Hair WAKA若月敦さん
私自身も被災し、避難所で生活する間に、周囲から“髪伸びちゃってさぁ”とか、”俺行くとこ(床屋)知らねえんだ”という声が聞こえたのが避難所で散髪をやろうと思ったきっかけです。幸い、バリカン、ハサミ、ドライヤーなど必要最低限の道具は、2階に上げて置いたので水没を免れました。“被災者限定”ということで保健所の許可をもらって、理容組合から椅子やのぼりを提供してもらい営業できることに。11月5日から避難所最終日の11月30日まで週3日、1回1,000円でやらせてもらいました。お客さんは来てくれるか不安でしたけど、報道を見たりして皆さん来てくれて、久しぶりに会えて安心しました。
避難所でのカットの様子はテレビなどで報道された
水害で8年前に建て替えたお店も全て失ってしまいましたけど、もう一度頑張ろうと、理容組合の人たちに片付けを手伝ってもらい、店舗部分だけ先行して工事を進めてもらい、12月末から営業再開に漕ぎ着けました。
津野で生まれ育って、小さい頃から地域の方にかわいがられてきたので、地域に恩返しをしたいですし、祖父の代から長年地域密着型でやって来たので、ここを離れるということは全く考えなかったです。お客さんの中には、“お店ができるまで髪切らない”と言ってくれる人もいて、すごく嬉しかったですけど、焦りもあって、早く再開したい一心でした。
この辺にはほとんどお店がないんです。だから、髪を切るだけが目的じゃなくて、ここに来れば誰かに会えて、お茶を飲みながらおしゃべりできる場を作りたいと思っていました。実際、別の場所に避難している年配のお客さんが、家族と一緒に車で来て、家族が家の片付けをしている間におしゃべりしながら休んで行ってもらうこともできているので、お店が再開できて本当によかったなと思います。
明るく温かな店内は地域の人たちの憩いの場
現在、住居部分は工事中で、アパートから通いながら営業しています。避難所で知り合った新しいお客さんが来てくださったり、メディアにも取材にしていただいたりしてありがたいですが、以前に比べ厳しい状況です。これから地域の人がどれだけ戻ってくるか、不安もありますが、”ここでしか切らない”という地域の人がいる限り、ここでがんばろうと思っています。
現在、長沼地区復興対策企画委員会の委員をやらせてもらっているので、地域の皆さんの意見を聴く機会が多いですが、その一番の要望は千曲川堤防の強化です。戻って住み続けるか迷っている方がすごく多いので、しっかりと安全な堤防を建てていただき、また皆で安心して暮らせるようにしていただきたいです。
敦さんと母の千恵子さんが理容を、奥さんの延江さんが美容を担当している
被災後、水の中から生還した看板は変わらずこの場所に
住所 | ⻑野県⻑野市津野828-1 |
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TEL | 026-296-9633 |
営業時間 | 9:00〜17:00 |
定休日 | 月曜日 |