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心の癒しを届けるドライフラワー作家

田中亜実さん

atelier neri(アトリエ・ネリ)

メインビジュアル

長野市を拠点に活動するドライフラワー作家・アトリエ ネリの田中亜実さん。高校時代、心のバランスを崩したことをきっかけに出合ったドライフラワーが、今では多くの人に癒しを届ける作品づくりへと発展しています。

文・写真 吉田 淳子(株式会社ビー・クス)

ドライフラワーとの出合いは「びんずる市」

現在はイベント出店とポップアップ(期間限定で特定の場所に開設される店舗)を中心に活動している田中亜実さんは、ドライフラワーと出合い、作品をつくりはじめて約10年。しばらく趣味の延長のようなかたちで制作していましたが、3年ほど前に開業届を提出し、本格的に生業として製作を始めたそうです。
 
「高校時代に部活でつまずいて、うつと適応障害になり不登校になってしまいました。その後、大学に進学したものの、1年生の前期に学校に行けなくなってしまって。そんな時に母が連れて行ってくれたのが、善光寺の境内で定期的に開かれるびんずる市。そこでドライフラワーのリースとブーケを購入したのがはじまりでした」‎
 
亜実さんはもともと編み物などハンドメイドが得意だったので、見よう見まねでドライフラワーやリースをつくり始めました。購入した出店者さんと情報交換をしながら、お客として通ううちに「あみちゃんも出店してみなよ」と誘われて2018年、びんずる市に初出店したそうです。
 

亜実さんの自宅で育つ「スモークツリー」を使ったリース

「接客も何もかも初めての経験で、当日のことはよく覚えていません。母にも手伝ってもらい、ようやく1日過ごせた感じです。家に帰ったら、倒れこむように寝てしまいました」
 
その後も作品をつくっては、不定期でびんずる市に出店。手に取ってくれる方の反応に一喜一憂しながら、作品づくりや店舗づくりの方向性を固めていきました。
 
「ここ数年はありがたいことに、声をかけていただいて出店することが多くなりました。オンラインショップもたまにオープンしますが、今は出店が月に1回から3回、多い時は毎週のようになるので、作って、出るのが精一杯。オンラインショップまで手が回らないのが現状です(笑)」
 
‎固定のファンも増え、今や大忙しの亜実さん。SNSをチェックして、出店するイベントやポップアップにでかけていくのが、作品に触れる唯一の方法のようです。
 

「自然の色」とハンドメイドへのこだわり

アトリエ ネリの「ネリ」とは、「練り色」=生成り色のこと。亜実さんは、自然のままの風合いをとても大切にしています。
 
自宅の庭で育てた草花やご近所さんからいただいた花を乾かして使うほか、購入した生花を干したり、売っているドライフラワーを使ったりもしますが、作品に使用するのは、徹底して自然の色味そのままの花だけ。いちど脱色して色を入れてある「プリザーブドフラワー」や、染めてあるドライフラワーも、一切使いません。
 
「私は『自然の色』が好きなので、自分自身が癒され、和むんです。それに共感をしてくださる方がいればいいなと。自然のままのドライフラワーは、どうしても日光や湿気、ホコリなどでだんだん色は褪せてきますが、その変化も楽しんでいただけたらと思って、いつもそうお話しています」
 
ナチュラルでやさしい色をまとった小花たちの細やかな集まりが、アトリエ ネリ作品の特長。ちいさなアレンジは、入れ物にもこだわります。写真左の木製の器は、昔のミシンの足についていた部品だそう。写真右はお菓子のタルトの焼き型。そんな小道具たちも、マルシェで見つけたアンティークを上手に利用しています。
 

ちいさなアレンジの器にも物語が

「なつかしい!と手に取ってくださる方がいたり、タルトの型なんかはお菓子を作る方に反応があったり。そんなところから話がはずむのも楽しいです」
 
卵の殻を使い、レース編みの台に乗せたフラワーベースも定番だとか。そのほか、イヤリングやピアスなどのアクセサリー類も、不動の人気です。
 

作品そのもの以外にも、ハンドメイドのセンスと技が光ります

アクセサリーを止めている素敵な台紙は、ドライフラワーがすきこまれた手づくりの和紙。実は牛乳パックから繊維をとって、「自分ですいた紙」だそうです。子どもの自由研究のような本を読んだり、SNSを見たりして、見よう見まねでつくったんだとか。そしてなんと、紙すきの道具まで手づくり!!ドライフラワーにとどまらない、亜実さんのハンドメイドの向上心と好奇心、そして創作意欲に頭が下がります。。。
 

「ポップアップ」で広がる出会い

善光寺仲見世の西側にあるカフェ「PEOPLE」では、定期的にポップアップを出店。古民家を利用した店内の雰囲気は、亜実さんの作品世界にとってもよく似合います。今回の展示テーマは「まる」ということで、亜実さんのつくる「まるい」リースを中心に、店内の壁や天井を彩りました。展示している現物の販売はもちろん、リースのオーダーも受け付けています。
 
「これまで出会った方がわざわざ来てくださったり、たまたまカフェに来たお客様が見てくださったり。いろんな出会いがあるのが、ポップアップのうれしいところです」
 

カフェPEOPLEでのポップアップ。空間に作品が溶け込んでいます
アクセサリー類やミニブーケなど小物も展示販売

新たな試み「よりみち」で安心できる居場所を

2026年6月から亜実さんは、新たに「よりみち」という活動を始めました。カフェでお茶を飲み、リラックスしながら心の内面を話し合うという「ゆるいつながりの場」を主催しています。
 
「私はもともと人の考えや価値観を知るのが好きで、自己開示することにも抵抗がありません。同じような方と出会って、年齢や性別、境遇に関係なく、フラットに話せる場があったらいいねという話になって、知人と一緒にはじめました」
 
これまで「私の幸せ、誰かの幸せ」というテーマで2回開催したところ、20代から50代までさまざまな年代の方が参加してくださり、手ごたえを感じたそうです。
 
「私自身、うつや適応障害、双極性障害になって学校に行けなかった時に、家しか居場所がなくて本当に『しんどい』思いをしました。家じゃないどこかに行きたいけど、安心できる場がなかった。この活動を通じて、やっと自分が心地いい人と繋がって、安心して話せる場ができたと思えました」
 
いずれは自宅兼、アトリエ兼、ショップのような場を作って、近所の人がフラッと寄っていけるような居場所を作れたら、と構想しているそうです。
 
「周りに比べたら、遅い・ノロノロ・コツコツなペースですが、続けていきたいです」
 

誰かの癒やしにつながれば

悩んでもがいていた時に、周りに助けてもらったことが多かったと振り返る亜実さん。その経験を活かして、些細なことでも誰かの手助けになったり、ちょっと気持ちが和らぐような存在になりたい、と話します。
 
「作品でも『人柄込み』で買っていただいて、お家に飾ったり身に着けた時に、毎日の中で見るだけでちょっと気持ちが落ち着くとか、背中をそっと押してもらえるとか、そんな存在になれたらいいなと思います」
 
亜実さんの活動は、ものづくりの枠を超えて、現代社会に必要な「心の居場所」を提供する重要な役割を提起しているといえます。今後も亜実さんは、自分のペースを大切にしながら、作品づくりと人との繋がりを通じて、多くの人に癒しと安らぎを届けていくことでしょう。
 

アトリエ ネリの代名詞、細やかなデザインのリース

会える場所

atelier neri (アトリエ ネリ)

Instagram:https://www.instagram.com/atelier_neri/

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