光寺東参道沿いに住むとあるおばあさんが教えてくれたこの道のこと。
善光寺東参道は、善光寺の山門から東に曲がり、善光寺下駅まで続く細い道。
駅から善光寺へ向かう観光客のシャッター音やご近所さんの井戸端会議、平日ともなれば登下校中の高校生たちのおしゃべりが聞こえてきます。
善光寺から駅へ下っていくこの道沿いには、昔の面影を残すお店や建物もちらほら。
今もわずかではありますが、昔の面影が残るこの道は、かつて「暮らしの必需品がすべて揃った」と言われているほど、個人商店で賑わっていたそう。
長野市近隣(飯綱町や須坂市など)に住む人たちにとっては、善光寺下駅を降り、東参道を散策してから長野駅前へ出かけるのが一つの買い物ルートだったそう。
当時の善光寺下駅は駅舎が地上にあり、とあるおばあさんにとっては「若い頃は、善光寺下駅がデートの待ち合わせ場所だったのよ」と。
現在の善光寺下駅は、1981年に長野駅から湯田中方面へ続く長野電鉄の一部区間の地下化に伴い、地下駅に
善光寺下駅改札を出て、善光寺方面へ向かう地下通路には、壁に長野の四季が描かれている
昭和51年(1976年)と記されたかつての善光寺下駅の写真。東参道の道中にある「北島書店」の窓に飾られている
そして(手前味噌ではありますが)、私の住居兼仕事場の「シンカイ」もこの通り沿いにあります(6年前にこの建物と出会い、少しずつ改修しながら住居兼仕事場として借りています)。
このシンカイを中心に、左に進むと北国街道、右に進むと善光寺下駅へと続いています。
商店街として賑わっていた昭和の頃よりもずっと昔には、北国街道の道中として、宿やお店がたくさんあり、善光寺へ訪れる人々の安息の地だったのだとか。
シンカイの角を左(北東)へ進む道沿いには、この道が北国街道だったことを表す看板も
善光寺から東へ抜けていく東参道。
今は、高校生たちのいつもの通学路。目立たなくなったこの道も、なんだか気になる場所や建物がまだ残っています。
そんな横道の風景は、昔の思い出がどこか残っていて、きっとネットでもなく、本でもなく、人づてに伝わっていくのでしょう。
ある日、シンカイに建築を志しているという大学生が来ました。「高校生の頃から、この建物のことが気になっていて、大学の研究で古民家を学んでいるんです」と。
こうやって、少しずつ昔のことが伝わっていくのかもしれませんね。
古くなるものも、新しくなるものもあるけれど、気になる横道にはきっと何かいいことがある、そんな気がするのです。