<おもちゃを治すドクター>
「おもちゃの病院ながの」は、長野市を拠点におもちゃの修理を無料でおこなっているボランティア団体です。
「みんな年齢も職歴もまるで違うんですが、活動日を楽しみにしています。この歳になると、おもちゃで遊ぶなんてことまずないじゃないですか。だから、おもちゃをいじること自体を楽しんで、意外と夢中になってやっているんですよ(笑)」
そう話してくれた近藤積さんは2001年の発足時からのメンバーの1人で、2代目の会長として9年間代表を務めた人です。
「発足のきっかけは、ボランティアセンターが主催したおもちゃ修理の講座でした。群馬県で活動しているおもちゃの病院の人が来て、実際の様子を見せてくれたり、話してくれたんです。そのあと、初代の会長の呼びかけで、10人くらいで発足しました」
「以前、中学生がサマチャレという夏休み中のボランティア体験に来てくれて、夏休みが終わっても来てくれるようになって、その後、大学進学で長野を離れるまでやってくれました。長野高専の生徒さんたちが来てくれたときは接着剤について私たちより詳しくて、教えてもらったりね(笑)」
<患者と相談してから治療を>
主な活動は、「もんぜんぷらざ」で毎月第2日曜の「定期開院」。そのほか、篠ノ井の「このゆびとまれ」で年4回の開院、依頼に応じて各種イベントで「出張開院」を行っています。
定期開院には毎回30件前後の依頼があり、取材日当日も開院と同時に受付に行列ができていました。
「電池で音が出て、動いて、光る、っていう三拍子そろったようなおもちゃが多いですね。意外とよくあるのは、電池がくたびれているだけの場合。一本はまともだけど一本はだめなのとか入替のときに間違って入っていることがあります。こんなときは肩の力が抜けますね。治療は代替品を手作りしますが、どうしても必要なモータ、ギヤ、スピーカなどは部品代だけ実費をいただいています」
ドクターたちが扱う「カルテ」には、メーカー名、おもちゃの種類(リモコン玩具、乗り物系、楽器・メロディー演奏、知育玩具など)や故障内容(電池切れ、モーター、断線・腐食・接触不良、バネ不良など)を細かく記入し、記録されています。
「当初は、どのメーカーにはどういう故障が多いとか、統計をとって、製品設計に反映できるよう企業にフィードバックしてあげようという高邁な考えがあったんです(笑)。実際は日本で造られていないものが多くて、やってないんですけどね」
発足当初に比べると日本製のおもちゃは減り、質も少しずつ変化しているといいます。
「接着剤で固められているおもちゃが増えてきて、分解しにくい場合が増えています。コスト面から、そういう作りになっていると思うんですが、直してでも使ってもらおうなんて発想は最初からなく、壊れたらおしまい。使い捨て前提で作られているものも多いように感じます」
接着のため分解しにくいおもちゃは、下手をすると穴をあけてしまったり欠けてしまったり形が変わってしまう恐れがあります。その場合、それでも治したほうがよいのか、患者さん(依頼者)と相談します。すると、形が変わるくらいなら、思い入れの多いものだけに、壊れたままでも無傷のほうを選ぶことが多いといいます。
<おもちゃの修理工場ではなく"病院">
時間内に直らないおもちゃは、入院扱いで担当ドクターが次の定期開院までに治療します。時間をかけても思った通りに復元できる保証はありませんが、最大限再現しようと努めるドクターのみなさん。それは、人が介在していることでやりがいを感じているからだといいます。
「子どもからすると、ここへ持ってくるまでに何週間、何カ月間も壊れていたおもちゃと、久しぶりに遊ぶわけです。"治った"おもちゃをひったくって、夢中になって遊びだすときの子どもの気持ちは、すごく伝わってきますね。おもちゃの修理工場じゃなくてよかった。おもちゃの"病院"でよかった...ってね」
おもちゃの病院で直してもらったおもちゃにはドクターの思いも加って、直す前よりもっと大切な存在になるような気がします。
壊れてしまったおもちゃがあるなら、あきらめて捨ててしまう前に一度、訪れてみてはいかがでしょうか。
会える場所:おもちゃの病院ながの
毎月第2日曜11時~15時(受付終了14時)
もんぜんぷら座2F「じゃん・けん・ぽん」で定期開院
(長野市新田町1485‐1)
ホームページ http://www.geocities.jp/toy_hospital_nagano/
問い合わせ toy_hospltal_nagano@yahoo.co.jp