長野市復興だより

待ってたよ、というお客さまの声に励まされて

八雲日和「うどん・おやき工房 さくら」 サービス管理責任者 玉井靖人さん

JR豊野駅にほど近い八雲日和「うどん・おやき工房さくら」は、障がいをもった方々の就労継続支援施設(B型)として、うどん・おやきの製造販売を行っています。令和元年東日本台風の浸水被害からの復興状況について、施設を運営管理する(福)長野県社会福祉事業団の玉井靖人さんに伺いました。

被災の翌週から活動を再開

さくらは、平成28年4月に開設した2階建ての施設で、1階部分にうどんとおやきを作る工房が入っています。令和元年10月13日は日曜日で、休業日だったので、幸いなことに人的被害はありませんでしたが、1階部分は全て水に浸かり、駐車場にあった公用車3台を含む全ての物を失いました。とはいえ、約20名の利用者の皆さんの就労支援を止めるわけにはいかないので、翌週からは、被災を免れた同法人の施設の一室を借りて活動を再開。いつもとは異なる内職的な作業をしながら、なんとかつなぐ日々でした。運営側としては、満足いく工賃を払うことができず、苦しい状況でしたが、利用者さんに戸惑いや不安の顔はなく、逆に励まされるような状況でした。

天井まで浸水したうどん作業室

 

工房再開までの葛藤

私たちにとって、うどんとおやきの製造は生命線でしたので、その製造ができなくなってしまった時は、非常に落胆しました。一時は、“やるかやらないか”というところまで追い込まれましたが、そんな時、背中を押してくれたのがお取引のあったお客さまからの「またお願いしたい」、「いつ再開するのか」、「待ってるよ」という声でした。
その後、改修工事を行い、令和2年6月に完了。うどん製麺機など機械類は以前と全く同一ではなかったので、新しい機械で以前と同じ味が出せるように試作を重ね、準備しました。そして、7月から製造を再開。約9ヶ月のブランクがあったので、利用者さんが作業を忘れていないか、不安はありましたが、何の問題もなくスムーズに戻ることができました。

リニューアルした工房での作業風景

 

受注販売で売上を回復

現在、コロナ禍での営業は、長野県の警戒レベルが3になった段階で、20名の利用者を2つのグループに分け、少人数で活動しています(取材当時)。販売方法に関しては、被災以前は、契約店・施設以外にもフリー販売を行っていましたが、コロナ禍で対面販売をできるだけ減らすため、全てファックスによる受注販売に変えました。そうしたことで、思いの外、売上げはスムーズに回復し、食品ロスも減らすことができ、現在は、被災以前と変わらない売上げを確保できています。支えてくださったお客さま、地域の方に本当に感謝しています。これからもお客さまに喜んでいただけるうどんとおやきを作るとともに、若い世代にもその技術を受け継いでもらえるよう取り組んでいきたいと思います。

信州の地粉を使ったうどんとおやきは、粉の香りが高く、素朴な風味で地域に愛されている

 

 

 

(福)長野県社会福祉事業団 八雲日和
「うどん・おやき工房 さくら」

住所 長野市豊野町豊野360-1
TEL TEL:026-217-4123
営業時間 9:00~17:00
定休日 土・日曜日及び祝日
ホームページ https://nagano-swc.com/yagumo/